あなたがリーダーになったとき、部下だった時代の気持ちとして忘れずにいてほしいのは「気付くこと」と「褒めること」です。
とくに、数字での結果が出にくいバックエンドの仕事をしている人たちの働きに気付くことができるかどうかは、リーダーとしての評価を大きく左右します。
例えば、経理に出す出張の精算伝票。会社の売上に直接は貢献しない仕事ですが、経理の担当者にとっては、それをスムーズに処理することも大事な仕事です。ところが、営業成績の優秀なリーダーほど、売上に直結しない仕事を雑用だと考え、経理に「早く出してください」と言われると、「経理がうるさい……」などとぼやきがちです。
でも、そういう姿勢は周囲の部下に必ず見られています。そのリーダーがどんなにいい成績をあげても、社内での評判は上がりません。なぜなら、バックエンドにいる人たちの働きへの敬意に欠けるからです。むしろ、「あの人は仕事が雑だから」という評判が広がっていく。そうならないためには、会社を支える仕事をしている人たちの貢献に気づき、褒めることです。
ある人からこんな話を聞きました。
彼の働く事務所のホワイトボードはペンやホワイトボード消しを置くスペースが小さく、しょっちゅう物が落ちてしまう作りになっていました。社員は業務に追われ、落ちたペンを拾おうともしない人もいるほど。ところが、ある日を境にピタリと物が落ちなくなったと言うのです。
その理由は、最近入った事務のアルバイトの女性にありました。彼女は入った翌日にホワイトボードの前に物がよく落ちていることに気付き、次の日の出社前に100円ショップに立ち寄って、材料を買い、受け皿を広くしてくれたのです。
それに気付いた彼女の上司が「買ってきてくれたの?」と聞くと、「皆さんが物をよく落とされるのを見ていたもので」と答えたそうです。
なんて気がきく女性なのでしょう。本当にささやかなものかもしれません。いい子が来たな……で終わっても仕方ないところですが、その上司はその日の終礼でアルバイトの女性をスタッフの前で大いに褒めたそうです。
この話を聴いて、私はその会社は伸びるなと思いました。
というのも、事務所で地道な仕事をしている人こそ、組織のしつらえを支えているからです。もしも、私がリーダーだったら月に1回、彼女のような働きを見せてくれた人を「今月の◯◯の達人」という形で表彰するようにします。
副賞は500円のクオカードやスターバックスのコーヒーを買えるプリペイドカードで十分。金額ではなく、みんなの前で
「気付いているよ」
「よくやってくれたね」
と、伝えることが、スタッフのモチベーションを大きく引き上げるのです。
これはディズニーの「スピリット・アワード」と同じ仕組み。経費もかけず、すぐに始めることのできるリーダーから部下への気遣いです。
このように、おもてなしマインドを持った気遣い型リーダーシップを発揮することができれば、組織はかならず活性化していきます。
まとめ
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