リビング+:レビュー 2003/11/28 23:59:00 更新

レビュー:アイ・オー・データ機器「TSR-MS4R」
自由度が増したビデオサーバ、使い方はアイデア次第?

アイ・オー・データ機器から、ネットワークビデオサーバの新モデル「TSR-MS4R」が登場する。従来モデルの「TSR-MS4」の多機能さはそのままに、カメラユニットをグレードアップすることで、より鮮明かつ便利な動画配信を可能にした。

 アイ・オー・データ機器が12月中旬に発売する「TSR-MS4R」は、MPEG4形式の動画配信を行えるネットワークビデオサーバだ。従来モデルの「TSR-MS4」の多機能さはそのままに、カメラユニットをグレードアップすることで、より鮮明かつ便利な動画配信を可能にした。MPEG4エンコーダやネットワーク機能を備え、PCを使わずにLANやインターネットを利用したビデオ配信が行える。

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縦長ボディの前面上部にカメラユニット、中央にインジケータ、下部にマイクを備える。壁に固定するためのマウンタも付属する。マウンタは横方向に回転させて固定することも可能だ

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スタンド付きで上下方向にスイング可能。スタンドはバランスが崩れて倒れないよう、マウント部分が工夫されている

 新製品で強化されたのはカメラユニットだ。10万画素から30万画素へ高画素化され、撮影範囲の一部分を切り取って表示するズームや簡易パン/ティルトが可能になっている。

 ネットワーク接続は幅広くサポートする。有線LAN(10BASE-T)のほか、CFスロットに無線LANカードや通信カードを装着すればワイヤレス接続に対応可能。本体がPPPoEクライアント機能も持っているため、FTTHやADSL、フレッツISDNといった常時接続環境があれば、単体でビデオ配信が行える。通信カードはAirH"もサポートしているから、LANによる常時接続環境がない場所でも定額料金で24時間ビデオ配信可能だ。

 もちろん、設置場所に制限がないわけではない。スタンドを含むと高さは18センチ程度あり、“パッと見”よりはかなり大きい。ただし、壁などに固定する金具も付属しており、カメラの向く方向もある程度自由にできる。もっとも大きな制限はACアダプタが必須という点で、残念ながらモバイル利用は現実的ではない。AirH"での運用ができるだけに少々残念だ。

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背面にはLANポート、CFスロット、ビデオ/オーディオ入力、リセットスイッチなどを備える。ACケーブルが簡単に外れないようにフックも装備されている(クリックで拡大)

ブラウザによる容易な設定、配信

 設定はWebブラウザで行えるため、非常に手軽だ。初期状態では有線LANのIPアドレスが192.168.0.150に固定されているが、付属のユーティリティを利用すればPC側のIPアドレスに関係なく、LAN上にあるTSR-MS4RのIPアドレス設定を変更できる。同社の無線LANアクセスポイントなどでも採用している便利な機能だ。

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IPアドレス設定ユーティリティ。PCと同一サブネット内にない場合でも、Webブラウザを起動してIPアドレスを変更できる。DHCPでIPアドレスを自動割り当てにした場合でもTSR-MS4RのIPアドレスを確認可能だ

 TSR-MS4RのIPアドレスは、任意の固定IPアドレスにすることも、DHCPでIPアドレスを割り振ることも可能。DHCPを利用したときはIPアドレスを確認しにくいが、先に紹介した付属ユーティリティで検索できるのが便利だ。また、IPアドレスを自動割り当てにした場合に、割り当てられたIPアドレスを電子メールやftpを利用して通知する機能もある。さらに、同社が提供するDynamic DNSサービスを利用して、ドメイン名でアクセスすることも可能だ。

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無線LANはインフラストラクチャー、アドホックに対応し、WEPによる暗号化にも対応している

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DHCPで割り当てられたIPアドレスをメールで通知したり、情報としてftpサーバにアップロードすることもできる。メールの送信はpop before smtpにも対応するなど万全

 TSR-MS4Rがルータ配下にある場合など、グローバルIPアドレスが割り当てられていない場合は、ルータ側で外部からのパケットのうち、httpで利用するポート80をTSR-MS4Rに転送する設定にすればいい。なお、利用するポート番号の変更はできないので、1つのインターネット接続でWebサーバとの並存は原則として無理ということになる。

 TSR-MS4Rが簡易Webサーバとして機能するため、配信した動画を閲覧するのもWebブラウザベースだ。ブラウザ(IE5.5以降)でTSR-MS4RのIPアドレスやURLにアクセスすれば、リアルタイムの動画再生や静止画閲覧が行える。前述の通り、ズーム、パン/ティルト操作も可能。

