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2003/09/12 16:56:00 更新 |
Interview
IP電話でつなぐ、心の悩み相談室 〜ピースマインド
さまざまな要因から、現代人の心にたまりがちなストレス。これをVoIPパケットを通じて解消できるか? ピースマインド社長の荻原国啓氏に聞いた。
ピースマインドは9月9日、IP電話を利用したオンラインカウンセリングサービスを開始した。臨床心理士など専門カウンセラーを相手に、悩み相談を行えるサービス。自分の番号を相手に通知せず、匿名性を保ったまま通話できるのが特徴だ。
さまざまな要因から現代人の心にたまりがちなストレスを、VoIPパケットを通じて解消することができるか? サービスの内容、カウンセリングサービスの現状なども含めて、ピースマインド社長の荻原国啓氏に聞いた。
ピースマインドの荻原社長
ZDNet まず、今回のサービスでIP電話を活用している理由を教えてください。VoIPでカウンセリングを行うメリットとは、何でしょうか。
荻原 ピースマインドでは従来、対面カウンセリング、およびメールベースの相談サービスを行ってきました。しかし、IP電話による音声コミュニケーションなら、声のトーンも伝わりますし、文章で陥りがちなそごをきたすこともなくなります。
“IP”であるメリットは、料金面にあります。IP電話なら、都内でも地方でも、全国一律の料金を設定できます。また、ピースマインドでは海外在住の邦人が利用するケースも数%あるのですが、この場合も、同一の通話料で対応できます。
ちなみに、テキストベースのサービスにも、文章を考えて書くことで気持ちが整理され、カタルシス(=浄化。緊張や不安を解消すること)効果が得られるという、メリットがあります。今後は、両者をうまく併用していきたいと思っています。
ZDNet サービス開始にあたり、コペルフォン(記事参照)の匿名通話システムを採用されましたね。この意図を教えてください。
荻原 コペルフォンでは、ユーザー側も、カウンセラー側も仮想番号で通話を行うことができます。これは、カウンセリングの現場では重要なことです。
ユーザーにしてみれば、込み入った内容を相談する際も、プライバシーを保ったまま通話することができます。また、ピースマインドでは予約制でサービスを提供していますが、人気のあるカウンセラーの電話番号が分かると、そちらに電話が殺到してしまうでしょう。こうしたことを、防ぐこともできます。
ZDNet 料金面をうかがいます。今回のIP電話サービスでは、通話料込みで「50分1万円」という価格を設定されています。これは、正直ちょっと高いかという印象もうけるのですが。
荻原 ピースマインドで提供している、対面型のサービス料金は、1万500円〜1万2000円になります。従って、これよりも若干安めに設定しています。
それに、カウンセリングサービスというものは、どうやら価格弾力性がない(=安売りしても売上が伸びない)ようです。もちろん、今後は30分でより割安な料金を設定するなど、複数の価格帯のサービスを用意したいと思っています。
サービスの利用イメージ
ZDNet カウンセリング事業そのものについて、少しうかがいます。日本では、「心のケアをうけるような人間は、社会的対応能力を著しく欠く」という、誤った認識があると、しばしば指摘されます。この点は、改善されたと感じますか。
荻原 以前と比べて、だいぶ業界のイメージが健康的になってきたように思います。会社への問い合わせも多くなりましたし、カウンセリング未経験者もサービスを利用するなど、敷居も低くなっていると思います。
最近では、テレビドラマの影響もあるのでしょうか、女子高生が「なりたい職業」の上位に、心理カウンセラーがランクインしているようです。
ZDNet サービスを提供していて、多い相談内容というのはありますか。また、“IT業界関係者にはこんな悩みが多い”というものも、あれば教えてください。
荻原 ピースマインドのユーザー層は、20代〜30代の働き盛りが中心です。従って、悩みも仕事に関係したものが多いようです。
IT関係者では、たとえばSEの方がストレスを抱えるケースが、目につきます。SEは個人プレーが多いですし、出向先で仕事をする場合、そこでのコミュニケーションがとりにくい、ということがあります。もともと、そういった人間関係の構築が不得手な人も多い傾向があり、悩みを抱え込んで抑うつ状態になってしまうようです。
ZDNet 最後に、カウンセリング業界が今後どういった方向にむかうべきか、考えを聞かせてください。
荻原 現状では、精神医療の現場はドクター(精神科医)を中心に回りがちです。しかし、病院というのは薬を処方すれば診療報酬の点数をかせげますので、ややもすると薬だけ出して、時間をかけた心理面のケアがおろそかになる懸念があります。そうした場でも、カウンセラーがサービスの主体となるべきです。
また、医療と連携することはもちろんですが、非医療の現場でも、カウンセラーが活躍すべきだと思っています。(精神疾患の)1次予防、2次予防として、サービスを提供していきたいですね。
(文中敬称略)
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[杉浦正武,ITmedia]