「freee」「MFクラウド」そして「やよい」、どのクラウド会計ソフトで確定申告したらいいのか?確定申告2015(2/2 ページ)

» 2014年10月21日 13時00分 公開
[宮田健Business Media 誠]
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会計知識、仕訳を意識しながら使いたいなら「MFクラウド確定申告」

 「MFクラウド確定申告」は、金融や経理の文化をそのまま素直にクラウド化した会計ソフトだと感じる。マネーフォワードの辻庸介社長がマネックス証券出身(それ以前はソニーの本社経理部に在籍)という背景が大きいのかもしれない。

MFクラウド確定申告 MFクラウド確定申告

 いまどきの会計サービスらしく「仕訳を意識させない」というアピールはある。しかし、どちらかといえば「仕訳や会計が分かっている人の操作を邪魔しない」という作りになっている。例えば、画面設計にしても入力項目が裏でどういう仕訳となるかが理解しやすい。すでにパッケージソフトで行っていた会計業務知識がそのまま使えるような作りになっていることが特徴だ。

 このような設計思想は、他社の確定申告ソフトからの乗り換え面でも生かされている。例えば、筆者が使っている「やよいの青色申告14」のデータをエクスポートして、そのまま取り込んでも特に問題を感じない。期中の会計データですらそのまま移行が可能なくらいである。

とにかく会計処理を楽にしたいなら「freee」

 freeeは、良くも悪くも「元Googleのエンジニアたちが作り出したサービス」という色合いが濃い。会計処理のようなバックオフィス業務はなくてはならないものであるものの、できるかぎり省力化や自動化をして本業に専念できたほうがいいという設計思想がよく表れている。

freee freee

 「手間をかけさせない」ために、仕訳や会計知識を意識させないような入力方法や管理方法が目立つ。例えば、取引データの入力も自動取り込みを前提として考えている傾向がある。個人事業主のクレジットカードやプリペイドカードなどの処理は、連携サービスとして明細を取り込み、毎月の引き落としと相殺するのみで、かなりざっくりとした簡便な方法だ。

 freeeの作法である「銀行明細取り込み」「カード明細取り込み」「プリペイド明細取り込み」を活用し、自動化の波に乗ってしまえば「とってもラク」に会計業務をこなせるのだが、この作法に乗れない部分に引っかかりを感じる人もいるかもしれない。

 ちなみに、他社ソフトからの乗り換えにはCSVデータのインポートの形を取るものの「取引」として記録できないという問題がある。売上、売掛などの情報がリポートに計上されないため、既存会計ソフトからの移行は新会計年度を待ち、残高のみの移行とすべきだろう。もっともこの問題はfreeeの中の人にも指摘したので、改善される可能性は高い。

サポート力、歴史を考えたら「やよいの青色申告オンライン」

 弥生の力は、何といってもそのノウハウの蓄積とサポート力だろう。パッケージソフトで培った、仕訳の知識がなくても日々の取引を基に記帳できる「かんたん取引入力」のノウハウはクラウド版にも適用されているし、仕訳や経理業務の電話相談を付けた「ベーシックプラン」も用意している。

やよいの青色申告オンライン やよいの青色申告オンライン

 また、クラウド最後発とはいえ「やよいの白色申告オンライン」を2013年11月にリリースしてクラウドサービスのノウハウを溜めていたし、2014年7月からは自動取り込み部分を担う「YAYOI SMART CONNECT」を先行導入している。ただし、先述したとおり「やよいの青色申告14」から「やよいの青色申告オンライン」への移行パスは用意されていない(ちなみに「やよいの白色申告オンライン」から「やよいの青色申告オンライン」への移行手段は用意されている)。

前述の追記のとおり、2015年1月のアップデートでパッケージ版のデータをクラウド版に引き継ぐことが可能になっている。

 同社が満を持して投入した「やよいの青色申告オンライン」は、これから実装するという機能も残っているが、クラウド会計ソフトとして必要とされる機能はほぼカバーしている。帳簿やリポートの表示部分がとてもモダンなユーザーインタフェースになっていて、勝手に抱いていた「レガシー企業が作ったクラウドサービス」というイメージは霧散してしまった。

 繰り返しになるが、やはりサポート力には特筆したものがある。大阪と札幌の2カ所に設けたコールセンターによって、単純なソフトの使い方だけでなく、仕訳相談や会計処理の課題解決といった面までサポートする「業務ヘルプデスク」がクラウドサービスでも利用できる。この一点だけでも、やよいの青色申告オンラインを選択すべき理由となるかもしれない。

やっぱりパッケージ版「やよいの青色申告15」なのか

 これまで「やよいの青色申告14」を使っている人にとっては、「同15」を継続利用してこれまでの会計業務を一切変えないというのも正しい選択肢の1つだ。例えば、多くの書籍や解説サイトが「やよいの青色申告」を事実上の標準ソフトとして取り扱っているからだ。ソフトの価格もメーカー直販サイト価格で1万1880円だが、量販店であれば1万円を切る価格で購入できる。

 とはいえ、このパッケージソフトもサポート抜きでは語れない。手厚いサポートを受けるためには有償の「あんしん保守サポート」を契約する必要がある。サポート契約をしていれば、毎年の確定申告書類への対応だけでなく、消費税増税などの法令改正への機能追加、業務課題のサポート、最新版への無償アップデートなどが受けられる。

結局、Macを使うフリーランスはどうすべき?

 「やよいの青色申告オンライン」の記者発表において、弥生の岡本社長は「これでMacユーザーにも使ってもらえる」とコメントした。これはこれで(個人的にも)大変ありがたい申し出であるのだが、残念ながらMac上でWindowsを起動して「やよいの青色申告」を利用しているユーザーにとって、ロックインの呪縛から逃れるすべはないようだ。

 どうしてもクラウド会計ソフトを利用したいという場合、これまでの取引をチマチマと再入力するか、2015年1月1日に残高をごっそりと移行するしかない。むしろ、日々の記帳をおろそかにしていて、確定申告のシーズンになってから1年分をまとめて入力する人のほうが障壁が少ないというのはいただけない。パッケージ版からクラウド版に移行できると信じていた筆者も「移行作業に取りかからなくてはならないなあ」と嘆くのであった。

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