人は誰かのためになら頑張れる「考える」力をつくる30のルール

人は、どんなときに頑張れるのか。それは、自分の家族や恋人だったり、あるいは苦楽を共にする同僚など、“その人のために頑張りたい”と思える誰かがいるときだ。

» 2014年10月01日 11時00分 公開
[長野真一,Business Media 誠]

集中連載「「考える」力をつくる30のルール」について

本連載は、長野真一著、書籍『「考える」力をつくる30のルール』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。

少子高齢化に年金制度の崩壊、いじめ、災害――。問題が山積みの現在の日本、私たちはこの困難の時代に生き延びなくてはなりません。

各界で活躍する一流の講師たちが、東北の未来を担う若者たちに「生きる力、考えるヒント」を授けるNHKのEテレ番組「東北発☆未来塾」。そのなかで、講師たちが語った珠玉のひと言が「ゴールデンルール」です。

 「コンセプトは机の上で考えるな。日常に落ちている」(箭内道彦)
 「人の意見をまずは肯定しよう」(山崎亮)
 「どこでも使える文言に、人をひきつける力はない」(星野佳路)

これからを生き抜くために、何を考え、何をすべきか。本書では、番組内で紹介した自ら未来を切り拓いてきた人たちの30ゴールデンルールをまとめました。アイデアを育て、人とつながり、困難に打ち勝つ――。そうした力をつけて生きるヒントをつかんでください。


絶望の淵でも、誰かのためならやる気が起きる

 人のやる気を引き出す。それは社会を生きていく上で、重要な力となる。

 人はどのようなときに頑張れるのか。答えは1つではない。人はそれぞれ異なった動機を持って生きているものだ。しかし多くの人にとって共通していることは、“誰かのためになら頑張れる”ということだ。

 被災地や紛争地帯での支援では、やる気は重要なキーワードになる。

 支援する側もされる側も、人々は疲れ果てている。生きる気力を維持するだけでも精いっぱいだ。そんな中、どうすれば人のやる気を引き出せるか。

 特定非営利活動法人『JEN(ジェン)』の木山啓子さんが、それについて考えた1つの体験がある。

 2004年、スマトラ島沖でマグニチュード9.1の大地震が起きた。直後に巨大津波が押し寄せ、甚大な被害が出た。死者22万人以上、被災者は500万人ともいわれる。

 その中で、生き残った人々の生活を取り戻すために、さまざまな支援が始まった。その支援活動の中で、木山さんは被災した1人の男性と出会う。

 彼は、かつて治安の悪いイラクに出稼ぎで働きに出ていた。貧しかった彼は、1年頑張って働けば、家族が豊かに暮らすことができるようになる、と、家族の猛反対を押し切ってイラクに向かった。1年後、彼は無事帰ってきた。家族は、涙ながらに再会を喜んだ。

 「ようやくこれで、家族一緒に幸せに暮らせる」と思ったのもつかの間。1週間後、大地震が起き、津波が押し寄せた。彼一人を残して、家族全員が亡くなった。

(写真と本文は関係ありません)

 長い苦労の末ようやくつかんだ幸せが、一瞬にして奪われたのである。彼は、生きる気力を失い、酒におぼれた。漁網作りの支援を呼びかけても、来ようともしなかった。

 ある日、彼は1人の少年に出会う。少年もやはり家族全員を津波で失っていた。まだ幼いのに、これから1人で生きていかねばならない。男性は、そのとき思い立った。

 「この少年のためになら、自分は生きていけるかもしれない」

 以来、彼は漁網作りに参加し、ついにはチームのリーダーにもなった。

頑張るには、“誰か”を見つけるのが近道

 人は、どんなときに頑張れるのか。それは、“その人のために頑張りたい”と思える誰かがいるときだ。それは、自分の子どもや親だったり、恋人だったりするだろう。あるいは苦楽を共にする同僚かもしれない。

 人は誰かのためになら頑張れるものだ。

 これは決して被災地や紛争地帯での支援活動に限ったことではない。日常の生活の中でも、働いたり活動したりしているとき、ほんの少しでもいい、喜ばせたい誰かがいれば、もっと頑張ろうというエネルギーが湧いてくる。

 そんな経験はないだろうか。

 自分が“この人のために”と思える人を見つける。それは、精いっぱい頑張れる充実した人生を生きるための、一番の近道かもしれない。

著者プロフィール:

長野真一(ながの・しんいち)

1989年、NHK入局。初任は京都放送局。過去の主な担当番組「堂々日本史」「その時歴史が動いた」「英語でしゃべらナイト」「リトル・チャロシリーズ」「トラッドジャパン」など。

震災直後に、東日本大震災プロジェクトの専任となり、2年間被災地支援の番組やイベントなどを実施する。「東北発☆未来塾」や「復興支援ソング・花は咲く」のプロデュース、「きらり東北の秋」や「ただいま東北」のキャンペーンなどを担当。


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