なぜ人は仕事よりメールチェックで時間を潰してしまうのか?ビジネスチームハック(2/2 ページ)

» 2014年11月07日 11時00分 公開
[佐々木正悟,Business Media 誠]
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マイルストーンを設けて達成感を維持できるように

 割り引かれてしまう魅力に抵抗するためには、プロジェクトの達成ポイント(マイルストーンを)をたびたび設けて、いちいち達成した素晴らしさを伝えていくことです。子供だましのようでも効果的です。

 また、プロジェクトの締め切りに間に合わせるには、日数はたくさんあっても状況はそれなりに緊急だということを断続的に訴えていく必要があります。人が毎日メールチェックをするのは、達成感をすぐに得られるだけではなく、その日が締め切りだからです。だからこそ緊急でもあるのです。

 これって、本来的には長期プロジェクトでも同じことだと思いませんか? しかし、日数がかかるプロジェクトでは、達成感の魅力が割り引かれるだけでなく、締め切りに間に合わないという危機感も同じように割り引かれているのです。

 遠い将来のリスクは、すぐにやってくるリスクに比べて心理的には小さなデメリットです。私達が「1日くらい歯を磨かなくてもいいだろう」と思ってしまうのも、歯を磨くことの面倒くささというごくわずかなデメリットを「間近だから」という理由で大きく感じてしまう一方で、歯周病になって歯を失うのは「数十年後だから」という理由で、ごく小さく見積もってしまうせいなのです。

 これはまったく合理的な判断ではありません。しかし、そうなのです。もともと双曲割引とは、「よくある不合理な行動をなぜとってしまうのか?」を明らかにするための理論だからです。

 時間のかかる仕事は、達成感という魅力が割り引かれているからモチベーションがわかない。締め切りを破るというリスクが割り引かれているから危機感もわかない。だからつい間近な仕事ばかりやってしまう。

 これを食い止めるためには、すぐに達成感を頻繁に感じてもらうようにし、危機感も同時に提示するしかないはずです。

筆者:佐々木正悟

 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。

著書に『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』『クラウド時代のタスク管理の技術』などがある。

ブログ「ライフハック心理学」主宰。

TwitterID:@nokiba


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