「気が利かない部下がいて困る」 それって実は自分のせいかも?そのひとことを言う前に(2/2 ページ)

» 2015年03月26日 09時00分 公開
[岩淺こまきBusiness Media 誠]
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仕事を頼むときのリーダーの役割

photo 目的地を示すのが仕事を頼むときのリーダーの役割と言えます

 複数の部下に仕事を頼むときのリーダーの役割は、言うなれば“遠足の引率”のようなものです。自分が学生(小学生でも中学生でもいいです)の遠足を引率している姿をイメージしてみてください。もしかすると道中、はぐれてしまう子もいるかもしれません。そういったリスクに備えて、彼らに目的地を明示し、目的地にどのように向かうのかということを伝えておく必要があります。

 仕事も同じです。ミッションの目的地と目的地への向かい方――つまり目的と手段を明確に伝えることが不可欠なのです。「目的と手段? 手段はともかく目的なんて、言わなくてもわかるでしょ」とタカをくくっていると、先ほど挙げた例のようにバラバラの成果が出てくるでしょう。部下が意図通りの行動で成果を出すためには“意識の統一”、つまり全員が同じ方向を向いてミッションを遂行する状態が不可欠なのです。

 リーダーやマネージャーともなれば、部下よりも仕事の経験が豊富で、会社の方向性も染みついていると思います。しかし、仕事の経験がまだ浅い部下に頼む場合、判断の基準が少ないため、さきのAさんのように、言われたことを愚直なまでに行ったり、見当違いの答えを出してしまったりすることもあるのです。

 例えば、「売り上げを上げるために訪問数を増やせ」と言っても、ただ闇雲に増やせばいいというわけではないでしょう。規模も業種もバラバラとあっては、売り上げにつながる確度が分かりません。また、新たな企画を任せるときに「面白い企画を考えてきてよ」といった大雑把なお願いをするのも考えものです。“面白い”と思う感覚は人それぞれ。「愉快」「滑稽」それとも「興味深い」でしょうか。感覚に任せた物言いは、後でトラブルを生みやすくなります。

仕事の目的と手段を明確に伝えるには?

 仕事の目的と手段を明確に伝えるには、「何のために」「何を(どの程度)するか」をていねいにチーム内で共有することが重要です。「何をするか」は手段を提示するとともに、成果の足並みをそろえるために伝えます。

 これはチーム運営の基本と言えますが、完璧にできている人は多くはないでしょう。その理由は大きく2つに分けられます。まずは先述したように“目的と手段”を伝える必要がないと思い込んでいるパターンです。

 自分が新人のころを思い出す――といった方法はよく紹介されていますが、簡単なことではありません。それよりは誰にでも分かりやすい言葉で伝える方が現実的です。今回のケースは、学生でも分かるロジックで語れればよいでしょう。例えば、Aさんの例にあてはめると、次のような伝え方になります。

  • 何のために:今後の成約案件につながりそうな新規顧客を増やすために
  • 何を(どこまで)するか:既存顧客以外の情報通信業、情報システム系の名刺を優先して獲得してほしい。目標は1人あたり100枚。ノベルティと交換時に会話をして、できればブースまでご案内すること

 さまざまな条件がここまで明確になっていれば、足並みがそろいます。キックオフなどでプロジェクトチームが始まるとき、何か新しくタスクが始まるとき、会議の開始時など物事のスタート地点では、声に出して確認し合いましょう。

 とはいえ、「ここまでするのは大変というか面倒だ」という人や、実際、自分が指示だしする場合はどうやって伝えればいいの? と思われるかもしれません。この“面倒だから”を取り除き、うまく伝えられるようになるための方法は次回に。

今回のまとめ

Q:部下に仕事を頼んだのに、自分が思ったように動いてくれず、成果もバラバラです。これは気が利かない感じが辛いです。

A:もしかすると、自分にも“気が利かない”面があるのかもしれません。仕事を頼む際に「何のために」「何をするか」をしっかりと共有しましょう。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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