リビング+:特集 2003/03/26 23:59:00 更新

特集:今、手に入るIT住宅
ITが住宅メーカーと顧客を結ぶ〜三洋ホームズ

昨年末、「IT先端住宅/立川モデルハウス」を公開し、ほぼ同時期にIT住宅「SANFIT」(サンフィット)を発売した三洋ホームズ。同社がITに注力する背景には、三洋電機グループの一員であることにくわえ、“住宅メーカーならでは”の目論見があった

 三洋ホームズという社名に馴染みは薄くても、旧クボタハウスといえばピンとくるかも知れない。約1年前、鉄鋼メーカーのクボタから株式譲渡され、三洋電機グループの一員となった住宅メーカーだ。経営が移って以後、“それらしい顔作り”を進めてきたという同社は、昨年末に「IT先端住宅/立川モデルハウス」を公開し、ほぼ同時期にIT住宅「SANFIT」(サンフィット)を発売している。

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今回取材した「IT先端住宅/立川モデルハウス」は、2年後の生活を体験できるショウルームだ。東京都立川市の住宅展示場の中にある

 三洋ホームズ経営管理部販売促進グループの佐藤淳グループ長は「これまで、三洋電機グループの各企業を訪ね、住宅に取り入れて提案できる技術を探してきたが、昨年12月にオープンした“IT先端住宅/立川モデルハウス”として形になった」と話す。立川モデルハウスは、防犯、省エネルギー、アメニティの3分野に重点を置き、“2年以内に商品化できる技術”を集めたショウルームだ。

 一方、その一部を実装して市販されたのがSANFIT。建物自体は「セレブ」と呼ばれる既存の注文住宅シリーズだが、ネットワークカメラ、ホームコントローラ(Web端末)、そしてSANNETが提供するコンテンツ配信を含む「生活サポート」と「建物管理システム」を付加している。

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ワイヤレス接続も可能なホームコントローラは、タッチパネル付きの7.8型(640×480ピクセル)カラー液晶を備えた「SCREO」(スクリオ)。Webブラウザのほか、メール、家族用の電子伝言板といった機能を備えるが、最大の特徴は頑丈なきょう体。「ホームコントローラは子どもが乱雑に扱うことも考慮しなければならない。スクリオなら、液晶画面を拳で叩いても大丈夫」(同社)。

 三洋ホームズでは、SANFITの入居が始まる5月を目標に、自社のWebサービスを立ち上げる計画。ユーザーは、SCREOからワンタッチでWebサービスにアクセスし、個々の建物の図面を参照しながら、住まいに関する相談、点検スケジュールの確認、修理内容の確認などが可能になる。これが「建物管理システム」だ。

 ただし、「SANFITの設備は、多分に“モニター的な要素”を含んでいる。Web端末やカメラ、SANNETのオンラインサービスなどを提供し、まずはユーザーの反応をみたい」(同氏)というように、同社のIT構想全体からいえば、まだ第一段階。立川モデルルームでは、より進化したシステムを見ることができた。

指紋と顔のダブル認証

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2003年夏を目標に商品化を進めているダブル認証システム

 玄関には、指紋と顔を併用する認証システムがある。この技術は、三洋電機セミコンダクタカンパニーの子会社であるzixsis(ジクシス)が開発したもの。「もともと空港の認証システムとして利用されていた技術を住宅向けにスペックダウンした。指紋認証と併用することで、セキュリティレベルをアップできる」(三洋ホームズ住研究所商品開発部企画グループの小澤仁氏)。

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 顔認証では、事前に写真などを使って登録しておくと、目と鼻の位置など160ポイントの“特徴”データを照合し、本人認証を行う。高齢者や子どもなど、鍵を持ち歩くのが不安なケースでも安心だ。

 また、CCDカメラと人感センサーが用意されており、来客が呼び鈴を押さない場合でも録画できる。さらに特定の人物を認識すると警報を鳴らす設定も可能。これは、「ストーカー被害などの防止に役立つ」(同社)という。

スクリーン不要のお手軽シアター

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壁に直接映像を映し出す手軽なホームシアター。キッチン側の壁は凹凸が大きいが、リビング側の壁は滑らかな表面

 リビングルームには「アメニティ設備」として、ホームシアターも用意されている。これは、「通常の建築プランのなかで、手軽にホームシアターを実現する」という主旨で企画されたもの。液晶プロジェクターは低価格化がすすみ、入手しやすくなったが、やはりスクリーンを設置するとなると敷居が高い。

