リビング+:レビュー 2003/01/31 15:02:00 更新

Review:メルコの新製品「WBR-G54」(試作品)
いよいよ登場した高速無線LAN技術「IEEE802.11g」の実力(その2)

IEEE802.11gのメリットは、まず普及しているIEEE802.11bとの互換性。そこで、異なる方式のアクセスポイントに接続して確実に機能するのか、それから2方式を混在接続させた際のスループットはどうなるのか、早速測ってみると……?

 前回記事で、IEEE802.11g単体動作時のスループット計測を行ってみた。802.11aとの比較は、端的に言ってしまって、同一室内では802.11aのほうがスループットがやや上回るが、距離においては802.11gのほうが優位に立つ、ということだった。

 高速性と接続距離についてはそのような結果になったわけだが、802.11gの魅力は、前回記事も述べたように、なんといっても802.11bに対して上位互換性をもつということにある。同じ54Mbpsの802.11aでなく802.11gを推奨する理由は、一にも二にも802.11bとの互換性が銘打たれているからだ。ということで、興味があるのは異なる方式のアクセスポイントに接続して確実に機能するのかということと、それから2方式を混在接続させた際のスループットはどうなるのか、ということ。

 とくに今後、公衆無線LANサービスのスポットが広がれば、無線LANは部屋のなかで使うだけでなく、外に持ち出してモバイルで使うシーンも考えられる。NTTコミュニケーションズの「ホットスポット」のように802.11aと802.11bに両対応している公衆無線LANサービスのスポットもあるが、大半のスポットは、802.11bのみの対応がほとんどだ。そういった利用で802.11bのアクセスポイントに接続することは十分に考えられる。そのためにもちゃんと接続できることは確認しておきたい。

 実際の利用シーンでは以下の3つの接続形態が考えられるため、それぞれについて計測を行ってみる。

  • 利用シーン(1) 802.11bアクセスポイントへの802.11gクライアント接続
  • 利用シーン(2) 802.11gアクセスポイントへの802.11bクライアント接続
  • 利用シーン(3) 802.11gアクセスポイントへの802.11g・802.11bクライアント同時接続

はたしてスループットは?

 最初に測定したのは、802.11bアクセスポイントに802.11gクライアントで接続したらどうなるかということ。今回も接続に使ったのはWindows 2000 ProfessionalのNEC「LaVieMX」(Cursoe TM5600/600MHz)で、FTPサーバのアップル「iBook」(PowerPC G3/500MH)からMPEG4ファイルをダウンロードしてスループットを見た。

 結果はこちらだ。

/broadband/0301/31/11g_1.jpg

 見てみると面白いことがわかる。802.11bアクセスポイントに802.11bクライアントで接続した際よりも、スループットはいいのだ。802.11bクライアントの時は4Mbps弱だったのが、802.11gでは4〜5Mbpsと、数100Kbps程度スループットがよくなっているように見える。これは、何かそのような効果が現れるしくみが製品に実装されているのか、あるいはたまたまなのかはいまのところはわからない。

 次に、802.11gアクセスポイントに802.11bクライアントで接続した場合だ。

/broadband/0301/31/11g_2.jpg

 こちらはとくにあたりさわりのない結果となった。最初の測定結果を踏まえると、スループットが改善される要素があるとすれば、802.11gのクライアントアダプタのほうに何かカギがありそうだ。

 さて、最後に802.11gアクセスポイントに802.11gと802.11bの両クライアントを同時接続したらどうなるかということだが、その前に、比較になるデータがないと意味がないので、2台の802.11gクライアントで同時接続をした場合のデータをとってみる。同時接続試験用に出してきたもう1台のクライアントは、IBMの「ThinkPad X22」だ。

/broadband/0301/31/11g_3.jpg

 右側がThinkPadなのだが、あまりスループットがよろしくない。実はこのThinkPad、調子がすこぶるよろしくないので、そのせいがたぶんにあると思われる。2台のスループットを足し合わせると同時に22Mbps程度は出ていることになる。前回単体で接続した場合は20Mbpsだったので、それよりは多少いい。

 そして、真打ちは、802.11gアクセスポイントに802.11gと802.11bの両クライアントを同時接続したらどうなるかの試験。使う端末は802.11gがLaVie MXで、802.11bが不調気味のThinkPad X22である。この構成で考えられることだが、802.11gが802.11bと互換性があるといっても、同時には2つの電波は出せないのではないかと思われる。したがってその場合は能力の低い方、つまり802.11bにあってしまうのではないか、というのが予想だった。はたして……。

/broadband/0301/31/11g_4.jpg

 同時接続の結果を見ると、802.11gクライアントのスループットは、802.11g単体接続時よりもスループットは悪いが、802.11bよりはよいという結果になった。また、802.11bクライアントのほうは、802.11b単体接続時よりもスループットは下がった。2台接続しているのだから帯域を分割して落ち込むのは当然といえば当然だが、いったい、どういうからくりでこういう結果になるのだろうか。

 ハードウェアの専門家ではないので詳細まではわからないが、調べてみたところでは、どうやら802.11gでは、最初にベースの方式(802.11の1Mbpsモード)で情報をやりとりし、OFDMの指定があると変調方式を802.11gに切り替えて動作するようだ。そう考えると、11g/11bクライアント混在化では、802.11、802.11b、802.11gの3規格がきわめて短時間で激しく切り替わっていると考えられ、これがスループット低下の要因だろう。

