自分の夢を語れるリーダーに人はついて行くやる気がわいてくるたった1つの方法

自分の仕事が自分のためになるだけでなく、社会的な意味も持つと考えるとき、仕事にやりがいを感じることができます。「ついて行きたい」と思われるリーダーが語る夢も、利己的なものではいけないのです。

» 2014年07月01日 11時00分 公開
[榎本博明,ITmedia]
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連載「やる気がわいてくるたった1つの方法」について

『やる気がいつの間にかわいてくるたった1つの方法』

本連載は、心理学博士・榎本博明氏著、日本実業出版社刊『やる気がいつの間にかわいてくるたった1つの方法』から編集転載しています。

「日曜の夜は憂鬱(ゆううつ)になる」「自分に合った仕事に巡り会えればきっと仕事を楽しめるのに」――そう考えている人たちに向け、「自分に向いている仕事さがし」ではなく自分の「仕事づくり」のコツとして仕事を意味づける“ストーリー”をキーワードに解説しています。

そのコツを習得すれば、転職することなく、今の仕事に対して自然にやる気がわいてきて、仕事を楽しめるようになるといいます。

どうせ働くのなら、楽しみながら働くコツを身につけてみるのはいかがですか。


 京セラの創業者・稲盛和夫は、京都セラミックの創立記念式典が行われた日の晩、幹部を集めて門出を祝う宴会の場で、次のようなあいさつをした。

 (写真はイメージです)

 「今は宮木電機さんの倉庫を借りて創業したが、今にこの原町一になってみせようやないか。原町一になったら、西ノ京一の会社を目指そう。西ノ京一になったら、中京区一を目標にしよう。次は京都一、京都一が実現したら日本一になろう。日本一になったら、もちろん世界一だ」(稲盛和夫『稲盛和夫のガキの自叙伝』日本経済新聞出版社)

 実際には、その日1日を生きるのが精いっぱいで、先のことを考える余裕などなかったが、それでも酒を飲むたびに「今にきっと日本一、世界一になるぞ」とお題目のように唱えた。

 初めのうちはみんな「また言うとる」と聞き流していたが、何回も聞かされるうちに、次第にその気になって意欲的に働くようになった。だが、現実は厳しい。軌道に乗せるまでは、来る日も来る日も徹夜に近い作業が続き、社員はみんなフラフラになってきた。

 そうして1年間脇目もふらずに走り続けた結果、黒字決算となったが、若手社員たちが反乱を起こした。

 それはもっともなことだ。社長が自分の夢の実現、自分のサクセスストーリーを追求するのは良いが、それだけでは毎晩深夜まで働かされる社員たちに、自分の仕事の意義を感じさせる力が弱かったのだ。

 この事件をきっかけに稲盛はある気づきを得た。社員たちはこの会社に一生を託そうとしている。自分には、そうした社員の面倒を一生みていく義務がある。そもそも創業の目的は自分の技術を世に問うことだったのだが、とんでもない重荷まで背負うことになってしまった。そのように煩悶する日々が続いた末に、踏ん切りをつけるべく、次のように考えた。

会社経営のベーシックな目的は、従業員やその家族の生活を守ること

 「もし、自分の技術者としてのロマンを追うためだけに経営を進めれば、たとえ成功しても従業員を犠牲にして花を咲かせることになる。だが、会社には、もっと大切な目的があるはずだ。会社経営の最もベーシックな目的は、将来にわたって従業員やその家族の生活を守り、みんなの幸せを目指していくことでなければならない」(前掲書)

 そう割り切ることで胸のつかえが下りた。そこで、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」といった経営理念を掲げることになった。こうして京都セラミックは、社長の夢の実現を目指した会社から、全従業員の幸福を目指す会社へと生まれ変わったのだった。

 だが、それでもまだ、何か足りないような気がしていた。自分の人生は、従業員たちの面倒をみるだけで終わって良いのだろうか。社会の一員として、ほかに果たすべき崇高な使命があるはずだ。そこで後年、生涯をかけて追い求める理念として、「人類、社会の進歩発展に貢献すること」と付け加えた。稲盛は、経営理念は、全社員が共感し、心から納得できる普遍的な価値観に根ざしていなければならないと言う。

 自分の仕事に社会的な意味があると感じられる時、人は多少の苦難があってもそれに耐えてがんばっていこうという気持ちになれる。だが、金もうけのような利己的な意味しか感じられないと、とことんがんばる気力はわいてこない。人がついて行こうと思えるのは、自分の仕事が社会の役に立っていると感じさせるストーリーを注入してくれる人物なのである。

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