これは偶然の出来事ではなく、利休が信長という稀代の英雄をいかに観察していたかを示しています。
もてなすためにはどんな要素が必要か。お客さまとして見たとき、信長が何を喜びとするのか。相手の言動を丁寧に読み取り、求められているものを最高のタイミングで提供する――。心の機微を知り尽くしているからこそできる気遣いです。
利休は信長からのほうびを周囲に見せびらかすでもなく、自ら謎解きをするでもなく、信長へ黙礼し、静かに城を後にします。
ここまで整ったふるまいはそうそうできるものではありませんが、私たちも接客や営業の締めくくりには、お客さまへの感謝を示したいものです。例えば、
「私にとって、とても学びの大きい時間でした」
「満たされた時間を過ごさせていただきました」
と、お客さまに伝え、余韻を残す。これは単なるお世辞ではなく、心からの感謝の気持ちでないといけません。
「売らなくては、売らなくては……」と急(せ)いていると、相手を気遣った言葉や、感謝の言葉は出てきません。
営業マンだからこそ、「売る」という目的を忘れることが大切なのです。
お客さまと向き合ったときは、相手のことを思うだけでいい。相手を知り、何を望まれているかを分析し、求めに応じていけば、商品は自然と売れていきます。
まとめ
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