「私のいる部署全体がギスギスしていてつらいです」「働く意味」がわからない君へ

つらい状況の中でもそれを笑い飛ばして、自分と状況との間に「距離」をとります。苦しいときこそユーモアを使えば、自分だけでなく周囲の人も救うことができるのです。

» 2014年12月15日 05時00分 公開
[諸富祥彦,Business Media 誠]

連載:「働く意味」がわからない君へ について

本連載は、諸富祥彦著、書籍『「働く意味」がわからない君へ ビクトール・フランクルが教えてくれる大切なこと 』(日本実業出版社)から一部抜粋・編集しています。

 「希望の職業に就けていない」
 「今の部署ではやる気が起きない」
 「上司が評価してくれない」
 「失敗するのが怖くて動けない」

本書は、このようなビジネスパーソンが抱きがちな48の悩みに、ビクトール・フランクルの言葉と彼が創始したロゴセラピーの考え方をもとに答えます。

ロゴセラピーとは、フロイトの「精神分析」、アドラーの「個人心理学」に続く3つめの潮流として位置付けられている“生きる意味”の発見を援助する心理療法です。

「あなたには、あなたにしかできない使命がある」。『夜と霧』の著者であり、人生の意味を見つめ続けたフランクルが贈る運命のメッセージです。

日々の仕事に「意味」を見い出し、「使命感」を感じて取り組むためのヒントが詰まった一冊です。


私のいる部署全体がギスギスしていてつらいです。

 フランクルは、ユダヤ人であったためにアウシュビッツをはじめとしたナチスの強制収容所に捕虜として捕らえられました。そこは、非常に過酷な環境でした。

 そこでフランクルが発見したことがあります。

ユーモアは通常の人間の生活におけるのと同じに、たとえ既述のごとく数秒でも距離をとり、環境の上に自らを置くのに役立つのである。
(『夜と霧』)

 フランクルがここで指摘しているのは、たとえ強制収容所のような人間の置かれうるあらゆる環境の中で想像できる限り最も劣悪な環境にあっても、ユーモアを使う人はいたということです。彼らはユーモアを使うことによって、その過酷な状況を何とかしのぐことができました。

 過酷な状況の中でもそれを笑い飛ばすことで、自分と状況との間に「距離」をとり心を保つことができたのです。フランクルが体験したこの「収容所での事実」は大変な重みを持っています。

(画像と本文は関係ありません)

 強制収容所でできたことが、あなたの今の職場でできないはずはありません。たとえ周囲がギスギスしていたとしても、自分がその状況を笑い飛ばすことで、まず自分自身を救うことができます。

 それだけではありません。ユーモアによってひどい状況を笑い飛ばして自分自身を救うことができたならば、そのユーモアは同時に、その場にいる多くの人を救う力も持ちうるはずです。

 「自分にはユーモアは難しい」という人には、部署やチームに対する考え方を少し変えてみることをおすすめします。たしかに仕事には、1人でやる仕事だけでなく、チームでやらなければならない仕事もあります。でも、それだけにとらわれる必要はありません。

オーケストラのメンバーはそれぞれ自分の楽器を演奏することに、つまりただ自分の楽器だけの演奏に注目しなければならない。当然、メンバーは自分の楽器だけを演奏すべきであろう。
(『苦悩の存在論』)

 オーケストラは1つの曲を多くの楽器を使ってあれだけの人数で演奏するのですから、究極の共同作業と言えます。そこで自分に与えられた楽譜を見て、自分に与えられた楽器を使い、自分に与えられたパートを演奏するのです。フランクルがここで指摘しているのは、ただ周りと協調しているだけのように見えるオーケストラの場合でも、1人ひとりのメンバーが弾いているのは自分の楽器だけだということです。

 「チームプレイ」を行うときでも、結局はその中でそれぞれが自分に与えられた役割をこなしていくことしかできません。そう考えると「チームプレイだから苦手」というのは、1つの先入観なのかもしれません。

 チームプレイが重要な仕事においても、実は1人ひとりの人間が自分の果たすべき役割を果たしていくほかないのです。

自分が成長している実感が得られない君へ

苦しくつらい状況においてこそ、ユーモアを使いましょう。
ユーモアによって人は、自分の置かれた状況と「距離」を置くことができます。
自分自身はもちろん、周りを救うこともできるのです。


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