反対意見を楽しんでクリアする困っている人のための企画術(1/2 ページ)

考え抜いて出した企画が広告主に反対されて、悔しい思いをすることもあります。しかし、それを受け入れて順番にクリアしていくと、企画に深みとひねりが生まれてよくなることもあるのです。

» 2014年10月14日 11時00分 公開
[福里真一,Business Media 誠]

連載:困っている人のための企画術

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 この連載は書籍『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』(日本実業出版社)から抜粋、再編集したものです。

すごいアイデアを思いついて自信満々で発表したのにスルーされてしまった……。こういうケースは少なくありません。アイデアが支持され印象に残るかどうかは、内容の善し悪しに加え、段取り、流れやタイミング、そしてプレゼンのしかたなど、さまざまな要素に左右されます。

本書は、BOSS「宇宙人ジョーンズ」やジョージア「明日があるさ」などのヒットCMを生み出した著者が、アイデア出しとプレゼンの方法で困っている人のために書いた本です。

今でこそ多くの人気CMに携わっている著者ですが、「人とのコミュニケーションをとるのが苦手」と公言するように、実は著者自身がアイディアやプレゼンで「困っている」人でした。そんな著者が伝えるのは、

 ・「プレゼンがうまそう」という感じを出さない
 ・人は、自分にできることしか、できない
 ・説得しないで説得する

など、ダメな人、苦手な人、困っている人でも、自分なりのやり方を見つけられます。数々のほろ苦い経験をもとに、そのままま役立つ「アイデアの出し方」と「伝え方」を紹介します。


課題をクリアするのを楽しむ

 意見というものは、身内というか、一緒に企画を考えている仲間からでてくるとは限りません。むしろ、反対意見が一番でてくるのは、その企画を提案している相手である広告主からであることが多いです。

 広告主から企画に反対する意見が出たときに、「なんだよ、理解力のない広告主だな」とか、「なんとか説得して自分の企画を通してやる」という反応は理解できますし、そのほうが一般的だと思います。

 しかし、誰よりもその商品のことを考えているのは広告主でしょうから、彼らが企画をよくしてくれる意見を言っている可能性も高い。とすれば、それを取り入れたほうがいい企画になる可能性もあるというわけです。

 佐藤雅彦さんというCMプランナーがいます。2013年11月に紫綬褒章(しじゅほうしょう)も受章した佐藤さんは、広告主から言われた反対意見を、いわばゲーム感覚でクリアしていき、結果的にいい企画にしてしまう、という天才でもありました。

 もともと数学をやっていたという佐藤さんは、何か課題を与えられてそれを見事にクリアする、ということに喜びを見いだすタイプです。まるで問題を解くかのように、反対意見をクリアしていくのです。

 例えば、提案した企画に対して「商品の印象をもっと強めたい」とか、「あまりおもしろいシーンがあると、商品の印象が弱まるのでやめてほしい」、「とはいえ、おもしろいところもちゃんとつくってほしい」など、普通なら「じゃあ、どうすればいいんだよ!」となってしまいそうなたくさんの注文も、ひとつずつ順番に全部クリアしていく。そして、そのプロセスを通して、なぜか結果的に企画もよくなっていく。そこがすごいところです。

 佐藤さんがプレゼンテーションの場で、広告主からの10個ぐらいの課題に対して「1の課題はこう、2の課題はこうクリアしました……」と、ものすごくうれしそうに説明している姿を思い出します。それは、まだ若かった私にとって、かなりかっこいい姿として映りました。

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