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» 2014年07月09日 11時00分 UPDATE

あせらない練習:逆風のときこそ「あせらない自分」になるチャンス

人生、いいことばかりではありません。また、悪いことばかりも続きません。順風も逆風も交互にやってきます。逆風のときこそ与えられた試練を喜び、解決するにはどうするかを考えるのです。

[斎藤茂太,Business Media 誠]

集中連載「あせらない練習」について

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本連載は、斎藤茂太著、書籍『あせらない練習』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。

休みなしに働いているわりには成果が上がらなかったり、あれもこれもと欲張ってやるわりには何もモノにできなかったり――。周囲に振り回されて自分自身を見失っている人、あなたの周りにもいませんか? そういう人の心の中には、いろいろな情報や思いがグチャグチャとあるだけなのかもしれません。

 ・頭のなかのあせりは、脳を休ませるとだんだん消えていく
 ・「その場しのぎ」をやめれば、あせる気持ちから解放される

不安やイライラは、ちょっとした心の練習でなくなります。あせらないで頭と心さえスッキリさせれば、筋道の通った思考と気持ちの整理もきちんとでき、目的別にゆったりと行動することができるようになります。

本書では、どうしてもあせってしまいがちな人の頭と心をスッキリさせる練習方法を、心の名医であるモタ先生の幸せメソッドにならって紹介します。


 何をやってもうまくいく順風満帆のときは、まさに波に乗った状態。人は放っておいても、前を向いて力強く進んでいきます。

 「奢(おご)る平家は久しからず」なんて戒めも忘れて、その好調が永遠に続くかのように本気で信じてしまうことさえあります。そうなると人は慢心し、「何をやっても成功する」とばかりに、無謀な行動に出ることが多いものです。本来ならこういうときこそ、順風をはばむマイナス要素を考慮して、あせらずに落ち着いて考えて行動するべきなのに――。

 では反対に、逆風を受けているときはどうでしょうか? 気持ちが落ち込んで「もう立ち直れない」とうずくまってしまう人がいる一方で、「早く何とか軌道修正をしなくちゃ」とバタバタとあせって、その場しのぎにしかならないようなことに熱中する人がいます。

 前者はマイナス思考から、後者はあせりから、結果的に不運の連鎖を助長してしまうことになりがちです。こういうときこそあわてずに熟慮を重ねつつ、プラス思考で逆境を転じて波に乗るための方策を考えるべきです。

 要するに、順風であろうと逆風であろうと、風に翻弄(ほんろう)されてあせってはいけません。いかにしていい波に乗り続けられるか、這い上がっていくかは、落ち着いて風を受けていられるかどうかです。

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 順風だからといってグイグイとスピードを上げ過ぎると、やがて船は転覆します。逆風でも風にあおられる一方だと、やはり船は転覆します。

 いずれにせよ、落ち着いて流れに身を任せながらも、風を読んで前進していくのがベストなのです。

 とくに難しいのは、逆風にあるときでしょう。前進するためには、きつい風にじっと耐えるだけではなく、波に乗るための努力をしなければなりませんから。

 しかし、だからこそ逆風は大きなチャンスだという見方もできます。

 例えば、企業は不況という逆境にあるとき、大半があわててリストラを始め、身を縮めてひたすらきつい風が吹き去るのを待ちます。でもなかには、風がおさまって波に乗れる時機をにらんで、リストラよりも企業体質の強化に励むところもあります。経費削減はやむなしとしても、不況だからとあきらめずに地道な努力を続け、浮上のときに備えるのです。

 こういう企業は必ず、不況後にいい波に乗れます。事業も人員も縮小せずにがんばってきた分、好況期の需要に応えることができるからです。つまり、不況をジャンピングボードとして飛躍を遂げることが可能になるのです。

 人生における逆境でも同じでしょう。「いまは何をやってもうまくいかない」と縮こまっていては、なかなかいい波に乗れません。かといって、逆境を恨んで牙をむいたところで、いい結果は出ません。やがていい波が来ることを信じて、地道に自分を磨くからこそ、人生は好転するのです。

 逆境には多くのメリットがあります。

  1. 痛い目にあったことを、その後の人生の教訓として生かせる
  2. 身をもって痛みを知ることで、人間性が豊かになる
  3. 逆境から浮上するためにあれこれ知恵を絞ることで、「考える力」が身につく
  4. 逆境をジャンピングボードとするプラス思考ができるようになる
  5. 逆境を乗り越えると、それが自信となり、並大抵のことではくじけないたくましい精神力を養うことができる

 逆境知らずの順風満帆な人生は、こういうことを教えてくれません。逆境を歓迎する人はあまりいないでしょうが、そう嫌うこともないのです。これだけのメリットを享受できるのですから、なかなかいいものだと見ることもできます。

 だからこそ、言いたいのです。「逆境を喜びなさい」と。

 多くの人が逆境に陥るとあせってパニックになり、「何とかしなきゃ」と気持ちだけが空回りするようになるものですが、逆境にはたくさんのメリットがあることを思い出してください。そして、逆境を喜んでください。それだけで気持ちはスッキリとし、ストレスの芽を摘むことができるはずです。

 心のもやもやとあせりはだいたい、「これではいけない。何とかしなくちゃいけない」という思いを、ただただ頭のなかでグルグル回してしまうことから発生します。そのあせる気持ちを鎮めるためには、自分に与えられた試練を喜び、

 「さて、どうする?」

 と具体的に考えればいいのです。それだけで、たいていのことは解決し、いい方向へと向かいます。

(終わり)

 →連載「あせらない練習」バックナンバーはこちら

著者プロフィール:

斎藤茂太(さいとう・しげた)

1916(大正5)年に歌人・斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。医学博士であり、斎藤病院名誉院長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長などの役職を歴任。多くの著書を執筆し、「モタさん」の愛称で親しまれる。「心の名医」として悩める人々に勇気を与え続け、そのユーモアあふれる温かいアドバイスには定評があった。2006(平成18)年に90歳で亡くなったが、没後も著作は多くの人々に読み継がれている。


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