リビング+:ニュース 2003/10/15 23:38:00 更新


ホンダのテレマティクス戦略(前編) 〜「トヨタとは違います」

カーテレマティクスの将来を探る上で、自動車メーカーの考え方を知ることは重要だ。ホンダのカーナビ設計思想はユーザー志向で、なおかつ競合他社とは異なる方向性を持つものだという。

 カーテレマティクスの将来を探る上で、自動車メーカーの考え方を知ることは重要だ。その開発コンセプトが、そのまま純正カーナビに搭載する機能、および通信モジュールの利用法に反映される。

 国内の大手自動車メーカーであるホンダは、通信カーナビに対して確固とした設計思想を持っているようだ。同社インターナビ推進室室長、今井武氏によれば、それはユーザー志向で、なおかつ競合他社とは異なる方向性を持つものだという。

ユーザーのリクエスト「1位〜4位」を実現

 同社が従来のカーナビゲーションシステム「インターナビ」を進化させた、「インターナビ・プレミアムクラブ」を開始したのは2002年秋からのこと(記事参照)。今井氏は、サービス開発にあたり、まずユーザーの声に耳を傾けたと話す。

 「インターナビの会員、30万人のうちの2000人と、一般のドライバー2000人を対象に調査を行い、『魅力を感じるカーナビサービス』を挙げてもらった」(今井氏)。

 この結果、1位の支持を得たのは「地図の更新サービス」だった。以下、2位は「全国の道路交通情報サービス」、3位は「自車の情報サービス」、4位が「さまざまな情報のダウンロードサービス」と続いた。

 「これを、上から順に実現していこう」(同氏)というのが、そもそもの開発コンセプトだったという。

 順に確認しよう。インターナビ・プレミアムクラブでは、地図データの更新を無償で行えるようになっている。DVDタイプでは3年間に3回、最新の地図DVDと取り換えを行うほか、HDDタイプでは24カ月に1度、HDDを預かった上でデータの書き換えを行う。

 パイオニアの「Air Navi」ように、通信で地図データそのものを更新するといったことは行わない。ただし、交換時期の通知、およびユーザーからの申し込みなどはメールやWeb経由で行える仕組みだ。

 道路交通情報では、VICS(Vehicle Information and Communication System)情報を受信して渋滞状況を把握し、目的地まで最短時間の経路を案内する。特定のポイントに来ると、携帯電話経由で情報を取得し、よりスムーズなルートを選択し直す機能も備える。

 ここで1つ断っておくと、ホンダの車には通信モジュールが内蔵されていない。このため、情報の取得などにはユーザーが携帯電話を用意する必要がある。もっとも「車載端末には、モデム機能が内蔵されている。ユーザーは携帯電話を用意するだけでいい」(同氏)。これにより、ハンズフリー通話の環境も実現できるようになっている。

 自車の情報サービスという点では、車内センサーでメンテナンス情報を通知するサービスを用意している。エンジンオイル、ブレーキ液、冷却水などの各パーツ、消耗品の情報を管理しており、更新時期が近づくとあらかじめ登録されたメールアドレスに告知を行う。

 また、情報ダウンロードサービスとして、ニュースや目的地の天気などの配信が挙げられる。ほかに、メールの送受信、およびメール本文の音声読み上げなども可能だ。

トヨタの「iモード路線」とは距離を置く

 今井氏は、ホンダのアプローチはトヨタのG-BOOKとは異なることを強調する。

 「トヨタさんのように、アミューズメント系のコンテンツは考えていない。eコマースなども、ユーザーのニーズは低い」(同)。

 もちろん、トヨタが目指すカーテレマティクスでも、重視しているのは位置情報サービスやセキュリティサービスなど、車の基本機能に関わるものだ。ただし、G-BOOKではその通信プラットフォームを開放し、多くのコンテンツプロバイダと提携して“車版iモード”さながらの多様なサービス展開を行っている(記事参照)。

 その中には、「カラオケサービス」としてMIDIデータの楽曲をダウンロードさせるものや、eコマースサービスなども存在する。いわば、通信の可能性を、付加サービスの分野でも求めたかたちだ。

 しかし、ホンダの考えはこれと異なる。今井氏はインターナビ・プレミアムクラブで「いかにいいサービスを提供し、自動車そのものの質を向上させるか」にこだわっていると話す。

 「通信サービスを有料にして、もうけようという気はない」。それよりも、カーナビで付加価値を上げ、結果として自動車の売上に寄与できればいいという考え方だ。

 実際に、ドライバーにもこうした設計思想の通信カーナビが浸透しつつある。同社の「アコード」を例にとると、以前はカーナビ装着率は15%程度だった。しかし、現在はアコードのセダンで50%、ワゴンでは60%の装着率を実現している。同社の考えが、一定の支持を集めているといえるだろう。

 同氏はまた、「海外に行って、日本のカーテレマティクス技術を紹介するときに『車内でMIDIデータを聞けるんだ』とアピールするのは、違うのではないか?」とコメント。あくまで、安心と安全に軸足を置いたサービスを提供すると話した。

後編に続く:ホンダが誇る道路交通情報サービス、その技術に迫る

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[杉浦正武,ITmedia]



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