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2003/12/20 04:20:00 更新 |
レビュー:
Super A/Gを手に入れたAterm、その実力は?
新しく無線LANアダプタをシリーズに追加したほか、最近ではSuper A/Gにも対応して強化が進むAterm「WR7600H」。その使い勝手や、実際にどのくらいの無線スループットを実現できるのかなどを確認しよう。
NECアクセステクニカのAterm「WR7600H」は、IEEE 802.11a/b/gの3つの規格に対応した無線ルータだ。無線LAN製品の主流は、11bから11b/gへ移行し、最近は11a/b/gのトリプル対応に移行しつつある。WR7600Hはトリプル対応ルータとして、すでに定評ある製品。だが年末にかけて、いっそうシリーズの強化を進めている。
強化ポイントの一つが、12月からトリプルバンドに対応したイーサネット接続の無線LANメディアコンバータ「WL54TE」が登場したこと(記事参照)。これとWR7600Hをセットにした“ワイヤレスセットTE”が発売されている。
ワイヤレスセットTE
このワイヤレスセットTEは、ただ親機であるWR7600Hと、子機であるWL54TEをセットにしただけでなく、最初から双方にセキュリティ設定を済ませてある点がポイントだ。
無線LANメディアコンバータは、リビングにあるゲーム機や、デスクトップPCなどを無線LANに参加させるような使い方がほとんどだ。しかし、デスクトップPCならともかく、ゲーム機では、Webブラウザなどを利用してコンバータの設定をすることはできない。このため、従来はこの種のコンバータを利用する場合、いったんPCと接続してコンバータの設定を行ってから、改めてゲーム機に接続する必要があった。
ワイヤレスセットTEでは、暗号化の設定が済んだ状態で販売されているので、買ってきてすぐ設置してゲーム機などを接続しても、そのまま使えるのがメリットだ。出荷状態での暗号化には128ビットのWEPが利用されているので、WPAほどではないが簡単に破られてしまうほどでもないセキュリティ強度を備えているといえる。
なお、WL54TEは親機であるWR7600H側が11a(5GHz帯)と11g(2.4GHz帯)のどちらを利用していても自動的にスキャンして接続するため、子機側で使用するバンドを設定する必要はない。
無線LANを高速化するSuper A/G
WR7600Hの強化ポイントは、これだけではない。12月17日に公開されたファームウェアバージョン8.02で、「Super A/G」に対応した。
Super A/Gは、無線LANの高速化技術のひとつ。現在のところ、無線LAN高速化の技術は無線LANコントローラのメーカーごとに異なっており、メーカーによって名称も異なっている。米Broadcomの「フレームバースティング」、米Intersilの「PRISM Nitro」などがあるが、Super A/Gは米Atherosの高速化技術だ。
どれも基本的技術としては。無線LANのパケットのうちデータのパケットの比率を多くして、より多くのデータを運べるようにしたもの。Super A/Gの場合はこれに加えて、データの圧縮を行っている。アナログモデムで行われていたMNP5や、V.42bisのようなもの……といえば、分かる人も多いだろう。このため、データによっては圧縮が効果を上げないどころか、逆に遅くなってしまう場合もあるため、この圧縮機能はオフにすることもできるようになっている。
この機能は当然、親機側と子機側双方が対応していないと機能しない。今回のアップデートではWR7600H用のファームウェアのほか、無線LANカード「WL54AG」用のSuper A/G対応ドライバを含んだユーティリティも同時に公開しており、これとの組み合わせでSuper A/Gが利用できるようになっている。
なお、前述のワイヤレスセットTEでは、WL54TEの対応ファームウェアが提供されていない。こちらに関しては来春の対応が予定されているので、もう少し待つ必要がある。
ファームウェアをアップデートしたのちに、WebブラウザでWR7600Hの設定画面を表示し、無線LANの設定画面に入ると図1のようにSuper A/Gの設定項目があらわれる。ここでは「使用しない」「使用する(圧縮あり)」「使用する(圧縮なし)」の3つから選択できる。
ファームウェアVer.8.02での無線LAN設定画面。Super A/Gの設定項目が追加されている(クリックで拡大)
通常は「使用する(圧縮あり)」を選べばよいだろうが、圧縮の効かないようなデータ(すでに圧縮されているストリーミングムービーなど)を利用する場合は、圧縮なしにしたほうがよいケースもあるかもしれない。
子機のWL54AGのほうでは特に設定する必要はなく、親機側のSpuerA/Gがオンになっている場合は自動的にSuper A/Gを使用するようになっている。
Super A/Gが利用されているかどうかは、簡単に判別できる。WindowsXPのタスクバーの無線LAN接続のインジケータにカーソルをあわせると、接続状態が表示されるが、Super A/Gを利用していない場合はここが通常の11a/11gの速度である54Mbpsが表示されるが、Super A/Gが利用されているときは108Mbpsという表示になっている。
Super A/Gを利用しない状態では、通常の11a通信速度である54Mbpsで通信をしていることになるが、Super A/G利用時では108Mbpsで通信を行っていると表示される
それでは、実際にSuper A/Gがどれほどの効果を上げるのかを測定してみよう。測定には、純粋にネットワークの通信速度を測定することのできるNetperfベンチマークツールを利用した。このベンチマークは、メモリ上で生成したランダムなデータを利用して通信を行うので、ディスクなどの性能に左右されず安定した測定を行うことができるのが特徴だ。
測定環境はNetperfのサーバにPentium 4/2.4GHz、Intel Pro100/S(i82550)のPCを利用し、クライアントとしてはNEC LaVie M LM700J/7(Mobile Pentium III 700MHz)にWL54AGをインストールして測定している。なお、暗号化に関しては128ビットのWEPを利用している。数値は5回測定して、一番高い数字と低い数字を除いた3回の平均を取った。
― | 11a | 11g |
Super A/Gオフ | 22.93Mbps | 19.25Mbps |
Super A/Gオン(圧縮あり) | 31.26Mbps | 30.51Mbps |
Super A/Gオン(圧縮なし) | 24.44Mbps | 21.96Mbps |
結果は上表に示したとおりだが、圧縮の効果がはっきりとあらわれている。圧縮ありでは11aで36%、11gでは50%以上の速度向上が見られるのに対し、圧縮なしでは数%の速度向上にとどまっている。一般的なデータではかなりの効果を上げていると見てよいだろう。
ほかにも機能追加が
なお、今回のアップデートではSuper A/Gへの対応以外にもいくつかの機能追加が行われている。特に大きな機能追加としては、TCP/IP設定チューンアップウィザードがある。
これはブロードバンドで通信速度向上を図る際よく行う、MTUやRWINの値の設定を最適値にするものだ。従来はユーザーが自分でレジストリを設定したり、専用のユーティリティを利用する必要があったが、このウィザードを利用すれば自分の利用する接続サービスの種類を選ぶだけで自動的にその回線に最適な値に設定してくれる。速度を追求するユーザーにとって、ありがたい機能といえるだろう。
TCP/IP設定チューンアップウィザード。自分の使用している回線を選ぶと自動的にその回線に適したMTUやRWINの値が設定される
WR7600Hは、Super A/Gにより一般的な無線LAN環境と比べて高速な通信が期待できるうえに、無線LANメディアコンバータの子機がセットになったワイヤレスセットも用意された端末。これから無線LANを導入するユーザーは、購入を検討してもよさそうだ。
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[柿島真治,ITmedia]