精神的にタフなビジネスパーソンになるための3カ条700万人メンタル不調時代に効く処方せん(2/2 ページ)

» 2014年11月11日 08時00分 公開
[神谷学,Business Media 誠]
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禅にも似た方法で質の悪い感情と向き合う

 総じて日本人は「解離的な怒り(爆発的な怒り)に弱い」といいます。何か怒っている人がいると腫物にさわるように扱い、その人が要求することを聞いてしまいます。怒っている人はますます味を占めて、何か気に入らないことがあると怒りによって要求を通そうとします。

 こうした怒りは質の悪い感情の爆発なので報酬を与えてはいけません。気に入らないことがあっても「きちんと表現をする」ということを学ばなければなりません。

 ストレス原因がある場合でも、それをきちんと突き詰めてベターな解を探るということは問題解決の理知的な作業です。問題を特定し、環境を変えたり、周りの人を動かしたりしてストレス原因を減らしていくべきです。ストレス原因に対して怒りを爆発させるというストレス対処は中長期的にはストレス改善には何の役に立ちません。むしろ人間関係を破たんに導くおそれが高まります。

 怒りという感情は非常に厄介なもので、その制御は難しいものです。感情を突き放すという意味では「マインドフルネス」という考え方がヒントになるかもしれません。

 マインドフルネスは仏教の要素を取り入れたセラピーの考え方で、心に湧き上がる思考や感情に引きずり回されることなく、心のありさまをありのままに観察するという方法でストレスを軽減します。禅にも通じるものですが、グローバル企業における人材教育でも取り入れられて注目を浴びています。

ストレスが少ないのは、仕事に興味がないからかも

 ところで、ストレスは低いほうがいいのでしょうか? 仕事の生産性という意味からは必ずしもそうではありません。

 ここで「エンゲージメント」という概念を紹介します。エンゲージメントとは、広い意味では、仕事や会社、クライアントに積極的、愛情的な状態を指す言葉です。このうち、仕事にフォーカスしたものが「ワークエンゲージメント」といわれます。

エンゲージメントとストレス反応

 エンゲージメントが高い状態かつストレス反応がよければ、その人はとても良い状態でアウトプットを生み出しているといえます。一方、エンゲージメントが高くてもストレス反応が悪ければ、燃えつきの恐れがありますのでクールダウンが必要です。

 問題なのは、エンゲージメントが低いがストレス反応が良いという一群です。企業内で組織分析をすると、こうした層が一定数存在します。この人たちは実はやる気やモチベーションが低下していたり、離職のリスクがあったりする人たちなのです。

 つまり、必ずしもストレス反応が良いことが無条件に良いとはなりません。仕事にやりがいを見出すために、自分の役割や位置付けをきちんと理解して、自分の仕事に価値があることを自分なりに納得して前向きに仕事に取り組むことが重要です。それは無条件に会社の言うことを聞いてすり減るということとは全く違います。

 仕事に対するやる気というものは人生の充実感に対しても極めて影響があります。仕事を充実したものにしながら、うまくストレスもマネジメントして悔いのないビジネスライフを送りたいものです。

著者プロフィール:神谷学(かみや・まなぶ)

アドバンテッジリスクマネジメント 取締役 常務執行役員

東京大学法学部卒業、文部省(現文部科学省)入省。2001年にアドバンテッジリスクマネジメント入社。経営企画を中心に、メンタルヘルスケアや就業障がい者支援などの分野で現在の事業の柱を作る。


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