ソニー・ピクチャーズが模索する映画配信のかたちソニー・ピクチャーズ エンタテインメントは、映画のオンデマンド配信サイト「Movie-Fly」日本版や、新作アニメのネット配信事業「ANIMAX Online」といった新サービスを計画している。目指すのは、高画質・高品質かつ鮮度の高いオリジナルサービスだ
アニメの「バンダイチャンネル」やTVの「トレソーラ」など、ブロードバンドをVOD(Video on Demand)に利用するメジャーコンテンツプロバイダが増えてきた。「次は映画?」という期待も高まっているが、なかなか進展はみられない。9月20日に行われた「デジタルコンテンツ産業研究会」では、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPEJ)の事業開発バイスプレジデント、福田淳氏が映画配信の課題と見通しを語った。
SPEJは、ハリウッド7大メジャースタジオの一角を占める米Sony Pictures Entertainmentの日本支社。映画配給にくわえ、ビデオ・DVDの販売、CS放送やCATVのチャンネル運営など、多方面にコンテンツを提供している。 そのコンテンツ提供先として、福田氏はブロードバンドを高く評価している。それは、映像メディアとして最も長い歴史を持つ映画業界ならではの経験則だ。「20年前にはVTRもニュービジネスだった。当時、ハリウッドは開発元のソニーやビクターを訴えたりしたが、今ではビデオやDVDが劇場の倍の売り上げをあげている」(同氏)。 SPEの独自調査によると、日本におけるハリウッド映画の市場は約2500億円(2000年)。内訳は、劇場公開が903億円に対して、ビデオが720億円、DVDが412億円とパッケージ販売の合計が劇場収入を追い越した。ブロードバンドも、新しい流通手段としてビデオのように大化けする可能性を秘めている。
同氏によると、SPEが目指すのは、高画質・高品質かつ「鮮度の高いオリジナルサービス」だという。鮮度とは、劇場公開した映画をVOD配信に利用するタイミングを指す。通常、映画は劇場公開から半年後にパッケージ販売され、1年後にはCSなどのPPV(ペイ・パー・ビュー)、1年半後にペイ・テレビ(CSやCATVチャンネル)、そして30カ月が経過すると地上波放送といった具合に商品ライフサイクルが決まっている。 VODは、今のところPPVと同じ1年後という扱いだが、これを前倒しする可能性もあるという。「ハリウッド映画を本格的に配信する場合は、(公開から)早いタイミングで行う必要がある。ただし、DVD発売との兼ね合いなど、調整すべき点も多い」(同氏)。 しかし、現状のPC向けブロードバンド配信に関しては、福田氏は慎重な姿勢を崩さない。SPEは米国で映画のオンデマンド配信サイト「Movie-Fly」を展開しているが、国内ではAIIなどを通じて一部の映画を配信するにとどまる。 理由は、需要を左右する“ユーザーマインド”だ。
福田氏は、「PCの画面で映画はみない」「視聴するたびに課金するVODで、利益が上がるほど“ユーザーの衝動”を得ることができるか」「コンテンツを“利用する”欲求よりも“所有したい”と考えるユーザーのほうが多いのではないか」と矢継ぎ早に疑問を投げかけた。 「ブロードバンドのVODよりも、定額で好きなジャンルの番組を好きなだけ視聴できるSOD(サブスクリプション・オン・デマンド:スターチャンネルのような有料専門チャンネルを指す)のほうが便利だ。また、所有したいユーザーは低価格化の進んだDVDを選ぶだろう」。 また、パイプの太さや著作権管理といった配信環境にも、ユーザーマインドに深く関わる問題が残されている。インターネット経由の動画配信は、今のところ300Kbps程度が主流だが、映画をみるには「まだまだナローバンド」。一方、DRMの進歩は、確かに不正コピーを防ぐセキュアな環境を提供してくれたものの、それをユーザーが歓迎するかどうかは別問題だという。 「24時間〜1週間程度で“消えてしまう”ものにお金を払うのか。そのうえ、ビデオのように友達と貸し借りすることもできない」。 事実、現在のDRM技術は、配信する側、あるいは配信事業に参入したいソフトメーカーの理論で作られている。同氏は「ユーザーオリエンテッドな解決法があれば……」と言葉を濁したが、視聴者がついてこなければビジネスは成立しない。コンテンツ配信のカギを握っていたはずのDRMが、ビジネス化の障壁になっているという皮肉な状況がみてとれる。 「PC向けに映画を配信するのは、映像品質やサービス(著作権管理や課金方法を含む通信サービス)に満足できたときだ。そもそも、インターネットは無料でさまざまなコンテンツが利用できる点が特徴であり、ビジネスが成り立ちにくい」。
とはいえ、SPEも状況の変化を待っているだけではない。福田氏が示した今後のサービス計画には、携帯電話向けサービスなどにくわえて、「Movie-Fly」や「ANIMAX Online」といった動画配信事業が示されていた。
ソニーグループという視点でみれば、既に「Playstatin 2」や「CoCoon」といった非PCのネット端末があり、Playstation 2向けのブロードバンドサービス「Playstation BB」では、将来的に映画配信を行うことも予告済みだ。PC前提の現在とは異なり、端末からネットワークまでをクローズドに扱うことのできる自社サービスなら、“ユーザーオリエンテッド”な仕組みにすることも可能だろう。 同氏はサービスの内容には触れなかったが、代わりにブロードバンドサービスに対するポリシーを語った。「新しいデバイスや技術に適応した、新しいサービスを提供する。映像品質やサービスは、あえてアマチュアリズムに(ユーザーの視点に立ち)、自分の納得できるものにしたい」。
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