今回の特集では、「GTDって何?」という人から、GTDを始めたいのだけど……という人まで、その理論と実践の方法を分かりやすく解説していきます。
→Getting Things Done(GTD)まとめページはこちら
GTDとは何か?
GTDとは米国のコンサルタント、David Allenさんの著書、「Getting Things Done」のことを指します。この本で紹介されている理論が今、注目を集めているのです。さてこのGTDとはどういったものでしょうか? 一言でいうと「ナレッジワーカーのための仕事術」です。
知識社会の仕事はますます複雑になってきています。「どこまでやったら終わりなのか」がはっきりしない上に、スピードが要求され、しかも降ってくる仕事の量は増えるばかりです。
そうした状態では、従来までの仕事術である時間管理手法は全く役に立ちません。きっちりスケジュールを引いたとしても、次々と降ってくる複雑な仕事がスケジュールを再び混乱させてしまうからです。
そして問題なのは、スケジュールが混乱すればあなたの頭の中も混乱してしまうことです。「あれ、やったっけ?」「次、なんだっけ?」と常に仕事に追われるストレスにさらされてしまいます。
疲れ切った頭からはクリエイティブなアイディアは浮かんできません。大事なのは時間を管理するのではなくて、頭の中を常にすっきりさせ、必要なときに必要なエネルギーとアイディアをひっぱりだす手法です。
GTDが提唱する、たった5つのステップを毎週行うことで、仕事にコントロールされるのではなく、自分が仕事をコントロールする感覚を取り戻すことができます。そこまでしてはじめて、今の仕事に本当に必要な、新しいアイディアが次々と頭の中に浮かんできます。
あなたもGTDを始めてみませんか?
GTDの特徴とは?
GTDは従来までの時間管理術や、付箋はこう使え! などのTips的な仕事術とは全く異なります。ではGTDにはどういった特徴があるでしょうか。ここでまとめてみましょう。
GTDはエネルギーとアイディアを管理する
GTDで管理するのはエネルギーとアイディアです。これはナレッジワーカーが抱えるストレスを理解し、それに対処することによって実現されます。
ナレッジワーカーが抱える仕事は終わりがはっきりしないものばかりです。それらをすべて頭の中に抱えていると日々のストレスは増大していきます。この頭の中の「やりかけの仕事」をうまく管理していく手法こそがGTDなのです。
GTDでストレスが管理できるようになると、すっきりとした頭でさまざまなアイディアを生み出していくことができます。GTDはストレスフリーの仕事術であると同時に、最強のアイディア創出術でもあるのです。
GTDはツールを選ばない
GTDは「うまくいく考え方」であって、ツールはどれでもかまいません。自分が今まで使っていたツールを変える必要は全くありません。手帳を使いたい人はそうすればいいですし、Webを使って仕事をしている人はそれをそのまま使えば大丈夫です。もちろん紙とペンだけでも実践できます。
今まで使っていたものをそのまま使えるので、すぐに無理なく実践できます。新しく特殊な手帳やソフトウェアを買う必要もないのでコストがかからない点も大きな魅力です。
GTDは破綻したときのリカバリーが容易
GTDがうまく実践できるようになると、常に頭の中はすっきりした状態になります。ただ、それ以上に重要なのは、また頭の中が混乱してきたときに「どうしたらまた頭の中をすっきりさせられるか」が身につくことです。
たいていの仕事術は「いったんうまくいかなくなったときにどうリカバリーするか」を教えてはくれません。こと細かに「この順番で、このツールを使って」と指示してあったりするとさらに大変です。
GTDでは、多少途中で間違えたとしても大きな流れにはあまり影響がないように組み立てられています。また途中でうまくいかなかったときに何をすればいいかも教えてくれます。破綻しにくく、リカバリーしやすいのがGTDの大きな特徴です。
GTDを始めるにはどうしたらいいの?
