リビング+:ニュース 2003/10/02 16:12:00 更新


“ソニースタイル”のトリビア

「一年間に、一人の利用者がソニースタイルで購入したトータル金額の最高記録は750万円」。「実際の商品を見ないまま購入した人が約4割」。年間売り上げでは100億円を超え、日本でも5本の指に入るというECサイトに成長した「ソニースタイル」だが、人気ブランドだけに利用実態も、ほかとはひと味違う。明日、使えるかどうか分からない知識を交えつつ、その全貌に迫る。

 ソニースタイルといえば、約3年前にオープンしたソニーの直販サイトだ。価格は決して安くないものの、独自仕様の「バイオ」を売り出したり、3年間の無料補償が付いてきたりと、実際に購入するしないにもかかわらず、ちょっと気になる存在。そんなソニースタイルと、その利用者動向について、運営母体のソニーマーケティングに聞いた。

 同社が調査した利用者動向のデータをみると、ほかのPC関連サイトとはひと味違うことに気が付くだろう。まず、利用者の約4分の1にあたる26.7%が女性(比較するのもおこがましいが、ZDNetの読者は98%が男性)。利用者の11.6%は年に5回以上の買い物をするリピーターだ。さらに、サイトを1日に数回訪れる人が5.8%もいるという。

 リピーターの多さは、ブランド力の証明といっていいが、中には頻繁に購入ボタンを“クリック”し、一年間で750万円も使った人もいるらしい。もちろん、企業の共有名義という可能性も高いが、一般的なサラリーマン年収を超えた数字はインパクトがある。

 また、同社が行ったアンケート調査によると、購入商品を一度も見ずに購入した人が39.5%に上るという。メーカーに対する信頼感の高さか、あるいは「マイチェンだから見る必要なし」と判断したのかは微妙なところだが、このアバウトさも特徴の一つだ。

マニアか? 素人か?

 一方、商品の選択に妥協しないのも直販サイト利用者の傾向といえる。30万3175通り。これは、ソニースタイルでカスタマイズしたバイオシリーズの総計だ。

 とくにハイエンドデスクトップPC「バイオRZ」のCTO(注文仕様生産)では、ユーザーが選択できる組み合わせの数が約30万通りもある。HDDやメモリ容量はもちろんのこと、OS、CPU、グラフィックボード、ドライブ、そしてディスプレイまでを任意に注文することができるため、直販の大きなウリ。事実、利用者の9割がカスタマイズしたバイオを購入しているという。

 ここで、バイオRZだらけの売れ筋ランキングをご覧いただきたい。

 機種概要
第1位バイオRZPentium 4/3GHz、メモリ1Gバイト、500GバイトHDD、Windows XP Pro、DVD+-RW+DVD-ROM、GigaPocket+DVアナログ変換、PCカードスロットなし、GeForce FX5200、USBジョグコントローラあり、MS Officeなし
第2位バイオRZPentium 4/2.6CGHz、メモリ512Mバイト、160GバイトHDD、Windows XP Home、DVD+-RW、GigaPocket、PCカードスロットなし、GeForce FX5200、USBジョグコントローラなし、MS Officeあり
第3位バイオRZPentium 4/3.2GHz、メモリ2Gバイト、500GバイトHDD、Windows XP Pro、DVD+-RW+DVD-ROM、GigaPocket+DVアナログ変換、PCカードスロットあり、GeForce FX5600、USBジョグコントローラあり、MS Officeなし
普通のランキングでは、まずお目にかかれないトップ3

 組み合わせでは、やはり贅沢な仕様が目立つが、逆に「トータルコストの安い組み合わせにもボリュームがある」という。パーツごとにみると違いは顕著で、たとえばHDDは21%ものユーザーが500Gバイトを選択しているが、ミニマムの120Gバイトも17%と近い数字。また、メモリを2Gバイト以上積むケースが26%もある一方で、最小の256Mバイトを選ぶ人が21%もいる。

 「コアなユーザーが、増設を前提にミニマム仕様を選択している可能性もあり、どちらが“マニア”なのかは正直言ってわからない。ただ、“最大の構成”と“最小の構成”の両方とも需要は高い」(ソニーマーケティング、リレーションマーケティング部の石井隆雄統括部長)。

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ソニーマーケティング、リレーションマーケティング部の石井隆雄統括部長(左)、同じくプロモーション課の谷本尚遂プロデューサー(中)、近郷明香氏(右)

 バイオRZはデスクトップPCのフラグシップモデルだが、ミニマム構成なら15万円以内におさめることができる。逆に、すべてをハイエンド仕様してオプションまで含めると実に50万円超。値段が極端なら、購入者も極端だ。

安くない理由

 前述のように、ソニースタイルは安くない。本来なら、流通・販売マージンをカットできるぶん値段を下げられるはずだが、もともと店頭販売が当たり前の国内メーカーにとって、流通業者との関係にヒビが入るような行為は御法度だからだ。

