ニュース 2002年12月9日 07:42 PM 更新

“富士通的”ホームサーバの長所と制限

前回に引き続き、富士通のホームサーバ「ファミリーネットワークステーション」のレビューをお届けする。携帯電話からPOP3メールをチェックできる機能、ルータとしての機能などを取りあげ、使い勝手の善し悪しや機能的な制限、あるいは長所などを洗い出してみた

 前回に引き続き、富士通のホームサーバ「ファミリーネットワークステーション」のレビューをお伝え知ることにしたい。前回はファミリーネットワークステーションでできることを紹介したが、今回は実際に利用した上で使い勝手の良し悪しや機能的な制限、あるいは長所などを洗い出してみよう。


ファミリーネットワークステーション

インターネットからアクセスすると?

 ファミリーネットワークステーションは、LANから利用するユーザー向けにファイルサーバ、プリンタサーバ、フォトアルバムサーバ、インターネットゲートウェイ、無線LANアクセスポイント、ユーザーごとに知らせてくれるメール着信ランプといった機能やサービスを提供してくれた。

 一方、インターネットから自宅で管理している情報にアクセスするため、富士通が運営する「AzbyClub」を通じてファミリーネットワークステーションに接続する機能も提供されている。AzbyClubは、特定URLへのアクセスを登録したIDでログインしているコンピュータへとリダイレクトするサービス。ファミリーネットワークステーションやホームサーバ機能を持つ富士通製PCなら、自らが使っているIPアドレスをAzbyClubに自動登録してくれる。Dynamic DNSとは少し仕組みが異なるが、動的なIPアドレスしか割り当てられないISPでもインターネットから自宅にアクセス可能にする点は同じだ。

 AzbyClubを利用するには、対応する富士通製品をWebページから登録しなければならないが、ファミリーネットワークステーションに管理者モードでログインすると、サービスへの登録を自動的に行う機能を呼び出せるため、設定は至ってシンプルだ。

 登録が終了すると、自宅ファミリーネットワークステーションにインターネット側からアクセスするためのURLが発行される。URLは2種類あり、片方はアクセスするたびに認証が必要なURL、もうひとつはIDとパスワードを暗号化しURL内に埋め込んだもの。後者はセキュリティが甘くなるものの、携帯電話からアクセスする際の認証情報入力を簡略化できる。

 この機能があるおかげで、パソコンはもちろんiモードのような携帯電話(CHTMLブラウザ対応端末なら何でもOK)やPDAから、ファミリーネットワークステーションの提供するアプリケーションサービスを利用できる。デザインもそれぞれの端末に最適化されている。いずれの場合もファミリーネットワークステーションに接続するための認証をくぐると、ファミリーネットワークステーション内に登録されたユーザーの選択、認証画面になる。

 この画面では、登録ユーザーがドロップダウンメニューに表示され、各ユーザーのパスワードを入力することで、はじめてコンテンツにアクセスが可能となる。つまり、ファミリーネットワークステーションへの接続、各ユーザーへのログオンと2重のログオンが必要になるわけだ(ただし省略形のURLならば、前者の認証は不要)。

POP3サーバの中身を確認できる簡易メールチェック機能

 インターネットからのアクセスでは、家庭内LANから利用可能なカレンダーや掲示板、フォトアルバムといったWebコンテンツを利用可能だ。もちろん、スケジュールデータや掲示板メッセージの作成、編集もインターネット側から行うことができる。

 これらに加え、簡易メールチェック機能を利用可能だ。この機能はPOP3サーバに蓄積されたメールをファミリーネットワークステーションに複製し、Webブラウザ(もしくはCHTMLブラウザ)からその内容を確認する機能。


簡易メールチェック機能の仕組み(クリックで拡大)

 具体的には、POP3サーバからメッセージのリストとメッセージ内容をダウンロードし、メッセージをダウンロードせずに残しておく。ファミリーネットワークステーション側の情報は常にPOP3サーバ上にあるデータと同期されるため、サーバからメールが削除されるとファミリーネットワークステーションでも削除される。

