ここからは人間の得意なことと、人工知能の得意なことをもう少し掘り下げてみます。まず、人工知能にはできない、人間が得意とすることとは何でしょうか。それは、人とのコミュニケーションではないかと思われます。
松尾先生: コックの仕事は確かに能力的には代替可能になっていくのかもしれない。ですが、私はコックがいなくなるかと言われればそうはならないだろうと思います。
カフェに行ってわざわざ店員が入れてくれるコーヒーでなくても、コーヒーを飲みたいだけならコンビニや自販機で安く買えますよね。わざわざカフェに行くというのは、やはり人間がもたらす付加価値が大きいからではないかと思うんです。
料理全般に関して言えば、以前に比べて商品の加工度が上がっていることに注目してみましょう。スーパーで、青椒肉絲(チンジャオロース―)のタレみたいに、食品をいためて最後にかけたら料理が完成するという商品はすごく増えていると思います。完成したものを売ればいいのに、なぜか「何か工程を残す」商品が出回っている。
そうした商品や体制が世の中に溢れているのは、人が作った感を味わってもらうためだし、そして人はやっぱり人が作ったものを食べたい。人間の社会的な動物としての感覚として、それを求めると思います。
――カフェに行って店員さんとやりとりをしながらコーヒーを飲むといった行為も、ある種の達成感を得ている行為ですよね
松尾先生: 徹底的な低コスト化を目指すところではロボットによる自動化はもっと進展すると思います。ファストフードとか牛丼が代表格ですかね。
ただ、いいお店ではやっぱり人と関わる部分がずっと残っていると思います。コックの役割が調理そのものではなく、客の要望を聞いてロボットに指示を出して料理を作らせて客に料理を出す、そういうものになる可能性もあると思っています。
――より、人間のインタフェースとしての機能が強調されていくということでしょうか?
松尾先生: そして、この傾向はいろいろな業種であり得ることだとも思っています。
弁護士もそう、医者もそう。人と会話して、弁護方針や治療法を決めていくだとか。そしてこの工程には多くの知識が必要とされます。コックも。お客さんの好みを聞いてどういう料理を出せばいいのかっていう部分を決定するために、相当な料理の知識が必要になるわけじゃないですか。だけど実際に作るのは自分じゃなくてもいい。
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