「ちょっと今忙しいから新しい仕事術なんか勉強している暇ないよ……」というときこそ、GTDを始めるベストのタイミングです。仕事に追われているときこそ、GTDが最も威力を発揮するときです。逆に仕事に追われていないときにはGTDはあまり必要ありません(その効果を体感することもできないでしょう)。
GTDは誰でも簡単に始めることができます。まずはGTDの大きな流れを理解しましょう。
- 頭の中の「やりかけの仕事」を「すべて」紙に書き出す
- それぞれの「やりかけの仕事」について望むべき結果を決める
- 定期的にそれらをレビューする
これだけです。言ってみればあたりまえかもしれませんが、ちょっと考えてみてください。実はこれとまったく逆のことが日常的には起こっています。
あなたは「やるべきこと」を「すべて」書き出したリストを持っていますか? 一部だけ持っている人はたくさんいます(今日やるべきこと、のリストとか)。「やりかけの仕事」を頭の中に持っている限り、頭の中がすっきりすることはありません。
あなたは「やりかけの仕事」について「どこまでやったら終わり」と決めていますか? 何を目指しているのかがはっきりしない限り、どんな作業をしたとしてもその仕事が終わることは決してありません。
あなたは「やるべきこと」を書き出し、それらについて望むべき結果を決めることを定期的に行っていますか? すっきりした頭を保つにはこれらを常に最新の状態に保っていることが絶対必要です。
もしあなたが上の3つを実践できているとしたら、GTDは必要ないでしょう。すでに仕事でも高い成果を上げていることでしょう。しかし、当たり前のように見えるこの3つが実践できていないとしたら、GTDを試してみる価値があります。
GTD実践のための5ステップ
この3つを具体的に実践していくには、次の次の5つのステップが必要です。これを毎週繰り返していくことでGTDは機能します。
- 収集 頭の中の「気になっていること」をすべて紙に書き出します
- 処理 書き出した事柄について、あるシステマチックなやり方にそって、しかるべきリストに仕分けしていきます
- 整理 作ったリストを、自分が使い慣れているツールに組み入れていきます
- レビュー 自分が置かれている状況、持っているエネルギーを把握しつつ、今何ができるかをレビューします
- 実行 今できることの中からやるべきことを実行していきます
この5つのステップは、最低でも毎週繰り返し行う必要があります。
例えるならばこれらの作業は濁った水を濾過していく作業です。普段の仕事をしているなかで、あなたの頭の中は「あれもやらなくちゃ、これも、それも」といった「やりかけの仕事」でどんどん濁ってきます。この濁りは毎週5つのステップできれいにしていく必要があるのです。
またこれらは最低週に一度は行うことになりますが、「何かがうまくいっていないなぁ」というときも、このステップを再度行えばまたすっきりした頭の状態を手に入れることができます。
これらの作業ステップの詳細は、「写真でわかるGTD」「週次レビュー編」をご覧ください。
今ならできるGTD
- 「将来の目標」は「日々の仕事」の中にあり
デビッド・アレンさんは「日々の仕事を片付けられないと、将来の目標など見えてこない」と言います。日々仕事に追われていたりストレスにさらされていると将来のビジョンは描きにくくなります。(2008/12/31) - GTDでつまずきやすい「プロジェクト」って?
GTDで分かりにくい概念のひとつに「プロジェクト」があります。6つのレベルでやるべきことを見直す「Horizontal Model」で考えると、プロジェクトの活用法が見えてきます。(2008/12/30) - GTDで“頭の中のメモリ”を空けておこう
気になることを頭に溜め込んだ状態では、目の前の作業に集中することは決してできません。「あれやったかな」「あ、それもやらなくちゃ」「あの件、あの人に確認しなくちゃな」と本来の作業を邪魔する思考ばかりが浮かんできて、生産性をがくんと落としてしまうからです。(2008/12/29) - GTDで「思いつきの行動」をなくそう
その時(もしくはその日)思いついた選択肢から行動を選んでいます。これは実に非効率的です。GTDを実践できるようになると「あらかじめ用意された選択肢」から行動を起こせるようになります。(2008/12/28) - GTDで達成できるもの――タスクは減るの? 増えるの?
