「不満」をアピールの原動力に変える明日を変える働き方(2/2 ページ)

» 2014年09月22日 11時00分 公開
[金井壽宏,Business Media 誠]
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「1人で仕事をしているわけではない」という発想

 誰しも、会社や仕事への愚痴はあります。しかし、会社にそれをぶつけたところで、ただの愚痴では相手にしてはもらえません。Nさんのように、自力で何かを立ち上げることで、キャリアを大きく変えることもできるというのは、あらゆる職場でのヒントになるのではないでしょうか。

 またNさんのように「自ら積極的に行動して上を動かす」というのは、リーダーシップの究極的な形の1つといえます。とくに、会社に入って間もないときには「われわれは自分1人で仕事をしているわけではない(We are not all alone.)」という発想が大切です。

 英語ではNさんのような働き方を「自分の側が上司をマネージする(Managing your boss)」といいます。これはハーバード大学のジョン・P・コッターが同僚のジョン・J・ガバロと一緒に書いた論文のタイトルです。自分のボスを管理し動かすことができたとき、その仕事は自分自身がマネジメントしていると言ってよいでしょう。

 上司に言われることをただ淡々とやる仕事から、上司をマネージできるぐらいに主導権を握ることができれば、仕事のやりがいはまったく変わってきます。もちろん、仕事の優先順位や戦略的側面について上司としっかり共有しておくことが、上司に対するマネジメントの基礎として必要です。

ポテンシャルを超えるオーバーアチーバー

 Nさんは新規事業の立ち上げを通じて「一皮むけた経験」をしたようです。彼女のように、それまでの自分には想像もできないような力が発揮できて、周りの人も驚くような成果を上げることが、仕事の世界ではたまに起こります。人がそれまでの限界を超えてがんばれるときというのは、どういう状態で起こるのでしょうか。

 私の友人は、「ふつうの人、あるいは今までの自分が、そこまでいけば十分だと思えるレベルまでいっても、さらにより高度なものを目指して絶えず挑戦し続ける人」のことを「オーバーアチーバー」と名付け、いつかそれにあたる人たちの研究をしたいと言っています。

 リーダーシップ研究でも、上司や部下を含む周りの人たちから期待できる以上のものを引き出せる人が、トランスフォーメーショナル(変革型)リーダーと呼ばれています。

 オーバーアチーブとは、簡単に言えば「周囲から期待されている以上の成果を上げること」をいいます。人が仕事で飛び抜けた成績を上げたり、たくさんの人に多大なよい影響を与えるようなことを成し遂げる背景には、必ずといっていいほどこのオーバーアチーブが存在します。

 日系アメリカ人三世のその友人はイェール大学を3年で卒業し、UCLAのロースクールを出てすぐに弁護士になりました。それで満足するかと思いきや、さらにより高みを目指して、その後ふたたびMITの博士課程にやってきて学業を続けました。私は、彼女自身が「オーバーアチーバー」だと思っています。

 大事なことは、オーバーアチーバーとは生まれつきではない、ということです。生まれつきの知能水準、あるいは、IQテストで測定されるような知能指数のスコアから期待される水準より、はるかに高いパフォーマンスを学業や仕事、さらには趣味などで実現していく人がオーバーアチーバーです。簡単には現状に満足してしまわない人、といってもよいでしょう。「ここまでで終わり」「これであがり」などと思わないのが特徴です。

 彼らは、自分の知能やスポーツ、運動適性など、生まれつき備わっている能力を超えて、ひたむきな努力で成果を上げていきます。すべてが生まれつきで決まるのだとすれば、人生は面白くありません。

 もともとよくできる天才肌の人が成功するだけというストーリーは、映画にも小説にもなりません。たとえなったとしても、あまり心に深く響かないかもしれません。私は、ふつうの人が何かのきっかけで圧倒的な努力をし、大化けするようなストーリーが好きです。それは私だけでなく、世の中の多くの人もそうではないでしょうか。

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