自分を情報のフィルターとする知的生産の技術とセンス(2/2 ページ)

» 2014年12月19日 05時00分 公開
[堀正岳, まつもとあつし,Business Media 誠]
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発見の手帳を作るポイント4つ

1. 文章で書くこと

 そらで考えるだけでなく文章にすることで、観察を正確にし、思考を精密にすることができます。と、同時に時間が経過してから自分の「発見の手帳」を見返した際に、過去の自分の発見を正確に理解できるというメリットもあります。

2. 発見をその場で文章にする

 発見は、驚きであり違和感であり、好奇心であり情熱のスタート点です。それはなるべく早く、その最初の印象が薄れてしまう前に記録する必要があります。

3. いつも身につけていること

 いつでもその場で文章にするためには、記録するための道具が必要です。このために梅棹先生はノートブックを、そして後に情報カードという、いつでも持ち歩ける手法を提唱しています。今ならここにスマートフォンなどを加えます。

4. 最低限の構造を与える

 梅棹先生の「発見の手帳」は、日記とは異なります。1つの発見を別の発見と区別するために、1ページには1項目、ノートのひとまとまりごとに索引を作るといった、最低限の構造を意識して記録がされています。情報カードは1枚で完結した1つの発見や考えであり、それを時系列から切り離して並べ替えることによって、情報のつながりが見えやすくなるのです。

現代における「発見の手帳」

 さて、梅棹先生の時代から時計を進め、私たちの現代において「発見の手帳」を作る場合にもこれらの点はまだ有効なのでしょうか? 今だからこそ注意すべき点はあるのでしょうか?

(写真と本文は関係ありません)

 まず「文章で書くこと」というのは、論理性を持った文章で残しておくことにほかなりません。これは記録する先がスマートフォンであっても、今も有用なアドバイスです。

 しかし今なら、文章を書く時間がない場合に写真を1枚撮影しておくなど、なるべく短い時間に完全な記録を残す工夫をするという具合に拡張してもよいでしょう。その場合でも、写真が何を撮影していて、そのどの部分が発見なのかをメモしておくのは必須です。写真は雄弁なようでいて、どういう意図で撮影したのかが分からないと途端に情報として意味を失うからです。

 デジタルカメラで撮影した古い写真を追っていると、海外のホテルでドアノブを撮影した1枚などが出てきて「これはなぜ撮影したのだろうか?」と首をかしげてしまうことがあります。一行でいいので、「このホテルはなぜ部屋の内側にも鍵穴があるのか?」と書いてあれば分かるわけです。

 いつ、どこで、何を、といったこれらの情報はコンテキストといって、情報そのものの意味が失われないように支える骨組みです。「文章で書くこと」には、写真や、それを撮影したという事実によって残るタイムスタンプや位置情報などといったコンテキスト情報も含めなければいけません。

 「その場で」「いつも身につけている」というポイントも、今も重要さを失っていません。むしろ写真を撮影して安心してしまわないように、その場でメモを同時に行うという心がけが発見の新鮮さを損なわない工夫になります。

 現在のスマートフォンならば、メモを取るだけでなく写真や動画の撮影、音声の録音といった能動的な記録に加え、日時や現在地といった、端末が自動的に保存する情報も利用することが可能です。

著者プロフィール:

堀正岳(ほり・まさたけ)

1973年アメリカ・イリノイ州生まれ。理学博士。北極における温暖化の影響評価と海洋観測を中心とした研究活動をするかたわら、「ライフハックは人生を変える小さな習慣」をテーマに最新のライフハックや仕事術、ツールなどをブログ「Lifehacking.jp」で紹介。Evernote ライフスタイル アンバサダー。ScanSnapアンバサダー。著書に『できるポケット Evernote 基本&活用ワザ 完全ガイド』(共著)ほか多数。

まつもとあつし

1973年大阪府生まれ。ジャーナリスト・プロデューサー。ASCII.jp、ITmedia、ダ・ヴィンチなどに寄稿、連載。万博公園・民博のそばで生まれ育つ。著書に『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?』(マイナビ新書)ほか多数。東京大学大学院博士課程・DCM修士。


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