それぞれの例で失敗した原因を分析してみましょう。
ケースAについては「推測を元にフィードバックを行った」ことが原因です。予想や想像が外れると、相手に「何を言ってんの?」と思われたり、場合によっては「全然分かってないな」とマイナスの印象を与え、誤解や信頼喪失につながりかねません。事実をベースにフィードバックを行いましょう。また、ダメ出しっぽい口調になっているのもよくない点です。
ケースBについては「あいまいなフィードバックを行った」ことが原因です。フィードバックの基本は、相手との認識をすり合わせることです。相手が理解できなければ、意味がありません(ここで「分かった?」とダメ押しするのも効果が薄いです)。なるべく具体的な表現で、シンプルに伝えることがポイントとなります。
これらの点を踏まえた、成功するフィードバックの会話例は以下のようになります。
上司C: この間の提案資料よかったよ。部屋をみたらチームのみんなもいたけど、君が常にいたね。納期きつかったのに、よく頑張ってくれた。
Dさん: ありがとうございます(納期も自分もきつかったことも、知っていてくれた)。
上司E: (資料をレビューしながら)全体的に分かりにくい。特に2〜3ページ目が、技術者視点に寄り過ぎている。読者となるユーザー目線でもう一回見直して。
Fさん: 分かりました、見直してきます(確かに専門的な目線が強すぎたかもな……)。
このように“事実に基づいて、具体的に伝える”ことを繰り返せば「正しく評価し、見守っている」という印象を与え、部下からの信頼を得ることができます。面談などかしこまった場だけではなく、日常的に意識して使いこなしていくといいでしょう。
もちろんこれは部下や後輩に対するコミュニケーションだけではなく、上司相手でもプライベートでも活用できるものです。そういう意味ではコミュニケーションの“基本”と言っても差し支えありません。
Q:自分のフィードバックを周囲が嫌がっているように見えます。ちゃんと評価しているはずなのですが。
A:「ダメ出し、推測、あいまい」という要素を含んだフィードバックになっていませんか。むしろ逆効果です。「事実に基づいた具体的なフィードバック」を意識してみてください。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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