ニュース 2002年9月13日 04:11 AM 更新

IP電話の「050」番号――疑問にお答えします

総務省は9月27日から、「050」で始まるIP電話番号の取得申請を受け付ける。都内でVoIP推進協議会が開催した申請手続きの説明会には、130人を超える関係者が集まった

 IP電話端末に「050」から始まる11桁の電話番号が付与される日も近い。総務省は9月27日から、IP電話サービスを提供する電気通信事業者を対象に、050番号の取得申請を受け付ける。

 これに伴い、VoIP推進協議会は番号申請方法を解説するガイドラインを作成。9月13日には事業者向けの説明会を開催した。この説明会には100社、130人を超える関係者が集まり、熱心に質問を行った。そのいくつかを紹介しよう。

社内VoIPでも「050」は申請できる?

 ある事業者が気にしたのは、ガイドラインで「IP電話サービスが、企業内ネットワークなどクローズドに提供される場合は、050番号を付与しない」と記述されている点。

 もっともその記述自体は当然のことで、そもそもIP電話に050番号を付与するのは、“一般電話からの着信を可能にする”ため。公衆回線(PSTN)と接続しないクローズドネットワークなら、運用側が内線のように自由に番号を割り振ればいい。もちろんその際は混乱を避けるため、050から始まる番号を付けることは望ましくない。

 しかし、その事業者が聞いたのは「現在はクローズドだが、将来的にPSTNと接続する予定」の場合だ。どうやら、前もって番号取得を済ませることで、サービスを早期に立ち上げたいようす。

 この質問へのVoIP協議会の回答は「その場合、やはり接続した段階で申請すべきでないか」というものだった。ただし、同協議会でも事業者の意図をくみとって、「番号を『申請予定』として、先にNTTとの相互接続契約締結に必要な交渉を進めればよいのでは」と話していた。

“インターネット電話”は対象外か

 別の事業者が聞いたのは、IP電話の定義。具体的には、「オープンなインターネット上でVoIPサービスを提供する、いわゆる“インターネット電話”でも番号は付与されるのか」ということだ。

 これには説明が必要だろう。今回の番号付与にあたり、申請サービスには一定の品質保持(下表参照)が求められている。しかし、インターネット電話は通信事業者の管理外にあるネットワークを利用するため、サービスの品質確保が困難になる。このため、ガイドラインは「通信事業者の持つIPネットワークとPSTNを接続するサービス」を主な対象として想定している。

評価尺度クラスAクラスBクラスC
総合音声伝送品質率(R値)>80>70>50
エンドトゥエンド遅延<100msec.<150msec.<400msec.
呼損率0.15以下0.15以下0.15以下
*R値、遅延に関する数値は、95%以上の確率で満足することが条件

 とはいえ、インターネット電話では品質を保証できないと決まったわけではない。実際、VoIP推進協議会も「技術開発次第では、インターネット上でも通話品質を保証できる可能性がある」と認める。同時に、今後そうしたケースをどう扱うか、議論が必要と思っていたことを明かした。

 ただ、実際に総務省が認められるかどうかは「法解釈の問題になる。詳細は電気通信事業法を参照してほしい」と明確な回答は避けた。「基本的には品質さえ保証できると示せれば、番号は付与されるだろう」というのが同協議会の見解だった。

番号が枯渇する?

 別の事業者が心配したのは、050から始まる11桁の番号だけでは、いずれ番号が枯渇するのではということだった。

 今回の番号付与では、050の次の4桁が「事業者番号」として割り当てられ、末尾4桁がその事業者が自由に設定できる番号になる。1つの事業者番号ごとに、末尾4桁は「0000〜9999」まで1万の番号を生成可能。逆に言えば、VoIPサービス加入者が5万人いる事業者なら、事業者番号を5つ申請することになる。

 つまり、現在の仕組みでは、1万の事業者識別番号を割り当てた時点で番号が枯渇するわけだ。VoIP推進協議会も雑談レベルとしながら、「仮にある事業者が1億人の加入を見込んでいると申請してきたら、それだけで番号が埋まってしまう」ことが内輪の話題に上っていたという。

 もっとも「それだけに総務省は、申請に記載されている事業者の需要見込みを精査するだろう」と同協議会では推測する。実際、ガイドラインにも「申請する番号数は適正な数であること」との注意書きがある。

「110番問題」はどうなった

 説明会には警視庁の関係者も来場。「これは説明会の主旨と合わないかもしれないが、IP電話から110番などができない問題(記事参照)が、どうなったか教えて欲しい」と尋ねていた。

 一般電話から110番にかけた場合、電話を切ったあとも通話を保留する機能などが用意されている。しかしVoIP推進協議会は、「VoIPサービス上でこうした機能を実現する技術がない」と現状を説明。

 「こうした技術に関しては総務省のIPネットワーク研究会によって対応の必要性が指摘されており、通信・放送機構(TAO)で研究が進められている。また国際的にも、ITUの第16研究グループで部会ができ、各国の仕様の違いを吸収した規格策定に向け、継続的に検討が続いている」と話していた。



関連記事
▼ 9月下旬にはIP電話に「050」番号――情報通信審議会答申より
 総務省は、IP電話サービスへの電話番号を付与するために必要な省令などの改正について、一部の表現の修正などをおこなったうえで、当初原案どおり改正すると発表した

▼ IP電話個人ユーザは2005年末に651万回線に――矢野経
 矢野経済研究所は、国内におけるインターネット電話およびIP電話の市場調査を実施した。インターネット電話/IP電話を使用する個人ユーザは、2001年末の158万加入から、2005年末までに651万回線に増加するとしている

▼ IP電話向けの電話番号を設定へ〜総務省
 IP電話端末で加入者電話からの着信を受けるには、電話番号が必要だ。総務省は、「IPネットワーク技術に関する研究会報告書(案)」をWebサイトで公開し、意見を公募する。

▼ シスコに聞く、「IP電話の現状と今後」
 2002年に、さらなる発展が予想されるIP電話。シスコシステムズはサービスの現状と今後の課題について、技術・動向両面にわたって話してくれた。


関連リンク
▼ テレコムサービス協会

[杉浦正武, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



モバイルショップ

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!