自分に期待しなければ、企画はでてくる困っている人のための企画術(1/3 ページ)

あなたには特別な才能がありますか? 仕事をして何年も経てば、周りの評価などから自分に才能や素質があるかどうか、なんとなく分かってきます。特別な才能はなくてもいいのです。まずは自分を客観的に判断し、それを認めることが大事です。

» 2014年08月26日 11時00分 公開
[福里真一,Business Media 誠]

連載:困っている人のための企画術

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 この連載は書籍『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』(日本実業出版社)から抜粋、再編集したものです。

すごいアイデアを思いついて自信満々で発表したのにスルーされてしまった……。こういうケースは少なくありません。アイデアが支持され印象に残るかどうかは、内容の善し悪しに加え、段取り、流れやタイミング、そしてプレゼンのしかたなど、さまざまな要素に左右されます。

本書は、BOSS「宇宙人ジョーンズ」やジョージア「明日があるさ」などのヒットCMを生み出した著者が、アイデア出しとプレゼンの方法で困っている人のために書いた本です。

今でこそ多くの人気CMに携わっている著者ですが、「人とのコミュニケーションをとるのが苦手」と公言するように、実は著者自身がアイディアやプレゼンで「困っている」人でした。そんな著者が伝えるのは、

 ・「プレゼンがうまそう」という感じを出さない
 ・人は、自分にできることしか、できない
 ・説得しないで説得する

など、ダメな人、苦手な人、困っている人でも、自分なりのやり方を見つけられます。数々のほろ苦い経験をもとに、そのままま役立つ「アイデアの出し方」と「伝え方」を紹介します。


自分の才能を客観的に判断する

 自分に才能があるかどうか――。そういうのは、何となく20歳ぐらいまでには分かるような気がしますが、どうでしょうか?

 学校という場所で長い間集団生活を送るので、周りから一目置かれてきたか、まったく置かれてこなかったかということで、自分に特別な才能がありそうかどうかは薄々分かるような気がするのです。

 私はもう、まったく一目置かれないタイプでした。というより、集団の端にいるタイプでしたので、一目置かれるどころか、いるのかいないのか分からないぐらいの存在だったと思います。

 それでも、広告の企画を仕事にしているからには「才能はある」と思いたい。才能がないと、できなさそうな仕事ですし。

 ということで、この仕事をはじめて30歳ぐらいまでは「才能があるかもしれない」と、わずかな望みをかけてやっていたのですが、まったくうまくいきませんでした。

 まず、自分なりに考えに考えて「これはすごい企画なんじゃないか」と思った企画は、周りの上司にも先輩にも、広告主にも評価されませんでしたし、無理矢理それをプレゼンで通して実際につくったとしても、結果はたいして評判にならない――。

 そんなことを何度か繰り返しているうちに、同世代の人たちがどんどん自分の仕事をしているというときに、私にはほとんど仕事がない……、という状態に陥っていきました。

 そこで、30歳のときに決めたんですね、「自分には才能がない」と。

 23歳ぐらいからはじめて、もう7年やっているわけですから、「7年やってて芽が出ないというのは、もう才能がない」ということなんだろうな、と判断したわけです。

 淡々と書いてますが、その判断を下したときには、もちろんつらかったです。もしかすると、これから一生続けていくかもしれない仕事に対する才能が、自分には「ない」わけですから。

 ただ、つらいと同時に、そんなに追いつめられている感じはありませんでした。というのは、私は当時、電通という広告会社の社員としてCMプランナーの仕事をやっていたのですが、会社の社員は才能があろうがなかろうが、月々給料が入ってくるからです。

 しかも当時は、けっこう安からぬ給料を払ってくれていた。才能がないというのは、自分の心の中では悲しいことではありましたけど、そうであっても、急に路頭に迷ったり、餓死したりするわけではない――。つまり、物理的な打撃は、それほどない。

 だからこそ、「給料ぶんぐらいの仕事はしないといけないな」と思ったんです。才能があるのに、不幸にして周りからその才能を理解されず、仕事にもめぐまれず、あまり仕事をしてない、というのは絵になりますが、才能もないのに、給料ぶんの仕事をしてないというのは、あまりにもかっこ悪すぎるので。

 才能がないからこそ、才能がある人はやらないような仕事も球拾いのようにどんどん拾って、給料ぶんはもちろん、あわよくば、給料ぶん以上の仕事をやってやる。才能がない人間の心意気を、見せてやるぞ、みたいな。まあ実際には、そんなに威勢のいい感じではなかったとは思いますが……。

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