 普段利用しているメールクライアントの設定で、POP3サーバにメッセージを一定期間保存する機能などを使っていると、ファミリーネットワークステーション上にも一定期間分のメッセージが表示されるため、たとえば3日間分のメールはいつでもインターネット経由で確認できるようにしたい、といった場合は、3日分のメールを削除しないようにしておくといい。

 ただし、ファミリーネットワークステーションはPOP3サーバ上にメッセージが存在すると、それをすべて新着メッセージと判断してしまう。このため、メールサーバにメッセージを残す設定にしておくと、ファミリーネットワークステーションのメール着信ランプが点灯したままになってしまう(マニュアルではメッセージをダウンロード後、すべて削除する設定が推奨されていた)。

 着信メールを携帯電話のメールアドレスに転送している人は多いと思うが、この機能を併用すれば、より便利に携帯電話へのメール転送を利用できる。iモードの場合はそのまま転送、それ以外の携帯電話ではショートメッセージで携帯電話に転送しておき、着信とヘッドラインだけを確認。メッセージの内容を知りたいものだけ、CHTMLブラウザ経由でファミリーネットワークステーション上のメールにアクセスすれば良い。

簡単さはいいが奥行きも欲しい

 ファミリーネットワークステーションは、ルータ、ファイル/プリンタサーバやお気に入り共有(ユーザー共有のお気に入りエリアを作り、Internet Explorerから利用できる)といったPCに対するサービスに加え、PC、PDA、携帯電話に対してWebサービスを提供する。その使い方やセットアップは簡単だが、反面で不自由さを感じるところもある。

 ルータ機能は非常にシンプルで、WAN側の設定はDHCPでIPアドレスを取得するモードと、PPPoEでインターネットサービスプロバイダに接続するモードを選ぶだけ。コンテンツフィルタリングサービスを利用できるのは大きな特徴だが、あとはIPパケットのフィルタを追加できる程度。最近のルータに慣れているユーザーは物足りなさを感じるかもしれない。

 では、ルータ機能を使わずブリッジとして設定し、ゲートウェイを担当するルータを別に設定できるか? といえばできない(必ずルータとして動作する)。他のルータでインターネットと接続されたLANの中でファミリーネットワークステーションを動かしても、ファミリーネットワークステーションのLAN側ポートにあるコンピュータからしか、ファイルサーバなどのLAN向け機能は利用できず、AzbyClubを経由したインターネット側からファミリーネットワークステーションにアクセスする機能もあきらめなければならない。ファミリーネットワークステーションは常にインターネットへのゲートウェイとして存在しなければならない。

 ルータに多機能さを求めなければ、この点は許容できるだろう。しかし将来、ルータとしての性能に不満を抱くようになったとき、その部分だけを専用の装置で代用できない点には少々不安が残る。構成の柔軟性を高めるため、ネットワークブリッジとしても動作し、UPnPゲートウェイ対応ルータとの相互運用を可能にするなどの対策を、アップデートで期待したいところだ。

 これは、ファミリーネットワークステーションだけに限った話ではない。多くのホームサーバは、柔軟に機能を構築できる汎用のコンピュータが用いられているだけに、機能を統合するのは容易だ。しかし反面でネットワークの導入形態に合わせた柔軟性がなければ、ホームサーバの機能や制限が家庭内ネットワークの構成を考える上で足枷ともなりえる。

 それだけに、さまざまなネットワーク構成に対応できる柔軟性は重要な要素となる。それが難しいのであれば、ひとつひとつの機能について初級者から上級者までをカバーできる奥行きの深さが求められるだろう。


ファミリーネットワークステーションの中身はx86パソコン。ハードディスクにはウェスタンデジタルの「WD400EB」が採用されていた。流体軸受けではないのが残念


プロセッサはナショナルセミコンダクターの「Geode GX1」を採用。クロック周波数は233MHzだった

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[本田雅一, ITmedia]

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