周りの人にどんどん見せる困っている人のための企画術(2/2 ページ)

» 2014年09月30日 11時30分 公開
[福里真一,Business Media 誠]
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10の視点を持って考える

 私が企画を見せる人の中に、佐々木宏さんという人がいます。佐々木さんは、広告界では知らない人はいないぐらい有名なクリエーティブディレクターです。佐々木さんは「目が10個ついている」と言われるほど、いろんな視点でもって、企画について意見を言います。

 あるときは、日本の総理大臣にでもなったかのように、「いまの日本に、こんなCMがオンエアされることが、本当に求められているか」みたいなことを言い出したり、あるときは、ただのタレント大好きなおじさんになって、「この企画に壇蜜(だんみつ)はだせないのか」とか、「ふなっしーが後ろのほうにいてもいいんじゃないか」とか言い出したり。

 またあるときは、クリエーターというよりも営業のようになって、「広告主の宣伝部長が犬好きだから犬をだしておけ」とか、「もっと商品カットの秒数を長くしないと、広告主さんには通らない」とか、そういうことも言います。

 かと思うと、遠い目をしながら「東北の被災者の人たちの気持ちも考えて企画しなさい」と言い出したり――。

 そうして、つぎつぎといろんな人格に入れ替わりながら企画を検証していく。企画側としては、そんなにいろんな視点からの意見に対応していくのは大変ですが、CMというのはいろんな人がいろんな目で見るものですから、それに耐えうる「開かれた企画」になるためには、かなり有効なプロセスなのかもしれません。

 佐々木さんはちょっと特殊な人なので、そんな検証マシーンのような人は身近にはなかなかいないでしょうけど、だからこそ、近くに佐々木さんがいないときは、企画ができたら周りの人たちにどんどん見せるようにしています。

 例えば鶴の恩返しの鶴のように、「完成するまでは誰にも見せません」ということではなくて、「あー、私がはた織りしているところ、どんどんのぞいてください。まあ、そのときは私、鶴ですけど、気にしないで」と言ってしまうのです。

 とにかく、どんどん見せて、いいことを言われたらどんどん取り入れる。そのくらい気楽にやったほうが、芸術作品ならぬCMには、合っているような気がします。

 →連載:「困っている人のための企画術」 記事一覧はこちら

著者プロフィール:

福里真一(ふくさと・しんいち)

ワンスカイ CMプランナー・コピーライター。1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。

これまで1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本興業のタレント総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、ダイハツ「日本のどこかで」、東洋水産「マルちゃん正麺」などがある。

ACC(全日本CM放送連盟)グランプリ、TCC(東京コピーライターズクラブ)グランプリ、クリエイター・オブ・ザ・イヤー、など受賞。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを数多くつくりだしている。

著書に『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』(宣伝会議)がある。


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