“感情のコントロール”は、大人のたしなみ上司はツラいよ(2/2 ページ)

» 2015年02月05日 10時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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自分のふるまいがチームに与える影響を自覚する

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 上司という立場になったら、自分のふるまいがチームの士気に大きな影響を及ぼすことを自覚した方がいい。つねに自分を客観視して、感情をコントロールするのが“大人のたしなみ”というもの。部下や後輩に余計な気使いをさせるのは、上司のすることではない。

 部下が困ったとき、問題を抱えているときには、いつでも相談をもちかけられるようオープンな存在でいるのが上司の役割であり、そのためには、感情を安定させるよう自分を律していかなければならないのだ。

 以前、いつも気分が安定しているように見える上司に、尋ねたことがある。

 「Aさんはいつも落ち着いて感情が一定しているように見えますが、ほんとのところは、機嫌が悪いとか、感情が高ぶっているようなこともあるのですか?」

 彼はこう答えた。

 「マネージャになった時、今まで以上に自分の感情をコントロールしようと思ったんです。だって周囲の人が、私の感情や気分の影響を受けてしまう立場になるわけですから。かなり意識して、自分の機嫌を律しているつもりです」

 話しかけると必ず口角を上げ、にっこりしながら「はい、何でしょう?」と応じてくれる上司は、「僕はかなり短気で感情がすぐ顔に出てしまう。それが分かっているから、意識して口角を上げるようにしているんです」と話していた。


 「40代以上の人たちはたぶん、“気持ちよく働ける環境を作る”という意識が希薄なのではないかと思うんです。働く人の気持ちとか自分の態度が周囲に与える影響なんて考えるという発想が育まれていないのかもしれない。でも、今はそんな時代じゃないですよね」

 冒頭の20代若手の1人は、こんな風にも話していた。

 なるほど、そうかもしれない。たしかに、パワハラとかアサーション(相手に配慮しつつ自分の意思表明をする表現方法)などという「働きやすさ」に関連する言葉が聞かれるようになったのはせいぜいこの10年ほどだ。

 人はびくびくしているよりも、心穏やかに、気持ちよく過ごせる環境にいたほうが仕事に集中しやすい。そうすればおのずと生産性も上がる。ただ、「気持ちよく仕事をする」環境作りは一人の努力では実現しない。一人ひとりが、みな少しずつ互いに気を遣いながら、そういうムードを作っていくしかない。

 上司は「働きやすい環境作り」を率先して行いたいもの。その1つとして、まずは、自分の機嫌をコントロールできるよう心がけたい。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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