信長をうならせた、利休の「粋なはからい」とは?「気がきく人」の習慣(2/4 ページ)

» 2014年08月29日 11時00分 公開
[上田比呂志,Business Media 誠]
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一拍置いて、心を整える

 こちらの提案したいプランや売りたい商品を提示して、「こちらはいかがでしょう?」と切り出してしまう――。これは、お客さまの側から見るという「相手視点」を持てない営業マンが犯しがちな失敗です。

 普段は気をつけている人も、ノルマに追われる中で、ついついいきなりパンフレットを出すような営業をしてしまうのです。ノルマに追われて、焦っているのでしょう。

 こうした失敗を避けるためには、「一拍置く」ことです。

 靴下を履き替えることもそう。商談の前に自分なりの一拍置く儀式を用意して、心を整えるのです。

 料亭のお座敷の出入口には「隠れ障子」というものがあります。隠れ障子は芸者さんがお座敷に入る前、最後に身だしなみを整えるためのしつらえ。お客さまの視線を遮るように作られた障子の影にすっと入り、髪や襟元の乱れを直し、お座敷に出ていくのです。

 実は、ディズニーランドのバックステージからオンステージに向かう通路にも同じしつらえがあります。この通路は、互い違いのS字型。これはオンステージからバックステージが見えないようにという工夫です。

 そして、オンステージへの出入口には鏡が設置されています。これは「身だしなみは大丈夫ですか?」「表情はどうですか?」というキャストへのメッセージ。キャストは、その鏡の前に立ち、自分の服装に乱れがないか、ディズニースマイルを浮かべることはできているかをチェックするのです。

 「ここから先は、ゲストにハピネスを提供するオンステージである」と。そんなふうに自分のなすべき目的を確認する。まさに一拍置くための場となっているのです。

 これは営業や接客の仕事でも同じです。ここから先は、お客さまの前に出るのだ、と。たとえ、プライベートで嫌なことがあったとしても、心を整えて出て行かなければいけません。料亭の隠れ障子、ディズニーランドの鏡のような何かを自分なりに見つけることが大切です。

 歯を磨くのでも、深呼吸でも、肩を大きく回すのでもいい。重要なのは「これからお客さま中心に考える」と自分の心に伝えることです。おもてなしは、非日常の世界ですから、ひと呼吸置き、心を整え、ステージに出るようにしましょう。

 すると、物事がよく見えるようになります。そういう意味では、時間ギリギリに現場へ向かうような仕事の仕方はすぐに改めるべきです。アポイントの時間の最低でも10分前には到着し、ゆとりを持って準備をすること。

 心を整えるとは、日常を切るための行為。非日常の世界に入り、お客さまを第一に考えるのです。

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