 その代わりに設けたのが、ソニースタイルで購入したバイオには標準的に付いてくる3年間の無償修理サービス。通常のメーカー補償と異なるのは、これが「保険ベースの補償制度」であるという点だ。つまり、ソニースタイルが保険会社と契約を結び、ユーザーから対象製品の修理を求められたとき、保険会社が修理代金を負担する。このため、メーカー補償には該当しない「破損」や「水没」といったケースでも無償修理に応じてくれる。

 もちろん、保険をかけるには掛け金が必要になる。製品によっても異なるが、概ね価格の3〜5%にあたるという。つまり、商品の値引きをしない代わり、保険の掛け金を負担する仕組みだ。

 現在、3年補償が付くのはバイオ全商品のほか、「サイバーショット」「ハンディカム」「コクーン」、デジタルレコーダーなど。10月からは、MDウォークマンやCDウォークマンなどが加わる。

 ユニークなのは、「ショップの最低価格を調べるサイトからソニースタイルに来て、購入に至るユーザーが結構いる」(石井氏)こと。実売価格の違いを知ったうえで、あえて高い方で購入する。ユーザーが自分なりの価値観を持って比較していることがうかがえる。

 一方、取り扱い製品のなかには「CLIE」シリーズのように補償が付かない場合もあるが、これは破損する危険性が高いモバイル商品は、保険会社のリスクが大きすぎるため。「CLIEも一時期は3年補償を付けていたが、保険のスキームでは収まらないということが分かった」という。CLIEユーザーは、ポケットにCLIEを入れたまま座ってしまい、壊すケースが多いらしい。お尻に注意だ。

ソニースタイルは“実験場”?

 ソニースタイルの魅力を語るうえで欠かせないのが、オリジナルアイテムの存在だろう。その商品は幅広く、オリジナルカラーのバイオや周辺機器をはじめ、専業メーカーとのコラボレーションによるオリジナルケースやバッグ(約40種)、さらに前述のCTOモデルもオリジナル商品と考えれば、実に「売り上げの9割がオリジナルモデル」という。

 「細分化したユーザーニーズには、店頭のディストリビューションでは対応しきれない。店頭販売は新製品の情報が行き渡るまでに時間がかかるうえ、見込み生産のため在庫が残る可能性もある。しかし、ネットなら確実に対応できる」(同社リレーションマーケティング部プロモーション課の谷本尚遂プロデューサー)。

 また、ソニースタイルが送り出すオリジナル商品には、利用者の所有欲をそそる“限定”という要素が盛り込まれているのも見逃せない。たとえば「+SPICE」というコーナーでは、日本未発売の海外向けソニー製品やオリジナルカラーのバイオやテレビを数量限定で販売している。

 前者なら、デザイン性の高い液晶ディスプレイ「HSモニター」、後者ならバイオロゴの入った真っ赤なマウス(もちろん、3倍速く動かせばカーソルが3倍速く動く。当たり前だけど)などが挙げられる。いずれも発売からまもなく売り切れた。

 これは同時に、海外商品の国内での評価、あるいは新色の評価につながる。市場性の調査も同時に行えるわけだ。ソニースタイルは、ソニー製品のブランド力を活かしつつ、ブランドを支える手段の一つにもなっているようだ。

 「直販で得た情報を、製品やマーケティングにフィードバックしていく。ソニースタイルは、いわば“実験場”だ」。

 ということは、利用者はモル……いや、失礼。

補足トリビア

 ソニースタイルの運営母体は、「ソニースタイル・ドットコム・ジャパン」。今でこそソニーマーケティングの一カンパニーだが、当初は独立企業として設立された経緯がある。ちなみに、設立時の記者会見で進行役を務めたのは、ピーター・バラカン氏だった(確認のVTR記事はこちら)。

 サービスを開始したのは2000年2月1日だが、船出は必ずしも順風満帆とはいかなかった。意外にも「初日の売り上げは0円」。理由は「受注サーバがまだ動いていなかったから」と、あまり面白くないが、受注サーバといえば印象に残るトラブルもあった。

 サービス開始から3カ月後にあたる2000年の5月。「バイオノートSR」の「先行予約キャンペーン」で注文が殺到し、サーバがダウンしてしまったのだ(確認の記事はこちら)。結果的に、このトラブルで一気に知名度を上げたソニースタイルだが、もちろん“ネタ”ではない。

 あれから3年が過ぎ、現在では年間売り上げにして100億円以上200億円未満(正確な数字は非公開)。サイト訪問者数は前年比65%増と急成長を続けている。さらに、世界35の国や地域でも、同様の「ソニースタイル」を展開しているという。へぇー。

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関連リンク
▼sony style

[芹澤隆徳,ITmedia]



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