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» 2014年05月21日 11時00分 UPDATE

あせらない練習:自分にあるもので、何ができるかを考える

自分にないものを欲しがり、別の人生を夢見る。そういうことは誰にでもあります。しかし、ないものねだりの思考を続ける限り、恵まれない自分からは解放されません。自分にあるものでできることを考えれば、あせらなくてすむのです。

[斎藤茂太,Business Media 誠]

集中連載「あせらない練習」について

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本連載は、斎藤茂太著、書籍『あせらない練習』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。

休みなしに働いているわりには成果が上がらなかったり、あれもこれもと欲張ってやるわりには何もモノにできなかったり――。周囲に振り回されて自分自身を見失っている人、あなたの周りにもいませんか? そういう人の心の中には、いろいろな情報や思いがグチャグチャとあるだけなのかもしれません。

 ・頭のなかのあせりは、脳を休ませるとだんだん消えていく
 ・「その場しのぎ」をやめれば、あせる気持ちから解放される

不安やイライラは、ちょっとした心の練習でなくなります。あせらないで頭と心さえスッキリさせれば、筋道の通った思考と気持ちの整理もきちんとでき、目的別にゆったりと行動することができるようになります。

本書では、どうしてもあせってしまいがちな人の頭と心をスッキリさせる練習方法を、心の名医であるモタ先生の幸せメソッドにならって紹介します。


 「もし、お金に恵まれていたら、自分だって起業家になれたのに」
 「もし、容姿に恵まれていたら、自分だってスーパーモデルになれたのに」
 「もし、家柄に恵まれていたら、自分だってセレブともてはやされたのに」
 「もし、才能に恵まれていたら、自分だって芸術家になれたのに」

 自分にないものを欲しがり、別の人生を夢見る。そういうことは誰にでもあります。なりたい自分になれないことを恵まれない環境のせいにするのは非常に簡単だし、努力を放棄するかっこうの言い訳になるからでしょう。

 しかし、この「ないものねだり」思考を続けている限り、恵まれない自分から解放されることはありません。ないものはないのであって、いくら、

 「恵まれていたらなぁ」

 と、あせって考えたところでお金が天から降ってくることはないし、自分の出自や容貌、才能を誰かのそれととりかえっこすることもできません。そんな浅ましい考えは、いますぐ捨ててしまいましょう。

 「もし、●●だったら」

 なんて文言を消去すれば、

 「△△になれたのに」

 などと、何も努力しないうちに夢をあきらめる必要はなくなります。その部分を、

 「いまの自分は○○だから、××な努力をして、△△になるぞ!」

 という強い意志に変えて、いまの自分に与えられた環境のなかで、どうすればその夢に到達するかを考えればいいのです。

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 分かりやすい例を1つ。いまのところ、女性は相撲の土俵に上がることはできません。その事実を前に、

 「もし、私が男だったら、土俵に上がることができたのに」

 と、考えたらどうでしょう? 女性が男性になるのは不可能なので、願望だけが頭のなかをぐるぐる回り、単なる「ないものねだり」に終わります。でも、

 「私は正真正銘の女性だけれど、どうしても土俵に上がりたい。何とか、男しか土俵に上がってはいけないという慣習を改めるよう働きかけよう」

 という思考に変えると、夢を努力目標にすることができます。

 実際、元大阪府知事の太田房江氏は「女性という理由で、どうして土俵に上がって知事賞を授与することはできないの?」と行動を起こしました。伝統という大きな壁に阻まれて、なお女性が土俵に上がることはかないませんでしたが、少なくとも世論に火をつけることはできました。

 伝統と男女差別を結びつけることに関する是非はともかく、「ないものねだり」に終わらせないところは立派だと思います。

 人間、「ないものねだり」を始めるとキリがありません。すべてを持っている人などこの世にはいないのに、自分にはこれがない、あれがないと数え上げても意味はありません。

 「ないものはどうすれば手に入れることができるか」

 あるいは、

 「自分にあるものだけで何ができるか」

 を考えることのほうがずっと大切です。

 「ないものねだり」をシャットアウトするだけで、思考はすっきりと整理され、「願望ばかりが空回りして行動を起こせない」あせってばかりの自分とも決別できます。

(次回は、「成果が出ない脳には休みをあげよう」について)

 →連載「あせらない練習」バックナンバーはこちら

著者プロフィール:

斎藤茂太(さいとう・しげた)

1916(大正5)年に歌人・斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。医学博士であり、斎藤病院名誉院長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長などの役職を歴任。多くの著書を執筆し、「モタさん」の愛称で親しまれる。「心の名医」として悩める人々に勇気を与え続け、そのユーモアあふれる温かいアドバイスには定評があった。2006(平成18)年に90歳で亡くなったが、没後も著作は多くの人々に読み継がれている。


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