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» 2014年06月02日 11時00分 UPDATE

あせらない練習:失敗は真摯に受け止める

どんな小さなことでも、失敗したと分かったら隠さずに白状することです。隠そうとすればするほど気持ちも行動もあせってしまいます。失敗を受け止め、報告することであせりは消えるのです。

[斎藤茂太,Business Media 誠]

集中連載「あせらない練習」について

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本連載は、斎藤茂太著、書籍『あせらない練習』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。

休みなしに働いているわりには成果が上がらなかったり、あれもこれもと欲張ってやるわりには何もモノにできなかったり――。周囲に振り回されて自分自身を見失っている人、あなたの周りにもいませんか? そういう人の心の中には、いろいろな情報や思いがグチャグチャとあるだけなのかもしれません。

 ・頭のなかのあせりは、脳を休ませるとだんだん消えていく
 ・「その場しのぎ」をやめれば、あせる気持ちから解放される

不安やイライラは、ちょっとした心の練習でなくなります。あせらないで頭と心さえスッキリさせれば、筋道の通った思考と気持ちの整理もきちんとでき、目的別にゆったりと行動することができるようになります。

本書では、どうしてもあせってしまいがちな人の頭と心をスッキリさせる練習方法を、心の名医であるモタ先生の幸せメソッドにならって紹介します。


失敗は真摯(しんし)に受け止める

 例えば、洋服に穴があいたとき。糸でかがるなどしてちゃんと繕っておくと、それ以上穴が大きくなることはありません。でも、穴を隠す程度の処置しかしなければ、穴はどんどん広がります。

 失敗はそんなほころびのようなもの。気付いたときにきちんと対応しておかないと、取り返しのつかない失敗になってしまいかねません。「このくらいなら分からないだろうと失敗を隠ぺいしたら、とんでもないことになった。もっと早いうちに、白状しておくんだった」などと悔やんでからでは遅いのです。

 近年は、組織ぐるみで「失敗の隠ぺい」を行い、会社生命を危うくする例も頻発しています。その典型が、ある自動車メーカーのリコール隠しでしょう。

 車は、ときには人命を奪う凶器ともなる。どんな小さなことでも、製造者責任に関わる欠陥があると判明したら、すぐさまリコールを届け出て、無償回収あるいは修理の対応を迅速に行わなければなりません。このメーカーはそれを怠りました。

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 リコールを届け出ることは会社の信用問題に関わるので、隠したくなるのかもしれません。しかし、隠すことによって、いくつものタイヤ脱落事故が起こりました。最初に事故が起こった段階できちんと原因を究明し、自社の責任を認めて迅速な対応をしていれば、あれほどのスキャンダルになることもなかったのに。

 自動車に限らず、あらゆる業種で「クレーム隠し」は頻発しています。目先のイメージダウンを怖がり、応急処置だけして知らんぷりするか、クレームそのものを無視するか。いずれにせよクレームに対して自らの落ち度を認めずに、結果的にはつくろいようもないほどに失敗の穴を広げてしまうわけです。

 これは、個人にも言えることです。誰しも、自分の失敗を認めるのはあまり気の進むことではありません。それで「隠せるものなら隠したい」という心理が働くのでしょう。その場逃れをするためにあせったあげく、どうにも逃れようがなくなり、信用を失墜させる――。それが「失敗隠ぺい」の構図でもあります。

 どんな小さなことでも、「あ、失敗した」と分かったら、その時点で隠さずに白状することです。それによって、自分への評価が下がることもあるだろうし、被害を被った人から大目玉を食らうこともあるでしょう。

 しかし、それは一時的なもの。失敗を真摯に謝り、その後の対応で良い結果を出せれば、評価は間違いなく180度変わります。「わざわい転じて福となす」ことだって可能です。

 そもそも、失敗を隠そうとするから気持ちも行動もあせってしまうのです。とっとと白状すれば肝は据わるし、善後策を打つという1つの目標に向かって迷いなく行動に走ることもできます。

 それに早い段階で失敗が分かることは、むしろ歓迎すべきこと。後になって失敗に気付くのと違って、打つ手はいくらでもあるというものです。

(次回は、「イヤなことは先に済ませる」について)

 →連載「あせらない練習」バックナンバーはこちら

著者プロフィール:

斎藤茂太(さいとう・しげた)

1916(大正5)年に歌人・斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。医学博士であり、斎藤病院名誉院長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長などの役職を歴任。多くの著書を執筆し、「モタさん」の愛称で親しまれる。「心の名医」として悩める人々に勇気を与え続け、そのユーモアあふれる温かいアドバイスには定評があった。2006(平成18)年に90歳で亡くなったが、没後も著作は多くの人々に読み継がれている。


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