アクセス回線としてのPHS「bモバイル」〜中編

bモバイルに導入された「アクセラレータ機能」とは,簡単にいえばプロキシだ。Webブラウザには依存するが,広範なOS・デバイスをサポートできるのがメリット。その仕組みと実際の効果は?

【国内記事】 2001年12月12日更新

 最初に補足と訂正。前編で「AirH"」と「bモバイル」の価格を比較したが,その際にAirH"のインターネット接続料金が含まれていなかった。DDIポケットは,PRINの無料キャンペーンを12月31日で終了,2002年1月からは上限1500円/月のインターネット接続料金が必要になる(詳細は12月7日の記事を参照)。これを加味すると,接続料金込みのbモバイルは,金額的に有利になるだろう。ご指摘をいただいた読者の方にお礼を申し上げたい。

アクセラレータの機能の仕組み

 bモバイルに導入された「アクセラレータ機能」とは,簡単にいえばプロキシだ。インターネット網とPHSアクセス回線の間にミドルウェア(下図参照)としてプロキシサーバを設置し,画像を含むWebページの構成要素に限り,圧縮をかける。PHSの場合,回線のボトルネックとなるのは末端のワイヤレス部分であるため,ここを通るデータを少なくするわけだ。

 回線スピード自体は変わらないため,“スループット”と表現するのは間違いかもしれないが,これにより,現在32Kbpsのスピードを体感で最大50%向上(50Kbps相当)。また,PHS回線が128Kbps化された後は,200Kbps程度になると同社は予想している。


bモバイルサービスのネットワーク図。ミドルウェア部分にプロキシサーバを置く

 アクセラレータ機能を利用するには,事前にWebブラウザでプロキシサーバとポートの設定を行う必要がある(同社サイトで設定方法を解説している)。Webブラウザに依存するため,サポートするのは,現状ではそれぞれ「Internet Explorer 4.0」「Netscape 4.06」以降。Mac OSやWindows CEマシンの「Pocket IE browser v3.0/4.0」でも対応できる汎用性は魅力だろう(なお,「Pocket IE browser v2.0」も利用できるが,動作は良くないという)。

 圧縮は,HTML/XMLのテキストやGIF/JPEG画像などが対象で,圧縮の手法は「テキストなら不必要なタグ,画像では目に見えない部分をカットする」(日本通信の上席執行役員でCTOを務める中井純氏)というもの。同社の検証によると,GIF画像は元データの約3分の1,JPEG画像なら約2分の1程度になるという。データをスリム化して転送,そのまま表示するため,解凍の処理は入らない。なお,圧縮効果は下り方向に限られる。

いざ,実体験

 では,実際に利用してみよう。製品パッケージには,カード本体のほかに,ドライバCD-ROM,仮パスワードなどを記したペーパーが含まれている。いたってシンプルな構成だ。Windows Me搭載の「ThinkPad s30」とIE 5を使って検証したところ,平日の昼間では20〜30Kbps程度のスピードが出ていた。


パッケージの中身。いたってシンプル


カードはHONDA ELECTRON製。128Kbps化の際にはファームウェアアップデートが必要だ

 アクセラレータの効果が最も顕著に現れたのは,スピード計測サイトの「ブロードランド」(旧:ADSL実験室)で小さめのファイルをダウンロードしたときだ。xdsl.ne.jpから24.5Kバイトのファイルを落とすと,いきなり80Kbpsという計測結果が出て驚かされた。

 しかし,サンプル画像を見て納得する。このサンプルは,赤いグラデーションをベースに文字を入れたJPEG画像なのだが,アクセラレータ経由で表示した画では明らかに色数が減り,グラデーションがつぶれていた。そして,ファイルサイズは3.25Kバイトにまで小さくなっている。よほどアクセラレータの圧縮アルゴリズムが作用しやすいデータだったのだろう。


測定結果。ユーザー掲示板でも同レベルのスピードが報告されていたが,「よほど条件が良かったのでは……」(中井氏)とのこと。


左が通常のサンプル,右がアクセラレータ経由でダウンロードしたサンプル。一部をPhotoShopで200倍に拡大した

 画質,測定結果ともに極端な例だが,アクセラレータの“働き”を知る上では有効だ。通常のWebサイトを見る限り,ここまでのスピードアップは見られないものの,画質が気になることもなかった。

Webに限らない高速化手段も検討中

 このほか,日本通信ではミドルウェアサーバと端末間でC/S(クライアント/サーバ)型の圧縮・解凍処理を行い,より効果を上げる手法も開発中だという。こちらは,端末側に解凍用のソフトウェアが必要になるが,現在のように効果がWebページに限定されることはなくなる。ただし,コンシューマーサービスへの導入は「検討中」だ。

 「すべてのアプリケーションに対応できる圧縮方式を2002年早々にも発表する。イントラネット環境で利用するなら,約2倍の速度アップが期待できるだろう」。

後編では,連続利用時に「1時間制限」を課した理由を解説する。

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関連リンク
▼ 日本通信
▼ ニュースリリース

[芹澤隆徳,ITmedia]

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