まずは“身近なものを数字に置きかえる”――会計を生かして“やりたい仕事”に近づこう仕事力を高める会計の「知恵」(2/2 ページ)

» 2014年05月23日 11時00分 公開
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会計って、実はすごくアナログ

―― 数字というとロジカルなイメージがあるので、"想像で補うことで分かりやすくなる"というのは意外でした。

平林氏: 実は周りを見渡すと、そこにあるものは全部数字に置き換えられるんですよ。例えば私たち会計士は、この対談をしているこの会議室にいても、「ホワイトボード、時計、この時間の水道光熱費はいくらだろう。この辺りだと賃料が1カ月いくらで、だいたい何平米くらいの部屋だから、1時間使ったら私のいるこのスペースはいくらになるなぁ」ということを、つい計算してしまうのです。こんなことをしているので、時々、お買い物がつまらなくなりますけどね(笑)。

 会計で使われるのは数字というデータなので、それだけ見るとロジカルな世界のように感じられるでしょう。ただ実はすごくアナログで、人々の生活や仕事における1つ1つの活動を数字に換算したらいくらになるかを表わすのが会計の世界。やっていることは日常にとても密着したことなんですよ。

―― 頭の中に決算書があって、そこに見ているものが数字として入っていくような感じですか。

平林氏: そうした面はありますが、それだけではないんです。例えば、交通費を見たら、どこに何の目的で行ったんだろう? 売上だったら、何をどのように売ったんだろう? と数字の裏に隠されている物事を見ようとしています。

 営業の人なら、日報などにその日の報告と掛かった経費を記入するでしょう。報告もせずに経費だけ申請することはできません。つまり、経費の裏には何らかの仕事がある。こういった視点で見てみると、どんな部署の人にも会計とその数字は関わりがあると思えるのではないでしょうか。

 それに、会計の基礎知識を身につけると、会社の中で自分がやりたいことを実現する道が近づきます。会社はお金をもうけなくてはなりませんから、お金の計算ができない人には大事な仕事は任せられませんよね。それに会計をひと通り勉強していれば、仕事の実現に必要な経費を計算する際に、「○○の費用を忘れていた」といった“漏れ”を防ぐこともできるでしょう。要は、会計を知ると、ビジネスに役立つ数字のセンスが身につく。やりたいことを実現するための手段、知恵が会計にはつまっているんです。

 いいものを作ろうと思うとコストが掛かります。会社としては、それが本当に売れるのか、目に見えない部分の費用はどれほどなのか、利益を出すにはどれほど売ればいいのかというところまで計算されていなければ、ゴーサインを出すわけにはいかないのです。

 例えば、極端な例ですけど、どんなに良い内容であっても、「5万円のビジネス書をつくりたい」と提案したところでその実現は相当難しいですよね。1000円台のものが多いのですから。でも、そういうことって実は会社の中で起こりがち。全体が見えていなかったり、勉強不足というケースが多いんです。それではビジネスパーソンの仕事とは言えません。企画も通らず、上司から「遊びじゃないんだ!」なんて言われますよね。

―― おっしゃる通りです。

眞山氏: それこそ自分でビジネスをやろうと思ったら、平林先生が言うことは全部できないとダメでしょうね。フリーランスにありがちですが、依頼されるまま仕事を受けたはいいが、寝ずに働いても満足な報酬を得られない――といったことも生じてきます。お金の計算ができていないんですよね。

平林氏: 「ノマド」だからPC1台さえあれば大丈夫だと思っていたら、もっと必要なものがあって費用が掛かってしまった――ということがあったりね。

眞山氏: ビジネスパーソンにも、フリーランスにも会計の知識は欠かせません。それは企画を通したいときや仕事に対して問題意識を持ったとき、何かを改善する必要があるときに必ず生きてくるんです。例えば、営業が「この人と比べて自分はなぜ、こんなに数字が悪いんだろう」という問題意識を持てば、「何を変えればこの数字になるんだろう」と考えるようになる。すると、数字と行動が結びついていきます。

 これまでのやり方を改善できるかどうかは、会計のことがある程度分かるかどうかにかかってくる。ですから、もっと会計を自分たちに密着しているものとして捉えてほしいですね。

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