伝わるプレゼンは、「事実」と「感情」を混同させない表現のプロが教えるスピーチの兵法(2/2 ページ)

» 2014年11月17日 07時00分 公開
[企業実務]
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「事実」と「感情」を混同させて話さない

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 もう1つ削除すべきは、話し手の評価が入った感情的な言葉「評価の言葉」。例文では「(数を表わす語の後に続く)もの」「やっと」「かなり良い」の部分です。

 「2年もの」と言わず「1年10カ月」と正確に言い切り、「やっと完成し」は「完成し」だけにし、「かなりよいもの」は自画自賛なので言わないようにします。

 「評価の言葉」を多用すると相手にオフィシャルな発言だと受け取ってもらえないため、ビジネスには向きません。

 「それでも、どうしても言いたい!」というときは、「事実」と「感情」を分けて話しましょう。日々のビジネスシーンでも、事実と感情を分けずに話しているケースは少なくありません。

 たとえば上司が部下のミスを顧客に謝罪するとき、事実(ミスが生じた原因)と感情(自分のミスではないのに残務処理に追われて嫌気がさす)を一緒に話すと、肝心の謝意が伝わらず、逆に不信感を与えてしまい、事態がより深刻になることがあります。

 言語表現は、第三者の視点を意識し、それは事実なのか感情なのかを冷静に判断する訓練を行うようにしましょう。

 無意識に口に出している感情の言語表現に気づいたら、グッと飲み込んで言わないようにします。

 また、伝えるべき感情であれば「○○と私は思っています」と、誰が思っているのか主語を明確にして話すと良いでしょう。

 例えば、「開発に○カ月かかりましたが、このたび△△が完成しました。担当者としては、かなり良いものができたと自負しております」というように「個人の感情」として伝えるのです。

 自分が思っている内容は紛れもない事実ですから、決して軽い話し方にはなりません。

 話し方が軽くなり信頼を失う原因は、オフィシャルの立場として発言をしているにもかかわらず、主語もないままに事実と感情を一緒にして話しているからです。

 話をした翌日に、「担当者として不適切な発言がありました。あれは私個人として感じたことを申し上げたものでして、当社とは一切関係がなく……」というような弁明を口にすることがないよう、言語表現は意図的に言葉を選びましょう。

 最後に前出の例文から「ぼかしの言葉」と「評価の言葉」を削除して事実のみに言い換えた例を挙げておきますので、参考にしてください。

 「3年前から、社内の20〜40代の社員より挙がっていた203件の意見を参考に、新しい経理管理システムを導入しました。システム構築には1年10カ月の月日がかかりましたが、このたび完成しました。」

今月のポイント

ビジネスでは「事実のみ」を話す点を強く意識することが重要。

あいまいな言葉や感情表現を多用する発言はご法度と心得よう。


著者プロフィール:矢野香

キャスター歴17年。主にニュース報道番組を担当。大学院では心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究。現在は、政治家・経営者・管理職を中心に「信頼を勝ち取るスキル」を指導。著書に『その話し方では軽すぎます! 〜エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』がある。著者オフィシャルサイト


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