日本が初めてワールドカップに出場した1998年。フランスに渡航した僕が得たものとは……。
ワールドカップ真っ最中ですね。可能性がある限り、最後まで日本を応援したいと思います。
僕は1998年、フランスワールドカップ初戦のアルゼンチン戦、見に行きました。正真正銘、日本が初めて、ワールドカップで戦った、その試合を。
ただ、「見に行った」だけで、実際に見られたわけではありませんでした。覚えておいででしょうか。あの大騒動となったチケット問題に巻き込まれて……。
当時、僕はサッカーにほとんど興味がなく、「ヒデって誰?」という感じでした。それなのに何の因果か、友人のI氏から電話がかかってきたのです。
「寺西、ワールドカップ、付き合ってくれない?」
「サッカー、分からーん」
「いいじゃんいいじゃん、面白そうでしょ」
「旅行費、いくら?」
「33万円」
「高っ!」
当時は社会人2年目で「若いうちのお金は使って学ぶ」と偉そうなことを思っていたこともあり、貯金はほとんどありません。
でも、若い頃、平日長期に休める会社はなかなかはありません(勤務先のZ会は、当時から割と休みの融通が利きました)ので、友人は粘ります。
そして、ふっ、と浮かんだ思い。
「こんなことでもないとフランスに行こうなんて思わないから、逆に付き合うのも面白いかな。貯金ない中行った、というのもネタで使えそうだし」
ネタ話が人一倍……どころか、極端に好きな僕。サッカー分からない、33万円の貯金もない、フランスというオシャレな土地柄には全く似合わないの三拍子。それが逆に「分かった分かった、いいよ」と首を縦に振る自分を作ってしまい、行くことに決定したのです。
貯金がなかったため、その33万円を何と、7月に結婚することになっていた別の友人の結婚資金から借り、6月のボーナス後に返却することに。友人に恵まれて幸せです(笑)
こうして手当てできた33万円、旅行会社に払い込んだのは初戦の2週間前。そして初戦の1週間前、チケット騒動が発生しました。
僕は「なになに?僕は巻き込まれたの???」と、なんかジブンゴトじゃないように。
ニュースになった日の午前中、友人から電話が。
「寺西、チケット、うちらの分もないって……」
「で?」
「行かないなら全額返金+お詫び金5万円、行くならフランス旅行として23万円で、チケットがとれたら33万円、という条件だって……」
「うわー、33万円払い込んで1週間で5万も増える方がいいなー。めっちゃ高利息商品!」
などと、のんきなことを言っていた僕。友人は無言です。
「で、どうするの?行きたいの?行かなくていいんじゃない?」
「……行きたい!」
「えー」
そんなやりとりの後、どうなったかは想像がつくでしょう、そう、ネタ好きの僕は、ネタを選んでしまったのです。ヒデのことも知らないのに「うわーチケット騒動の渦中の人やん俺!」とのんきな僕。
結果、チケットは手に入らず、23万円でのトゥルーズ→パリ→ロンドン旅行になったのです。
こんなことでもないと、それまで知らなかった「ヒデ」の10番ユニホームなんて買わなかったし(今でもあります)、長距離飛行機内のワインがおいしいことを知らなかったし、トゥルーズがパリとは遠く離れたスペインの近くなんて知らなかったし、会場で安藤優子キャスターとぶつからなかったし、陽気な外国人サポーターと握手いっぱいできなかったし、ルーブル美術館見ることなんてなかっただろうし、フランス料理は僕には合わないことを知らなかっただろうし、その後新婚旅行で行ったイタリア料理との違いが分からなかっただろうし、レストランで長野智子キャスターのキレイさを感じることはなかっただろうし、FIFAの人と偶然会って「お詫びに」とFIFAのバッジをもらうことはなかっただろうし、ロンドンも半日で飽きてしまう飽きっぽい僕にもほどがあること気づかなかっただろうし……。
全部が全部、「こういうことでもないと」経験できなかったことなんですよね。僕が積極的に選んで行った旅行じゃない、だからこそ、普段ではぜったいに経験しないことをたくさん経験できました。
きっと、自分で選んだ旅行より、その後の自分の人間味(とでもいいますかね)がちょっぴり多めに増えたんじゃないでしょうかね。
プライベートでも、仕事でも、自分だけでは得られない「機会」がふってくれば、フルにいかそうとする。その方が人生面白くなる気がします。もちろん、限度はありますが(笑)。
今回のワールドカップ、どんな結果になろうとも、1人1人にストーリを生み出してくれると期待しています。みんなで楽しみましょう!