あせらずに「行動する」あせらない練習

大事なのは「結果を出す」ことではなく、そのために何ができるかを考え、行動することです。何もしないうちから、あるいは何の手も打たずに、結果だけをあせって心配するのは無意味だと心得ましょう。

» 2014年05月19日 11時00分 公開
[斎藤茂太,Business Media 誠]

集中連載「あせらない練習」について

本連載は、斎藤茂太著、書籍『あせらない練習』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。

休みなしに働いているわりには成果が上がらなかったり、あれもこれもと欲張ってやるわりには何もモノにできなかったり――。周囲に振り回されて自分自身を見失っている人、あなたの周りにもいませんか? そういう人の心の中には、いろいろな情報や思いがグチャグチャとあるだけなのかもしれません。

 ・頭のなかのあせりは、脳を休ませるとだんだん消えていく
 ・「その場しのぎ」をやめれば、あせる気持ちから解放される

不安やイライラは、ちょっとした心の練習でなくなります。あせらないで頭と心さえスッキリさせれば、筋道の通った思考と気持ちの整理もきちんとでき、目的別にゆったりと行動することができるようになります。

本書では、どうしてもあせってしまいがちな人の頭と心をスッキリさせる練習方法を、心の名医であるモタ先生の幸せメソッドにならって紹介します。


 行動する前に「うまくいくだろうか?」と悩んで、右往左往してしまう人がいます。やってみなければ分からないのに、先に結果を考えてしまうから、思考も行動も迷路をさまようことになります。

 逆に、行動してから「うまくいくだろうか?」と非常に心配し、「ああすればよかったかな。こうすればよかったかな。いまからでも遅くない、修正を加えよう」などとあせってしまう人がいます。納得がいく仕事をしていないために結果を恐れて、「人事を尽くして天命を待つ」と悠然と構えることができないわけです。

 さらに、最初から「うまくいくわけがない」と決めてかかり、ただただそのマイナスの結果に怯えて、行動がギクシャクする人がいます。こういう人は野球で言うと、一塁から二塁へ盗塁をしたいのに、失敗が怖くて一塁ベースにしがみついているランナーのようなもので、不安の金縛りにあってしまいます。

 いずれにせよ、自分の行動の結果がどうなるかは、考えて分かる問題ではありません。それでは本末転倒もいいところ。うまくいくことを目標に据え、そのためにどう行動するかを考え、できる限りの努力をする、それが本来の思考の筋道です。だから「結果がどうなるか」なんてことは、あせらず結果が出るまで考えなくてもいいのです。

 「結果は後からついてくるもの」

 とシンプルに捉えると、頭はスッキリ。いい結果を出すために何ができるかに、考えを集中させることができます。

失敗したら原因を探り、次に生かす

 そりゃあ、最善を尽くしてもいい結果が得られないことはあります。それでも、クヨクヨすることはありません。行動のどこに問題があったのかを探ればいいのです。それで問題が抽出できれば、次に生かせるではありませんか。いい結果は得られなくとも、自分自身を成長させることはできるでしょう。

 また、結果が心配でしょうがないときは、「なぜ、あせってしまうのか」をきちんと認識することも重要です。たいていの場合、その原因は大きく3つに分けられます。

 「これまで経験したことのない仕事だから」
 「能力的に自信がないから」
 「以前に失敗した苦い経験があるから」

 これらの原因さえ分かれば、もうあせる必要はありません。これまで経験したことのない仕事なら、「経験したこともないのに、結果が分かるはずはない」と開き直ればいいのです。また、能力的に自信がないのなら、どこが弱点かを見極めて、補強の手立てを打つ。以前に失敗したのなら、同じ轍を踏まぬよう、その経験を生かす。結果を心配する前に、いくらでも行動すべきことがあると分かるはずです。

 大事なのは「結果を出す」ことではなく、そのために何ができるかを考え、行動することなのです。

 何もしないうちから、あるいは何の手も打たずに、結果だけをあせって心配するのは無意味だと心得ましょう。

(次回は、「自分に何ができるかを考える」について)

 →連載「あせらない練習」バックナンバーはこちら

著者プロフィール:

斎藤茂太(さいとう・しげた)

1916(大正5)年に歌人・斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。医学博士であり、斎藤病院名誉院長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長などの役職を歴任。多くの著書を執筆し、「モタさん」の愛称で親しまれる。「心の名医」として悩める人々に勇気を与え続け、そのユーモアあふれる温かいアドバイスには定評があった。2006(平成18)年に90歳で亡くなったが、没後も著作は多くの人々に読み継がれている。


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