 ならば、壁に貼ったクロスに直接映像を投射してしまえばいい。そんな発想で生まれたのがこのシアター。

 画面サイズは100インチ程度だ。使用したクロスは一般的に販売されているもので、特に反射率が高いわけでもないという。「凹凸の少ないクロスを選び、キッチン側の広い壁に貼った。モデルルーム来場者には好評だ」(同社)。

もちろん、ロボットもいます

 モデルハウスには、3体のホームロボットがいる。三洋電機とテムザックが共同開発した留守番ロボット「番竜」は、ちょうどメンテナンス中のため見ることはできなかったが、「Hopis」(ホピス)と、「じそうじ丸」(コードネーム)が動作していた。

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じそうじ丸は、自律型のお掃除ロボット。接触型の全方位センサーを備え、障害物にぶつかりながら(よけるのではない)掃除をする。ぶつかることで部屋の形を認識し、隅々までキレイにするのが特徴だ

 Hopisは、ペット型の健康管理ロボット。音声認識&音声合成機能を備えており、ユーザーを問診して健康状態を把握する。データは、内蔵のPHSでサーバに格納する仕組みだ。周囲にある体重計や血圧計と連携し(特定省電力無線を介して接続)、データを中継する機能もある。

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Hopis。「あいさつモード」に設定すれば、話し相手にもなる

 「データを医師や栄養士が閲覧できるようになれば、オンラインの“メディカルサポート”サービスを提供できる。ただ、現在の法律ではこうした遠隔医療を医療行為として認めていないため、医師に対する報酬という課題が残されている」。

 したがって、Hopisの発売時期も未定。今のところ、自治体などに遠隔医療システムの構築を働きかけている段階だという。

寝室の色は今日の気分で……

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上が寝室の天井。コントローラで照明の色を調節できる

 Hopisのいた寝室には、もう1つ秘密があった。天井の間接照明は、光の三原色である赤、緑、青(RGB)のライトを使った「癒しアイテム」だ。壁面のコントローラで色合いを自在に調整できるため、その日の気分で部屋の雰囲気を変えることができるという。

進化する建物管理システム

 前述の建物管理システムも進化していた。モデルルームでは、屋根裏や床下に湿度センサーやWebカメラを設置し、PCやWeb端末からリアルタイムで状況を監視している。サーバに計測値をストックしてグラフ表示したり、あらかじめ設定した数値を超えると携帯電話に警告メールを自動発信するといった機能も装備。いずれも“湿気”から建物を守るのが目的だ。

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PCで屋根裏カメラの画像を表示したところ
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携帯電話に「高湿警報」が届いた
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ストックした計測値をグラフ化することも可能
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Web端末「SCRIO」の画面。電気錠の施錠確認、ネット家電といった項目が並ぶ。将来的には、ネット家電を一括管理できるようになるはずだ

 一般的に、戸建て住宅は屋根裏や床下に換気口がある。通常なら、ここから雨などが侵入することはないが、台風などで横なぐりの雨が降った場合、中に湿気がたまって腐食やカビの原因となる。その状態が進行すれば、住宅の寿命を縮めかねないという。

 「とくに最近は、住宅の性能が上がったことで、(腐食が)進行するまでユーザーが気付かないことも多い」(三洋ホームズ住研究所商品開発部企画グループの小澤仁氏)。カメラや湿度計で状態をチェックしておけば、状況が悪化する前に対応できるわけだ。

 これは同時に、住宅メーカー側にも大きなメリットがある。住宅の場合、保証は最長で60年になるが、「一方で(これまでに施工した)4万件に上る顧客をすべて訪問していると、次の検査までに年単位の間隔が開いてしまう」(小澤氏)。

 管理システムによって訪問検査の回数が減れば、サポートにかかる時間とコストを軽減できる。一方、一軒あたりの密度(検査回数)を上げることも可能だ。

 つまり、住宅メーカーと顧客を常時結ぶ住宅管理システムは、顧客との継続的な信頼関係を築くための手段になり得るという。それが数十年後には、リフォームや建てかえといった形で新しいビジネスを生む。

 「センサーとカメラは、アフターサービスの新しい形として注目している」(同社)。三洋ホームズのアプローチは、“住宅メーカーならでは”のIT活用法といえそうだ。

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[芹澤隆徳,ITmedia]



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