システム部の上司は、メンバーに対してどのように接するべきでしょうか。常駐先にいるのでなかなか日々の接点を持てていないということであれば、まずはなるべく接点を持つ機会を見つけるということだと思います。
直行直帰を改めて事務所に顔を出してもらうとか、朝一番で簡単な会議を行って、昨日の振り返りと今日のタスクを共有しあうなど、業務上の連絡調整と合わせて少しでも対面で接して言葉を交わし、態度や顔色などからメンバーの状態をモニタリングするのです。
それもなかなか難しい場合には、最近はオンラインチャットなどのツールもありますので、そうしたものでやり取りをするなど工夫をしてみてください。重要なことは「放置しない」ということです。放置をするということはマネジメントを放棄するということです。
元気なときは1人でがんばれる個人であっても、ふとしたストレスから気分が落ち込み状態が悪くなることがあります。そうしたときに早く気付いてあげられるかどうかがメンタル不調の早期発見を左右します。メンバーから見て、見捨てられている、孤立していると思わせないようなマネージャーとしての取り組みが何より求められます。
不調には至っていないものの、ストレス対処が下手なメンバーがいます。ストレスに対してネガティブな対応は悪い結果をもたらし、ストレスを悪化させる遠因になります。ですからマネージャーはメンバーに対して介入して、ストレスに向かってよい対処をさせなければなりません。
例えば、ある業務を命じる上司の指示に対して「そんなことできるわけありません!」と明らかに不適切な態度で声を荒げて反論したとき、上司が周囲の目が気になるので「まあ、君の気持ちも分かるよ」となだめたとしたら、それは部下のネガティブな対応に上司が気遣いという形で「報酬」を与えたということになります。
これは部下のよくない行動に拍車をかけることになってしまいます。またこうした対応は部下にとっても職場の中で疎んじられるなど、中長期的には立場を悪くしてストレスを悪化させてしまうことになるのです。
こうしたときには、「今の君の態度は問題である」と、状況が落ち着いたらすぐに指摘することが重要です。これは、よくない行動に「ペナルティ」を与えるといいます。それにより、悪い行動を減らすように仕向けます。
そのうえで感情的ではなく、どのような工夫をしたら業務遂行が可能になるのか、話し合いによる問題解決にもっていきます。そのことができたら賞賛するなどのポジティブなフィードバックを与えることで、部下はよい行動にインセンティブを与えられ、結果的にストレスにポジティブに対応する行動が増えていくことになるでしょう。
システム担当者の業務特性は上司のマネジメントを難しいものにしています。しかし、他の職種よりもストレスが高い人たちですので、いろいろな工夫を通じて、なお一層メンタル不調の事前防止に努めていかなければなりません。
2015年12月から、労働安全衛生法が改正され、50名以上の事業場においてストレスチェックが義務化されます。ストレスチェックを受けることにより、従業員が客観的に自身のストレス状態を知り、医師やカウンセラーへの面談につなげられます。ストレスは自分自身ではなかなか気付きにくいことを考えると、こうしたチェックは上司によるケアを補完するものとして有効であると考えられますし、50人未満の事業場においてもぜひ導入されることをお勧めします。
アドバンテッジリスクマネジメント 取締役 常務執行役員
東京大学法学部卒業、文部省(現文部科学省)入省。2001年にアドバンテッジリスクマネジメント入社。経営企画を中心に、メンタルヘルスケアや就業障がい者支援などの分野で現在の事業の柱を作る。
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