「GTDを実践すれば、ToDoリストのタスクがどんどん片付くのですよね?」とよく聞かれます。これはある意味イエスであり、ある意味ノーでもあります。(2008/12/27) - 「頭の中」も「机周り」もすっきりするのがGTD
過去のGTD連載では「頭の中の気になること」に重点を置いて説明してきましたが、本来のGTDは物理的に気になるもの─―手をつけていない書類やいっこうに片付かない引き出し─―などを整理する手法でもあるのです。(2008/12/26) - GTDは難しい? 「この作業をマクロに設定しておけば楽だろうな」に似ている
「GTDはとっつきにくい」「GTDのここが分からない」といった感想をよく聞きます――。GTDのバイブル『Getting Things Done』を再翻訳した『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』の監訳を担当した田口元さんがGTDの実践法を解説します。GTDはとっつきにくい、分かりにくいと思っていた人、必読です。(2008/12/25)
デビッド・アレン氏来日
- 提唱者デビッド・アレンさんに聞く、GTD実践法
GTDの提唱者であるデビッド・アレンさんが来日、Biz.IDではアレンさん自身がどうやってGTDを実践しているかを聞いた。(2008/06/17) - デビッド・アレン氏セミナームービー
GTDの提唱者は、GTDを広めるためにどんな試行錯誤をしてきたのか。GTDのこれまでを振り返り、ポイントを語る。(2008/06/16) - デビッド・アレン氏が答える、GTD Q&A
どうしたらGTDをマスターしたといえるの? 週次レビューができないんだけど……、どんなツールをAllenさんは使っているの? 「BIz.ID×GTDイベント」でデビッド・アレン氏に答えてもらった。(2008/06/13) - デビッド・アレンさん来日イベント始まる! 「GTDは我々のような“怠け者”を助ける」
こんにちはデビッド・アレンです――。あのGTDを提唱したデビッド・アレンさんがついに来日し、Biz.ID×GTDのイベントも始まった。さっそくアレンさんのコメントを紹介しよう。(2008/06/13)
理論編
- イブに「仕事で会えない」をなくすには――『ストレスフリーの整理術』
年の瀬も押し迫った師走、仕事に追われているのは筆者だけではあるまい。特にクリスマスイブでもある今夜は、「大事な人との約束があったのに仕事が忙しくて」なんて断る人もいそうだ。GTDの原典を再翻訳した『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』(二見書房)はそんな人にオススメである。(2008/12/24) - はじめてのGTD
ストレスフリーの仕事術、GTD。海外のナレッジワーカーには常識になりつつあるこの仕事術、あなたはもう試してみましたか?(2006/06/27) - 図解GTD──5つのプロセスをイメージで捉えよう
GTDのフローチャートは分かったが、それぞれがどのような意味を持っているのか実感するのは難しいものです。今回は、“机”を例にGTDのプロセスをイメージしてみましょう。(2006/07/21) - GTDのそこが知りたい
ストレスフリーの仕事術──GTD。その内容について、よく聞かれる質問をFAQ形式でまとめました。「GTDとは何の略ですか?」「今までの仕事術は何が違うの?」「どうなったら終わりなの?」などなど──。(2006/06/27)
実践編
- 写真でわかるGTD(初回編)
GTDってどういうものなのかは分かったが、では実践するにはどうすればいいのかイメージがわかない方もいるでしょう。今回は、GTD初めてのITmediaスタッフが、実際にチャレンジしてみます。(2006/06/29) - 写真でわかるGTD(週次レビュー編)
GTDをITmediaスタッフが実践。その様子を順を追って写真で紹介する「写真でわかるGTD」。今回は、GTDで最も重要だといわれる「週次レビュー」の実際を見てみます。(2006/07/11) - 写真でわかるGTD(導入2カ月後)
GTDをITmediaスタッフが実践。その様子を順を追って写真で紹介する「写真でわかるGTD」。最終回となる今回は、GTD導入から2カ月後の彼らの様子をリポートします。(2006/09/12) - GTD徹底研究会でわかったこと
ブロガーを招いて開催したGTD徹底研究会。初めてGTDに触れる方からのフィードバックを中心に、GTDでつまづく点や戸惑う点をまとめました。(GTDまとめページへ)(2006/08/24) - 第2回GTD徹底研究会──「書き出し」と「分類」のポイントは?
Biz.ID主催、第2回めとなるGTD徹底研究会を開きました。今回は、「気になることの書き出し」→「分類」をしていただき、2週間後には週次レビューについてのディスカッションを行います。(2006/10/30) - GTD導入のつまづきを解決――第2回徹底研究会
Biz.ID主催の第2回「GTD徹底研究会」後半のレポートです。参加者に「うまくいっていること」「うまくいっていないこと」を書き出してもらい、共有しながらコメントを加えました。(2006/11/14) - GTD黒帯へのチェックリスト【あなたは何級?】
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コラム編
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(2006/06/30) - GTDとLifeHack
(2006/06/30) - GTDの「2分ルール」
(2006/06/30) - GTDが効く人、効かない人
(2006/06/27) - 頭が得意なこと、得意じゃないこと
(2006/06/27) - 間違いだらけの優先順位
(2006/06/27)
リンク集
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ここではGTDをさらに理解するためのサイトや、GTDを実践するためのツールをご紹介していきます。(2006/06/27)
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