上司やリーダーって“つらい”仕事――本当にそうですか?【新連載】上司はツラいよ

昔ながらのやり方が通用しなくなっている昨今、先輩らしく、リーダーらしく、マネージャらしくあるためにはどうすればいいのか――。新人リーダーが直面する問題について、実際の部下とのやりとりを挙げながら解決法を探る連載がスタートします。

» 2014年07月10日 10時30分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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 「俺たちが若いころは、上司に言われた仕事を文句言わずにやったもんでしたよ。それが今の若い部下は“何のためにやるんですか?”“目的を教えてください”だからね、面倒なんですよ」

 これは数年前に、あるマネージャーから受けた相談だ。この言葉を見て、あなたはどう思っただろうか。共感した人、「いやいや、それは」と思った人。感想はさまざまだと思うが、これは現代のマネージャーの悩みをとてもシンプルに表している。理不尽なことを言われて育った世代にとって、若手の「目的は?」という質問に答えられないのだ。「自分のころは、そんな風に扱ってもらえなかったのに」という悔しさもあるかもしれない。

 権力に任せて「バカ野郎!」と言って部下を従えられた時代もあっただろうが(部下がそれをどう感じていたかは別として)、今そんなことをすれば、パワハラ上司というレッテルを貼られてしまうだろう。昔のやり方が通用しなくなっている昨今、悩みながらも先輩らしく、リーダーらしく、マネージャーらしくありたい。彼らにとって、そんな板ばさみに苦しむリーダーという職務は“つらい”ものなのかもしれない。

“リーダーであること”に悩む30代

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 リーダーになってみて初めて分かる“壁”は多い。自分が考えるように相手も考えるわけではなく、自分が期待している通りに相手が行動してくれるものでもない。こんな「当たり前」の事実さえも、リーダーになった途端にまざまざと見せ付けられる。プレイヤーとしていくら優秀でも、リーダーとして成果を上げられるかはまったく別の話なのだ。

 ああ、自分ひとりでやったらどんなに楽か。自分の世界だけで閉じていたらどれほどいいだろう。そう思うかもしれないが、「あなたに期待していることはそういうレベルじゃないんだよ」と上司に諭されるのがオチだろう。

 ここ10年くらいで、若手を始めとする部下・後輩の育成方法をテーマにした研修やセミナーは多くなってきた。私は企業の人材育成を請け負う仕事をしており、こうした悩みを抱えるマネージャーを数多く見てきている。

 マネージャー研修の受講者は30代が最も多い。中堅やベテランとして「そろそろ自分のことだけではなくて、後輩の面倒も見てよ」とか「個人として活躍するだけではなく、チームの成果を出すという観点で仕事してくれ」などと言われ、困り果ててしまった。「そんなこと言われても一体どうしろと言うのか」――あなたにもそんな経験はないだろうか。

とはいえ、あなたは“リーダー”なのです

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 しかし、悩んでいるだけでは問題は解決しない。実際にそう悩みつつも、リーダーとしての振る舞いやコミュニケーションができない人がいる。「部下を上手に叱れない」「スタッフたちの意見をうまく整理できない」「掘り下げた質問ができない」「部下のやる気を引き出せない」「年上部下の扱いが分からない」「部下に共感できない」「相手の考えを深める会話ができない」「仕事の指示ができない」「パワハラが不安でミスを指摘できない」――。これはすべて私が実際に研修を通じて見てきた例だ。

 これから始まるこの連載では、“リーダーを任された”30〜40代の新人リーダーが、部下や後輩、あるいはチームのメンバーと接する際に悩むことや直面する問題について、コミュニケ―ションを軸にした解決法を解説していく。

 具体的には、研修の場でよく耳にする上司と部下の会話、ロールプレイやディスカッションの際に目の前で繰り広げられる先輩と後輩のやり取りを例に挙げながら、どこをどうすればよりよい関係が作れ、仕事をうまく進められるのかを紹介したい。

 人間関係にかかわる問題に唯一無二の解決策はなく、万能薬もない。ただ、人材教育の現場でさまざまな年代、立場のビジネスパーソンと接してきた経験から、「こういう風に考えてみては?」「こんなやり方もあるのではないか?」という提案はできるのではないかと思っている。本連載を読みながら、「自分だったらこうする」「私ならこういう」「こう行動する」といった“自分なりの解決法”を考えてもらえれば幸いだ。

 また、このコラムを読んだ上で、「私は、こんな風に考えて行動している」「こんな対応をしたらうまくいった」といった事例があれば、ぜひ、TwitterやFacebookページ、ブログなどを通じて寄せてほしい。チームの形、社員の立ち位置、会社のあり方などが刻々と変化する中、その変化に合ったコミュニケーション術を読者の皆さんとともに考え、作っていくのが本連載の目指すところだ。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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