リビング+:ニュース 2003/09/26 23:59:00 更新

東京ゲームショウ 2003
ネットゲーム開発者の苦労は絶えない?

ネットワークゲームは、従来のパッケージゲームとは勝手が異なる。運営者側で管理上の苦労が絶えない、とはよく聞く話。しかし苦労するのは、なにも運営側だけではないようだ。

 ネットワークゲームは、従来のパッケージゲームとは勝手が異なる。多人数が同時参加するため、運営者側は管理上の苦労が絶えない……とは、よく聞く話。しかし苦労するのは、なにも運営側だけではないようだ。

 「東京ゲームショウ2003」で開催されたフォーラムでは、レベルファイブの代表取締役/プロデューサーの日野晃博氏が登場。ゲーム制作会社の立場から、ネットワークゲーム開発上の苦労を話した。

覆された予想

 日野氏は、自社ブランドを「知名度が低いかもしれない」と謙遜するが、レベルファイブといえばゲーム制作会社としては知られた存在だ。「ダーククラウド」「ダーククロニクル」などのプロダクツをリリースしているほか、最近では「ドラゴンクエスト」最新作の開発にも携わっている。

 そのレベルファイブが、現在仕上げの段階に入っているのがMMORPG「トゥルーファンタジー ライブオンライン」だ。同社はこの作品を、既に2年半以上にわたり開発に取り組んでいる。

 日野氏は、これまでの豊富なゲーム開発経験から、MMORPGの制作にとりかかる際も「簡単かな?」とたかをくくっていたと話す。

 「しかしそれは、大きな間違いだった」(同氏)。

 同社がまず苦労したのは、ゲーム設計時のプログラム構造が従来とは異なること。ローカルで確定データを持たない、というネットゲームの特徴に、とまどいがあったという。

 そもそもMMORPGでは、クライアントマシンがサーバ側にデータリクエストを行う。この際、サーバはデータベースにアクセスし、更新されたユーザーデータを取得した上でクライアントに送り返すわけだ。

 当然ながら、こうした一連の作業には時間がかかる。普通にプログラムを組んでは、レスポンスが悪くなってしまう。そこで、「クライアント側でサーバのデータをある程度予想し、まず表示する」という、“荒わざ”(日野氏)が必要になる。

 たとえば、ゲーム内でメニューを開くとする。この時、ユーザーがボタンを押した時点でサーバにデータを取りに行くのだが、表示の上では、ウィンドウを開くアクションを開始する。ここでは、過去のアイテム履歴から予測し表示を始めている。

 その上で、サーバから届いたデータを照合をかけて差分を反映する。こうした“予測プログラミング”の手法で処理時間の短縮を図るわけだ。

膨大な情報量と、負荷分散

 MMORPGでは、膨大な情報量を扱う必要がある。これも同社が苦労した点だ。

 パッケージゲームなら、ユーザーはストーリーに沿ってゲームを進めるため、制作側は順番に場面を用意していけばいい。しかしMMORGPでは、自由度が高いため、ユーザーの行動に応じたあらゆる場面を作りこんでおく必要がある。

 また、ゲーム世界には一度に数千人の単位でユーザーがアクセスする。このユーザーが1カ所に集中するようだと、サーバへの負荷がかかりすぎるため、人口密度を分散するような配慮も必要となる。

 日野氏は、この点に配慮しマップ設定に工夫をこらしたという。トゥルーファンタジー ライブオンラインでいうと、ゲーム世界を人口が集まる「コミュニティ」と、人が通過するだけの「経路」とに分類している。

 ゲーム内の都市「クレリア王国」を例にとると、「居住区前広場」「コロシアム前広場」などが“コミュニティ”に位置付けられ、それらをつなぐ道路が“経路”に相当する。こうしてメリハリをつけることで、いくつかのコミュニティに人口を分散するわけだ。

 日野氏はまた、自分の考えとして「システム負荷を考えられるゲームプランナーを起用することが重要」と強調。この点に気をつけなければ、開発側でとんでもない苦労をしょいこむことになると指摘した。

最後の難関は“試遊テスト”

 日野氏が、「僕らが読めなかった最大の誤算」と話すのは、MMORPGではプログラムテストが難しい点だ。

 「たとえば5人パーティでプレイしている場面をテストしようとすると、5人のテストプレイヤーがいる。そのたびにプログラマーが手をとめて、テストするのか?」。

 常に複数プレイヤーによる処理である以上、ほとんどのテストにテスティングスタッフが必要になる。このため、日野氏は「開発途中段階からは、常にプログラマにつく支援用テストプレイチームを準備すべきと考える」と話した。

 ともあれ、こうした苦労を乗り越え、トゥルーファンタジー ライブオンラインは完成に近づいている。苦労のかいもあってか、自信作に仕上がりつつあるようす。日野氏は、MMORPGは開発に苦労する一方で、多くの可能性を秘めていると話す。

 「映画のマトリクスのように、本当の意味での仮想現実が生まれる可能性は高い」(同)。

 もっとも、完成したらしたで、今度はバグフィクス、ゲームバランスの調整、および新イベントの追加などで開発側の苦労は続く。この点は、日野氏も「これからが重要」と気を引き締めなおしていた。

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▼レベルファイブ

[杉浦正武,ITmedia]



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