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設定画面も配信画面も同一だが、設定操作はIDとパスワードでロックされ、管理者以外が設定の変更などは行えないようになっている

実用的な動画品質、外部入力もサポート

 ビデオ配信では、32〜768Kbpsという幅広いビットレートと、CIF(352×288)、QCIF(176×144)、SUBQCIF(88×72)の3つの画面サイズを選択できる。画質も高/中/低の3段階があり、フレームレートを優先するか、画質を優先するかも調整可能だ。サイズの上限はCIFでも、256Kbps以上のビットレートなら、かなり実用的な画質になる。また、QCIFなら64Kbpsでも結構スムーズで、臨場感のあるビデオ配信ができる。

動画サンプル 
CIF/256Kbps/画質高再生する
QCIF/128Kbps/画質中再生する
QCIF/64Kbps/画質低再生する
 これはメモリカードへ保存したビデオだが、基本的にはビデオ配信でも同等の画質。それぞれCIF/256Kbps/画質高、QCIF/128Kbps/画質中、QCIF/64Kbps/画質低の設定だが、QCIFなら64Kbpsでも結構スムーズで、臨場感のあるビデオ配信ができる。(いずれもASF、音声コーデックを自動取得)

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ビデオ配信の設定は、クライアント側から変更することができない。したがって、あらかじめクライアント側の通信速度を想定して設定しておく必要がある

 ビデオはブラウザ内部で再生され、ズーム、パン/ティルト操作も可能だ。バッファリングの関係上、ズームなどの操作は3〜4秒のタイムラグがあった後に反映される。また複数のユーザーに対してビデオを配信している場合、ズームなどの操作が全ユーザーに反映されてしまう点には注意が必要だ。

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サブウインドウのコントローラで視覚的に操作できる。ここから上方向にパンしてみると……

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上のほうが映る

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TSR-MS4Rを同時に4台までモニターできるソフトも開発中で、後日Webで評価版を公開する予定だ。監視などに利用する場合はこちらが便利

 一方、静止画はクライアントから任意の画質と画面サイズ(解像度)を指定できる(ビデオ配信中を除く)。接続環境が低速だった場合、ビデオ配信と静止画配信を併用すると便利だろう。

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静止画の画面サイズもビデオ配信と同じCIFまで。カメラユニットが30万画素であることを考えると、ちょっともったいない。VGA程度で表示させることもできるはずなのだが……

 意外と便利そうなのが、外部入力とメモリカードへの保存機能だ。もっと小型のカメラユニットを接続して、より高い設置の自由度を得ることもできるし、ビデオデッキなどを接続すれば録画してある映像の配信も可能。さらにTSR-MS4RをリアルタイムMPEG4エンコーダーにして、入力した映像をメモリカードに保存することもできる。なお、メモリカードへの保存はビットレートが最大256Kbpsに制限される。

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外部入力は、“映像のみ”“音声のみ”といった使い方もできる。たとえばペットの監視なら、視野を広くするためにカメラは遠めに設置しておき、ペットの近くには外部マイクを置いて声をひろう、といった利用法が考えられる

 なお、映像はWindows Media Playerで標準サポートされるが、音声はG.726またはAMRとなり、標準ではサポートされていない。G.726は付属CDのサンプル動画を再生すると、コーデックをインターネットから自動インストールできる。AMRは、やはり付属CDからソフトウェアをインストールすればいい。クライアント側は、この点に注意したい。

さまざまな応用が考えられるビデオサーバ

 TSR-MS4Rは、単体でビデオサーバとして機能し、外部入力もサポートするなど非常に幅広い使い方ができる製品だ。たとえば、出先からでも操作可能なビデオレコーダー(松下電器産業のDIGA+ブロードバンドアダプターなど)と組み合わせれば、外出先で録画済のビデオやテレビ放送を見ることもできるし、(この場合、第3者がアクセスできると著作権侵害にあたるので注意)Dynamic DNSを利用して、ペットの様子をホームページでビデオ配信するといった使い方もできる。

 また、企業や商店などでは、LANを利用した監視カメラサーバとして非常にコストパフォーマンスが高いともいえるだろう。明確な目的がないとちょっと購入をためらう値段だが、非常におもしろい製品であることは間違いない。

 ちょっと残念なのは、やはり利用時にACアダプタが必須であることだ。バッテリー駆動とまではいわないが、せめてPoE(Power over Ethernet)に対応してLANケーブルを使った電源供給ができれば、設置の自由度はかなり増すのだが……。もし、バッテリー駆動が実現すれば、AirH"と組み合わせて、“いつでもどこでもビデオ配信”なんて楽しみ方もできるだろう。この点は、次モデル以降に期待したい。

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▼製品情報

[坪山博貴,ITmedia]



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