 なお今回の試験は、試作機で行っており、製品版はこのとおりになるとは限らない。また環境によっても同一の結果が出るとは限らないので、その点は留意していただければと思う。

ホットスポットへの接続も問題なく

 冒頭で述べたように、今後実際の利用シーンとして考えられる公衆無線LANサービスへの接続が可能かも、ノートPCとクライアントアダプタ(WLI-CB-G54)を持ち込み検証してみた。

 まずは、NTTコミュニケーションズの「ホットスポット」だ。

/broadband/0301/31/hotspot.jpg

 問題なく接続できた。もちろん、接続は802.11bになる。

 それでは次に、ホットスポットについでスポット数の多い、「Yahoo! BBモバイル」のスポットに移動してみる。

/broadband/0301/31/yahoo.jpg

 はい、こちらも問題なし。これらの結果から、全てのサービスを試したわけではないが、ほぼ公衆無線LANサービスでの接続も問題ないと考えてよさそうだ。

「802.11aは無意味」になるか?

 一連の計測をしながら筆者の脳裏に浮かんだのは、そういえばZDNetの依頼で、802.11aが初登場した際も評価記事を書いたなあ、ということ。当時の記事を振り返ってみる(昨年11月の記事を参照 )。

 と見ると面白いのは、IEEE802.11aの初号機のスループットはWEP設定時で18〜15Mbpsだったわけだ。それが今回測定した製品では23Mbps程度。製造メーカーは違うとはいえ、おそらくは同じ系統のチップセットを使っているので、802.11aもこの間に進歩したものだ。

 高速無線LANにおいては2.4GHz帯の802.11gも5.2GHz帯の802.11aもともに最大54Mbpsの伝送速度を実現する。技術の流れからいうと、この両規格は対立するものではなく、先に802.11aでOFDMが実用化されたからこそ、それを2.4GHz帯に持ち込んだ802.11gもありうると言える。とはいえ、2つの規格が市場に揃えば互いに比較され、競合すべきものとされるのは無理からぬことだ。早くも802.11aには市場がないという意見も出ている(10日の記事を参照)。

 だが、802.11aを「まったく無意味だ」と言い切るのは尚早だろう。802.11gが802.11aより優れるのは、802.11bと互換性があること、それから通信距離が長く電波が回り込みやすいことだ。これは一般住宅などアクセスポイントを1台のみ導入する環境ではたしかに優位性をもつ。ところが、逆に複数のアクセスポイントを設置する場合は、通信距離が長いためにお互いがノイズになり、伝送効率の低下をもたらす可能性がある。

 つまり複数のアクセスポイントでエリアをカバーし、かつ802.11bとの互換性は必要としないような分野では802.11aが活用される。具体的に言うと、企業オフィスで無線LANを新規導入する場合だ。企業利用ではセキュリティも重視するため、多数の無線LANの電波がビル外から飛び込む“汚れた”2.4GHz帯利用を歓迎するかはわからない。

 また、インテルも次世代モバイルコンピューティング技術「Centrino」で、802.11a/802.11bの両規格に対応する予定。こうなると802.11a/b両規格を搭載したPCが登場することも考えられる。実際にNECはCentrinoを待つことなく独自に両規格対応の「LaVie J」をいちはやく発表している。1台で802.11aと802.11bに対応してしまえば、802.11gの持つ802.11bとの互換性もさして優位ではないようにも思われる。

802.11bはさらに安価に?

 と、筆者は802.11aにもまだまだ意味はあると思ったのでこの場を借りて述べたが、勝手な予測を立てると、おそらく将来は802.11a/g両対応の無線LANも登場し、それが本命になるのではないだろうか(昨年7月の記事を参照)。

 いずれにせよ一般のユーザーにとって、802.11gを使うかどうかの決め手は、導入コストと言えるだろう。WBR-G54とWLI-CB-G54のセットにした簡単導入パックで2万5500円と、かなりお得な値付けがされている。現行の802.11a製品に比べはるかに安い。

 しかし、802.11gがこのようなプライスだと、おそらく802.11bのほうはもっと安価になるだろうから、ユーザーが802.11gと比較するのは結局802.11bともでも言えようか。802.11bのスループットが4Mbps程度なので、ADSLでリンク速度が4Mbp以下ならば今後安価になる802.11b。8M/12M ADSLで4Mbps以上の速度が出ていたり、Bフレッツなどさらに高速な回線を利用しているか、将来契約する可能性があるならば802.11gを選択する。こうお勧めするのが適当なところだろう。

【補足】

前回の記事で、802.11a無線LANをマンションのピロティで使用した。これについて、屋外では802.11aは使えないという指摘が寄せられた。本文でも述べたようにそのとおり。今回も留意し、屋根のある空間を選んで無線LAN端末を立ち上げて検知を行った。ただ、そこで屋外空間を介したFTP計測を発生させることを意図した行為にはたしかに懸念は残る。

 今回は電波が届かなかったため通信は発生していないものの、評価方法として記述したことは適切でなかったと考えています。

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関連リンク
▼NEC
▼メルコ
▼簡単導入パックのニュースリリース(メルコ)

[大水祐一,ITmedia]



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