これまでの経験から得られた自分なりのルールや仕事の手法を、役立つ情報として部下に伝えるには、どうしたらいいのか。そのヒントは“対話”にありそうだ。
「このやり方が“普通”」「こうするのが“常識”」と、一方的に押しつけるのではなく、「私が以前いた会社(部署)では、こういうやり方をしたけれど、その方法はここでも適用できるのかな」と問いかけてみる。「私の経験ではこうだった」と、事実だけを伝え、さらに、そのやり方についてどう思うか、この会社に合っているかを部下に訊いてみるのだ。
そうすれば部下は、「なるほど、その方法、いいですね」と同意するかもしれないし、「そのままでは難しいかもしれませんが、こういう方法ならどうでしょう?」と新しいアイデアを出してくるかもしれない。
このような“話し合いのプロセス”さえあれば、結果がどうなったとしても、部下は押し付けられたとは思わないだろう。さらに意見を言うことで意思決定に参加できるため、結果として決まったことにも納得がいくはずだ。
部下とのコミュニケーションで重要なのは、“部下の考えにきちんと耳を傾けること”だ。それは、若手社員に「どういう上司が好きですか」と尋ねると、「部下の話を聴いてくれる人」と答える人が多いことからもうかがえる。
結局は上司の考え方を受け入れることになったとしても、その過程で“自分たちの意見や考えを聴いてくれたかどうか”によって、部下の受け止め方や納得感はずいぶん変わってくる。
今は、上司がすべてを知っていて、部下にトップダウンで指示出しできる時代ではなくなってきている。そんな中で最善の策を見つけるためには、知識や経験を一方的に伝えるのではなく、部下を巻き込み、一緒に考えていくのが上手なやり方といえるだろう。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
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