リビング+:ニュース 2003/12/03 23:59:00 更新

PSX発売直前インタビュー
PSX、仕様変更の“なぜ?”(後編) (2/2)


 たとえば、EPG検索機能のキーワード登録は最大20個だが、これは“条件設定”の個数ではなく、単語そのものの個数なのだ。つまり、1登録あたり1個の単語しかキーワードを設定できない。この検索機能では、表記揺れを自動判別するといったことは行われないため、“大リーグ”と“メジャーリーグ”は別々に登録する必要がある。また、検索条件に番組ジャンルや時間帯などを指定できないため、同じキーワードで引っかかるワイドショーやバラエティなどのノイズを避けることができない。

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「G-GUIDE」のキーワード番組表

「キーワードに何を設定するのかは、簡単なようで実は結構ノウハウが必要です。思ったような番組がすべて引っかからない場合もあります。そこで思い切って、キーワード1つだけ、という簡単な構成にしました。ANDやORといった一般的ではない検索方法を使いたくなかったというのも理由です」(松岡氏)。

 しかし、せめてOR検索ぐらいはないと、見たい番組すべてを探したつもりが、半分ぐらいしかカバーできていなかった、なんてこともあり得る。あまりに一般的なキーワードの場合は、AND検索による絞り込みやジャンル指定などがほしくなる。

「検索機能の強化を望む声が強ければ、強化される可能性は高くなります。またジャンル指定は、もとのEPGデータ間違っている場合もあり、ジャンルで絞り込むと必要な番組を逃す危険性があります」(松岡氏)。

 ならば、なぜ番組表が米Gemstarの「G-GUIDE」なのか? G-Guideは、限られたテレビ画面の約1/3を広告が占有するため、操作性や情報料の面で“いまひとつ”。データの入力ミスや表記揺れ、ジャンル違いなどが多く、番組解説の量も乏しい。同じデータ放送によるEPG配信なら、「ADAMS-EPG」の方が質は確実に上だろう(もちろんADAMSにも入力ミスはあるが)。

「もともと、ソニーがGemstarとの契約を持っていたからです」と島津氏が話すと、松岡氏が「GemstarのEPGが使えるということがあったため、ほかの方式は検討しませんでした。ブロードバンド環境がない家庭でも使って頂けるように、iEPGも同じく検討外です。正直なところをいえば、もう少し情報の質が高まってほしいとは思っていますが、他家電ベンダーもGemstarと契約しており、ユーザーの増加に伴って今後は質が高まってくるでしょう」と続けた。

デジタル放送対応機が来年には登場?

 さて、話を別の方向に向けてみよう。気が早いと言われるかもしれないが、ソニー副社長の久夛良木健氏は、以前に行ったインタビューで、PSXに関してデジタル放送にも対応したいと話していた。しかし、今回のPSXはアナログチューナー搭載。さらにCPRMに対応していないため、デジタル放送チューナーのアナログ出力を本機に接続してHDDに録画することはできるものの、DVDに書き出すことができない。

 デジタル放送に対応するのであれば、このあたりもクリアしておかなければならない問題だ。本当に、来年デジタル放送対応版が登場するのだろうか?

「次に何を出すか、といった段階ではありません。もちろん、PSXをこの1代だけで終わらせるつもりはありませんが、現時点で具体的な何かが見えているわけではないのです。PSXの将来の発展形として、メディアサーバ、ホームサーバといったものがありますが、それは将来のビジョンで、まだ具体的な製品というわけではないのです」(島津氏)。

 松岡氏は、これまでにも「ハイブリッドレコーダーの中心ユーザーであるマニア層に向けているのではなく、普通にVHSビデオで録画を楽しんでいる一般ユーザー向けにPSXを開発している」と強調してきた。それは従来のシェアを奪う形で数を売るのではなく、新しくローエンドの市場を開拓しよう、という意図を感じる。PSXで、どの程度、ユーザー層の裾野を広げられると考えているのだろう?

「シェアの奪い合いか、それとも市場開拓かと問われれば、PSXは新しいユーザー層の開拓を目指した製品です。年末商戦向けには、すでに『スゴ録』シリーズを投入し、非常に好調な売れ行きだと聞いています。ソニーとしては、PSXで市場を拡大し、スゴ録で多機能指向のユーザーを取り込み、全体として市場の中での存在感を高めたい」(島津氏)。

「スゴ録は従来型録画機の正常進化形です。一方、PSXはハイブリッドレコーダーとしての性格も強いですが、ゲームや音楽、デジタル写真なども統合した、ホームエンターテイメントの集合体で、さまざまなメディアを楽しむ製品。商品として全く異なるものだと考えています」(松岡氏)。


 最後にインタビューを終えての雑感を記しておきたい。

 今回、もっとも強く感じたのは、PSXがいわゆるハイブリッドレコーダーとは趣を異にする製品ということだ。PSXはゲーム機+ハイブリッドレコーダーとして認知され、その価値の多くをハイブリッドレコーダーの部分に見ていると思うが、ソニーはホームエンターテイメントの核としての位置付けを強く意識している。この差は小さいようで実は大きい。

 PSXで「できない」と言われていることの多くは、ビデオ録画とその編集、保存に特化したハイブリッドレコーダーには必要だが、“手軽なタイムシフト視聴+DVD書き出し機能”(この表現は筆者が感じたものでソニーがインタビューで話しているわけではない)を、素早くパッパッと切り替えながら使うPSXユーザーには不要なのかもしれない。ただハイブリッドレコーダー専用機と直接比較すると、サスガに機能面で分が悪い。

 価格面を見ても、GRTの有無という違いこそあれ、スゴ録の250Gバイトモデルは市場で10万円を切りそうな勢いだ。PSX発売の時点では、価格がほぼ同じになっているのではないだろうか。確かに直感的な操作性やリモコン入力に対するレスポンスの良さなど、“PSXならでは”の魅力もある。しかし、PSXのゲーム機部分に魅力を感じないバイヤーは、同じソニーならばスゴ録のハイブリッドレコーダーとしての実力のほうに魅力を感じるだろう。

 しかし、それでもPSXは売れるだろう。島津、松岡、両氏によると、すでに販売店から初回出荷ではまかなえないほどの受注を受けているという。ただしハードウェアの作り溜めは十分に行っているそうで、ファームウェアのインストール手前までの行程まで進んだPSXが千葉県木更津の工場に大量に積み上げられているとか。「年内にはすべての受注に答えられるはず」(松岡氏)。

 賛否両論のPSX。その成否に注目したい。

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▼PSX製品情報

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[本田雅一,ITmedia]



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