世界で最も厳しいハラル認証取得の舞台裏東南アジア発、気になるニッポン企業(2/4 ページ)

» 2015年08月06日 08時00分 公開
[野本響子ITmedia]

“ムスリムが2人いる”体制

硬水を軟水にする「ソフトナー」を空けると、中に青いフィルターが見える。このように、原料が触れるものが適合しているかどうかを1つ1つ検証していく

 次に地元でのパートナーが必要になる。JAKIMハラルの認証には、最低2人以上のムスリム(イスラム教徒)が工場で製造業務に従事する必要があるからだ。アクアグリーンテックでは、共同経営者のほか、もう1人ムスリムを雇うことで“ムスリムが2人いる”という人員体制をつくった。

 4月に日本から製造機械が届いた。実際に届くまで、機械の細かい構造は分からなかったが、機械の構造を調べ、原材料がどこを通っていくのかを把握し、証明する必要があった。この過程が最も大変だったという。

 「当社の製品は、水道水を特殊な機械を通して、PH値(酸性とアルカリ性の度合いを数字で示したもの)を上げ、洗浄能力を高めます。製造には3台の機械を使います。まず、マレーシアの水道水は硬水なので、水を軟水にするソフトナーという機械。次に水から不純物を取り除くためのRO装置。そして水のイオンを変更することで、PH値を変える製造機械。原料の水が触れるものがすべてハラルであることを証明しなくてはいけません」

 水道水は日本製のソフトナーに入り、内部で水の中のマグネシウムやカルシウムを取り除くフィルターを通る。このフィルターの素材が何かを調べて証明しなければいけないが、日本のメーカー側は『企業秘密である』を理由に教えてくれなかった。しかし何度か交渉した結果、材料だけは教えてもらえた。

 RO装置も日本から輸入したものだ。内部で使うフィルターにはプレフィルターとROフィルターの2種類あるが、機械の仕様にはフィルターの素材は書いていない。調べてみると、プレフィルターは日本製だったが、ROフィルターは米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社製だった。そこで米国のGEに連絡し、フィルターの型番を聞くことにした。ところが米国からはなかなか返答をもらうことができなかった。最終的にはマレーシアのGE社を通して、フィルターがポリマーでつくられていることを突き止めた。このポリマーもどの原料を何%使ってつくったのかを証明する文書を作成してもらった。

「エコピカ」の製造工場での冨田さん。冨田さんが手をかけている白い機械がエコピカの製造機械

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