この人の話なら最後まで聞いてみたい――そう思わせる話し方表現のプロが教えるスピーチの兵法(2/2 ページ)

» 2014年12月08日 09時00分 公開
[企業実務]
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伝えたいメッセージを口癖にする

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 言語表現で物まねされる個性を育てる方法の1つに「口癖」をつくることが挙げられます。

 「えー」や「あのー」といった意味のない口癖は、聞き苦しいノイズになり、聞き手に優柔不断な印象を与えます。しかし、意味のある言葉の口癖は、その人の個性として記憶に残ります。

 漫才師で元参議院議員の西川きよし氏の口癖は、自身の座右の銘である「小さなことからこつこつと」。選挙演説でも活用したこの口癖は、西川氏の当たりギャグにもなり、その発言が出ると拍手さえ起こります。

 少し前には、予備校講師・林修氏の「いつやるか? 今でしょ!」の決め台詞が注目を集めました。これも口癖の好例で、いまやこの決め台詞をアレンジした「いつ買うか? 今でしょ!」というCMまで登場しました。

 言語を変えずに一言一句、同じ言葉で言い続けることが自分の個性となり、伝えたいメッセージとして相手に記憶されます。皆さまもぜひ意味のある言葉で自分の口癖をあえてつくるようにしてみましょう。

自分の声の特徴をとらえ、ここぞという場面で活かす

 音声表現による個性は文字通り声でつくります。「個性的な声として物まねされるような人」として、あなたは誰を思い浮かべますか?

 政治家の故田中角栄氏のダミ声でしょうか。それとも、タレント・YOUさんのハスキーかつ時おり裏返るような声でしょうか。

 田中氏はあの声だからこそ発言に迫力を感じました。もし澄んだ美声だったとしたら、独特の存在感はなかったかもしれません。

 「自分の声が嫌いだ」という人は少なくないのですが、たとえば、自分の声が高くて嫌いだったら、一番伝えたい内容を話す際、逆におおげさなくらい高くしてみてください。自分の声の特徴はあえて中途半端にせず、強調させたほうが個性になるからです。

 文字情報では一番伝えたいところを、太字にしたりサイズを大きくしたり色を変えたりして強調しますよね。発言も同じです。自分が重要だと思う内容を相手にも重要だと感じてもらえるように、わざと声を高くしたり低くしたり、大きくしたり小さくしたりして強調するのです。

 強調したときの声が自分の個性と合致していれば、あなたの発言は相手の記憶に残ります。

ジェスチャーを取り入れて静と動のメリハリをつける

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 身体表現による個性はジェスチャーでつくるのがお勧めです。話をしながらコブシを振り上げたり、指で数字を示してみたり……という手の動きを加えます。

 ただし、あまり頻繁にやると目障りです。音声表現と同様に、重要だと思う内容でのみジェスチャーを取り入れるようにしてみてください。それ以外の部分では手を動かさず、静と動のメリハリをつけることが大事です。


 いかがですか? 数カ月ほど意図的な表現を続けると、会社の宴会などで誰かに物まねされるような個性として認知されるでしょう。

 自分が伝えたいメッセージのところで、口癖、声の変化、ジェスチャーを取り入れて、個性の上に成り立つ信頼感を表現してみてくださいね。

今月のポイント

口癖をつくって普段の会話に取り入れ、大事な場面の発言では声を変化させたうえでジェスチャーをつけると話し手の個性が育つ。


著者プロフィール:矢野香

キャスター歴17年。主にニュース報道番組を担当。大学院では心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究。現在は、政治家・経営者・管理職を中心に「信頼を勝ち取るスキル」を指導。著書に『その話し方では軽すぎます! 〜エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』がある。著者オフィシャルサイト


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