感情に流されず事実のみを話す表現のプロが教えるスピーチの兵法(2/2 ページ)

» 2014年11月25日 08時00分 公開
[企業実務]
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 これは、まだもっと詳細にすることができます。「日本実業出版社から出版されている『企業実務』の6月号に書いてあった記事によりますと」です。情報源は可能な限り詳細に語ってください。

 その話を聞いた相手が、後から自分でもその情報源を追って探すことができるかどうかを目安にすると良いでしょう。『企業実務』に書いてあった……というだけでは、相手はいつのバックナンバーを探せば良いか分からず、不親切ですよね。

 この「よりますと」は、ニュース原稿では、「日銀によりますと」「警察の調べでは」など、必ず出てくるフレーズです。読者の皆さんも、「経理担当の田中によりますと」「弊社が先月行なったモニター調査によりますと」など、情報源を明らかにする癖をつけてみてください。

自ら得た情報を盛り込み噂レベルの話にしない

 「3. 一次体験に変換して語る」とは、「2」で挙げた二次情報を語るときに軽く聞こえないようにするための方法です。

 二次情報とは、「雑誌に書いてあった」や「誰かが言っていた」という第三者から得た情報のことです。望ましいのは一次情報、つまり「自分が直接見た・会った」という、自らが現場で体験して仕入れた情報を語ることです。

 つまり、すべてのことを一次体験に変換して語るようにすれば良いのです。

 例えば、取引先から部下のミスの噂を聞いたとしましょう。真偽について部下に確認する場合、あなたなら何と言いますか? 「例の件、何か問題があったそうじゃないか」は一番悪い例です。

 まず「1」の方法を使って数字・固有名詞を入れます。

 例えば、「5月にA社に提案した新企画の件、金額が問題になったそうじゃないか」となります。

 次に「2」の方法を使って情報源も加えます。「昨日A社の田中さんから聞いたんだけど、5月にA社に提案した新企画の件、金額が問題になったそうじゃないか」となり、最初の悪い例に比べると感情的な発言でなく聞こえます。

 さらに「3」の方法を使います。

 「昨日A社の田中さんから聞いたんだけど、5月にA社に提案した新企画の件、田中さんが概算の見積額を検算してみたら〇○円の食い違いがあったようだな」このように自分の一次情報(昨日田中さんから聞いた)と、情報源の相手にとっての一次情報(概算の見積額を検算してみたら〇○円の食い違いがあった)の2つの一次情報を通して事実のみを述べることができます。

 「何か問題があった」という噂レベルの話と比べると、その差は歴然としています。3つの方法を使って事実のみを淡々と述べ、どんなときも感情的にならない表現をマネジメントしてください。

今月のポイント

感情的な発言だと思われないためには、数字や固有名詞、情報源にも触れながら、「自ら仕入れた情報」として話をしよう。


著者プロフィール:矢野香

キャスター歴17年。主にニュース報道番組を担当。大学院では心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究。現在は、政治家・経営者・管理職を中心に「信頼を勝ち取るスキル」を指導。著書に『その話し方では軽すぎます! 〜エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』がある。著者オフィシャルサイト


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