部下にうまく仕事を“催促”する、たった1つの方法そのひとことを言う前に(2/2 ページ)

» 2015年02月12日 08時00分 公開
[岩淺こまき,Business Media 誠]
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「事象+伝えること+理由」の3点をバランスよく入れる

 今回の例では、dがアサーティブなコミュニケーションに当たります。これは“相手の状況を尊重した上で、自分の伝えたいことをきちんと伝える”スタイルです。相手との摩擦が起きにくく、パフォーマンスを最大限発揮しやすくなるメリットがあります。チーム内コミュニケーションだけでなく、日常のコミュニケーションなどにも使える、汎用性の高いスキルと言えるでしょう。

 そのポイントは、発言する内容に「起きている事象」+「伝えること」+「相手が納得する(であろう)理由」という3要素をすべて入れるということです。今回のケースにこの形式を当てはめると、例文は以下のようになります。

要素 言葉
起きている事象 「まだ送れてないのね」
伝えること 「では、すぐに送って」
相手が納得する(であろう)理由 「お客さんを待たせることになるから」

 「これ以上お客さんを待たせたくないから、すぐにメールを送って欲しい」「今メールを送ってもらいたい。なぜかというと、お客さんと今日午前中にメールする約束になっていたからね」といった言葉でもOK。この3つの要素が入っていれば、順番が変わっても問題ありません。しかし、必ず行わなければならないことが2点あります。

  • 「伝えること」を明確に言葉に出すこと
  • 「伝えること」と「理由」を必ずセットで伝えること

 まずは「伝えること」をしっかりと言葉にしましょう。そうしないと、相手が相手なりの解釈で行動を起こし、解決が先延ばしになってしまいます。しかし「伝えること」ばかりを言っても、相手に“やらされ感”が生じてしまいます。そこで必要なのが「理由」です。事情を理解することで「送ればいいんでしょ!」と言われた通りに動くのではなく、的確に反省し、最終的に自主的な行動を促すことができます。

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 また、自分が説明した理由で“相手が納得するか”どうか振り返ることも必要です。人はしばしば自分を基準にものごとを捉えてしまうもの。例えば、「普通すぐ送るでしょ、メールくらい」と“メールをすぐに返すのは当たり前”と催促する理由(価値観)を示しても、それが相手の納得するものでなくては意味がありません。「申し訳ありません……」とただしょんぼりしたり、言い訳ばかりして結局メールを送ろうとしない、といった行動に終始してしまいます。ここがアサーティブなコミュニケーションのキモと言えるでしょう。

 この3要素のバランスが崩れると、cのように「起きている事象」ばかりを指摘して追い詰めたり、beのように「伝えること」を欠いたぼんやりとした言葉になってしまいます。感情が高ぶっているときなどは特に、こうした原則を忘れがちになってしまうので注意しましょう。

今回のまとめ

Q:相手に仕事を催促したら、相手のモチベーションが下がってしまいました。どうすればいいのでしょうか。

A:ついつい攻撃的な言い方をしたり、自分基準の理由で催促していませんか? 「事象+伝えること+理由」の3点をバランスよく入れた、アサーティブな言い方を、自在に使えるようにしていきましょう。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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