勉強会には、茨城や千葉のBtoC農家を中心とする17人が集まり、2件の農家の課題や久松農園の仕組みなどを共有。技術担当の松本さんが「データ管理のコツ」を解説し、それぞれのプレゼン内容に質問が飛び交いました。
久松さんは、「栽培については師匠や本で学べることが多いけれども、BtoCを手がける農家の業務改善はお手本がほとんどない」と指摘します。
例えば、卸業者を対象としたBtoB農家の場合、栽培する品目数も取引先も少なくて済みます。しかし、BtoCの個人宅配を始めると、一気に数十を超える顧客管理や発送業務が発生するのに加え、生産品目数も数十種類に増えることからその管理業務も発生します。
こうした事務作業は増えるのに、農家の多くは栽培・収穫を行う作業現場(畑)とPCの置いてある事務所が離れているため、あとでまとめて作業することになります。そうなると事務作業が面倒になり、心理的な負担を感じてしまうのです。
さらに、農業を始める若い夫婦は、夫が栽培、妻が事務作業を担当するケースが多く、身内同士で気心が知れている分、互いのワークフローを一歩引いて整理することを後回しにしがちという課題もあります。
実は農家は、一般企業にひけをとらない、むしろそれ以上のデータを扱う業種です。
例えば販売台帳や商品データ、顧客データの管理に加え、栽培記録で何をいつどのように収穫したかを記録し、栽培計画で1年に収穫する品目を時間と植える面積で管理し、農業簿記で作物を管理するという作業があります。さらに、天候データや農業用資材、肥料、土なども管理してPDCAを回していくのです。
「これらのデータ管理や業務を効率化することが、本来それぞれの農家のもつ「個」を生かすことにつながる」というのが久松さんの考えです。
小規模な農家の中では格段にIT化が進んでいる久松農園では、クラウドやアプリケーションを活用してデータ管理を行っています。長年試行錯誤しながらインフラを整え、「1年目の従業員でも作業ができるところまで達している」という話に、参加者からはどよめきの声があがりました。