Big Pipe:VoDにみる米国映画業界の勢力図
1993年,当時の米国副大統領Al Goa氏が提唱した「Information Super Highway」構想から始まったマルチメディア・ブーム。その中で,そのキラーアプリとして注目されたのが,VoD(ビデオ・オン・デマンド)による映画配信である。当時はフロリダ州でTimeWarnerが行った実験レベルで終わったが,2000年に入り,CATVインターネットやADSLなどのブロードバンド・ネットワークインフラが整備され,普及する下地が整ってきた。2001年になり,映画配信事業,特にハリウッドの大手映画会社がビデオ・オン・デマンドに本腰を入れ始めている。 ハリウッドの映画配信事業は,現在2大陣営に分かれて進められている。1つはソニー陣営で,もう1つがディズニー陣営だ。
ソニー陣営はSPE(Sony Pictures Entertainment),MGM(Metro-Goldwyn-Mayer Studios),Paramount Pictures,Universal Studios,Warner Bros.の5社が合弁で著作権管理システムを駆使してオンデマンドの配信サービスを行なう。合弁会社名は「Moviefly」である。このプラットフォームを提供するのがSPE傘下のSPDE(Sony Pictures Digital Entertainment)である。今回提供するものはインターネットとパソコンをベースにしたサービスであり,データ容量は500Mバイトクラス。したがって,フルスクリーン再生は難しく,画面は小さいものになるという。サービス開始時期は早くて年末を予定している。配信するのは最新リリース映画のほかに,さまざまなジャンルの旧作,古典作品などであるが,今後はメジャーだけではなく,マイナーな映画製作会社にも事業の参加を呼びかけて行く。 ディズニー陣営は,DisneyとNewsがCATVとインターネットを利用して動画配信を行う合弁会社「Movies.com」を折半出資で設立した。Disneyと20th Century Fox Filmの映画,ライブコンサート,映画情報をダウンロードできるサービスである。 もともと,ディズニーとソニーは独自でも2000年当初に事業展開をするとしていたが,要するにそのプラットフォームを利用して他社を巻き込んだ陣営作りを急いでいたのである。実際の著作権システムや課金・決済システム,プラットフォームは不明だが,早速水面下では各社が動いている。Moviefly側にはSony,AOLTimeWaner,IBM,RealNetworks, 映画配信事業を行なう背景としては (1)Napsterのピア・ツー・ピア(P2P)による音楽配信事業の動向を見て,映画事業で著作権管理システム等の先手を打たなければ映画版のP2Pが市場に広がってしまうと懸念していること (2)映画の流通市場としてパッケージのビデオ,VHS,ネットワークの有料放送に代わる新たなチャネルを確保し,2次流通市場の拡大を狙うこと が理由として挙げられる。だが,映画配信事業が新規のマーケットを確立するのか,それとも既存のDVD,ビデオカセットのレンタル,セル市場や有料放送市場のある部分を侵食することになり,結果として2次市場全体規模はそのまま変わらず,という事態になるのか,そのあたりはまだ未知数である。 ある関係者は,映画配信事業について「2002年に全体としてレンタル市場の10%の市場が形成されればよい」と考えている。 そのターゲットとしては“Speed Crazy”な人間。専用線でブロードバンド環境が整備されている会社の従業員,あるいは学生やブロードバンド・オタクの家庭PCユーザーであり,PCで2時間のコンテンツを見ても耐えることができる(というよりもPCで映画がフルスクリーンで見られることに感動する)ユーザーを描いている。一方,家庭用のデジタルTVやSTBなどでのテレビ視聴型のサービスは,まずインフラが普及しなければ実現不可能であり,それにはまだ数年かかるとしている。 日本への進出はあるか?両陣営とも日本への進出は未定としているが,米国での成功を経て,日本市場への進出を本格展開するものと思われる。テレビ局や商社,ISP,コンテンツアグリゲーターからの話では既に接触が始まっているという。ブロードバンド・コンテンツの大本命(?)といわれるハリウッド映画,その動向如何によってブロードバンド・コンテンツ事業の可能性は大きく変わるかもしれない。 [根本昌彦,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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