「こいつ育てにくいな……」という部下を持ったアナタへそのひとことを言う前に(2/2 ページ)

» 2014年11月20日 08時00分 公開
[岩淺こまき,Business Media 誠]
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自分と異なる視点を得ることが成長につながる

 このように“自分と異なる視点や視座に気付く”体験は、視野を広げるとともに、成長につながるケースも多いものです。これは、特に自分と異なる「コミュニケーションスタイル」を持つ人が相手だと、気付きのインパクトは大きくなります。

 例えば、Aさんの例をソーシャルスタイルで分析した場合、Aさんは物事を荒立てることや怒られることを嫌い、周囲と仲良くしたい「協調派」タイプです。一方上司は、ぐいぐい周囲をひっぱる「行動派」か「感覚派」の人だと考えられます。もし、上司がAさんと同じ「協調派」だった場合、「いーよいーよ。そういう事もあるよね。次は気をつけて」で終わってしまいがちで、自分が変わる気付きを得るまでには至らなかったでしょう。

 同じコミュニケーションスタイルの人は話していて気楽で、居心地がよいことは確かです。しかし、違うコミュニケーションスタイルの人との交流にこそ、己の視野を広げ、成長するチャンスは眠っています。

photo (参考)ソーシャルスタイルによる4タイプ分類

部下に新たな“気付き”を与えられる上司であれ

 これは上司として部下を率いる際にも有効な考え方です。自分と異なるコミュニケーションスタイルの部下がいると「何となくやりづらい」「どのように育てればいいのか分からない」という考えを持ち、悩むことがあるかもしれません。

 しかし、無理に「部下に良いことを言おう」などと気負うことはないのです。自分の何気ない一言でも、それが大切にしている考えや普段から実践していることであれば、説得力を持って相手に気付きを与えます(それが押しつけであったり、説教であったりすると逆効果になりますが)。相手が持っていない視点を与えることに意味があるのです。

 逆に上司だって、部下の“当たり前”から学ぶことがあるはず。自分と似た感覚の人間でチームメンバーを固めている上司は見たことはありませんか? これでは上司自身の成長機会も失いかねません。異なる価値観の人間の存在を大事にし、学ぶ機会と捉えること――この感覚こそが、上司が陥ってしまいがちなプレッシャーを解き放ち、うまくチームを回していく土壌につながるのです。

今回のまとめ

Q:自分とタイプが違う部下を持ったのですが、どう扱っていいか分からず、どう育てて良いかも分からないため、困っています。

A:無理に部下を育てようと気負うことはありません。相手と違うタイプであることをプラスに捉え、部下が持っていない考え方や視点を提供することに注力しましょう。それだけでも相手にとって大きな成長につながるはずです。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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