簿記の勉強はほどほどに頼られる人になる「経理アタマ」の鍛えかた(2/2 ページ)

» 2015年01月22日 06時00分 公開
[企業実務]
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簿記は2級までで十分

 簿記の原則はいたってシンプルです。「仕訳は借方と貸方で貸借が必ず一致する」という大原則はどんなむずかしい仕訳でも崩れません。

 もしも、簿記2級レベルを超える実務に遭遇したときには、その部分だけかいつまんで勉強をすれば必要な専門知識は深まっていくものです。

 私は、簿記を1級まで取りたいと考えている経理の人がいたら、簿記は2級までにして、他のジャンルの勉強をしたほうが力がつくとアドバイスをしています。簿記の専門知識は仕事のベースとなるものであり必要不可欠ですが、ある一定レベルまでの知識があればそれ以降は費用対効果が薄れていくでしょう。

おすすめの周辺知識

 それでは、基礎知識が身についてからはどうすべきでしょうか。

 先程の経理一筋のベテランの人のアドバイスにあるように、世の中の動きを知ることは重要です。会社が何か新しい取引を行う場合に、その前提となる知識があるのとないのとでは取引に対する理解が変わってきます。

 特に自社が所属している業界については詳しくなりましょう。すべての業界にはその業界の歴史があって、その歴史の上に現在があるわけです。自社のことを相対的に理解するためにも、業界に詳しくなる必要があるのです。

 それから、給与計算・社会保険・労働保険等の総務・人事の知識を学ぶことも有用です。会社の規模が小さくなればなるほど、経理と総務・人事は同じ担当者が担当する場合が多いからです。特に小規模の会社の場合、何でもできる人は頼りにされます。

 IT関係の知識も経理業務を行っていくうえでの相乗効果は高いと思います。

 いまの会計ソフトは預金の入出金データを自動的に取り込む機能までもっています。他の業務ソフトと会計ソフトがクラウドで連携をして、経理担当者の主要な業務であった入力作業を減らすことで、経理を効率化することが流行っています。「データを集計して報告する」という経理の仕事の流れを効率化する際には、ITの知識が役に立つものです。

 経理の周辺を勉強してみると、自分のなかで「これだ!」と思うものに出会うはずです。この分野をきわめてみたいというジャンルです。もし、きわめたい分野が見つかったら、その分野の「簿記2級レベル」まで探求しましょう。

「他にいない経理」をめざそう

 実務経験を伴った経理の知識に、周辺知識が加われば、単純な足し算よりも効果があります。1つ身についたと思ったら、次の知識を身につけていきましょう。

 それを繰り返すと、知識の相乗効果で経理としての価値が高まるのです。経理一筋で専門性を高めるよりも、経理+α+β+γ……というように、いろいろなものを足していくことに価値を見出したほうがうまくいきます。

 繰り返しますが、経理をきわめようと専門的に学んだとしても、現場では役に立つとは限らないのです。会社内で存在感を示すためにも、1つの分野にとらわれないほうがよいでしょう。

 会社が合併をすることになったなど、本当に専門的な知識が必要なときにはその道のプロに短期間だけお願いすれば事足ります。経理人生で1回あるかどうかという分野の知識を学ぶよりは、いろいろなことを学んで知識の幅を広げていきましょう。

 本当にユニークな「頼られる」経理になりたければ、社会保険やITといった知識を身につけたうえで、さらに自分だけの分野を開拓していくとよいでしょう。

 例えば「経理+営業」のようなユニークな分野を開拓すると、自分の強みになります。

著者プロフィール:佐藤昭一

税理士。税理士事務所勤務、リサイクルショップ経営等を経て2006年佐藤税理士事務所を設立。ITを駆使した生産性向上支援、経理業務効率化等支援が得意。2010年にはAll Aboutプロファイルで人気1税理士に。


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